川崎重工の国産輸送機C-2が、「ドバイ航空ショー」にて国際デビューを果たしました。他国への輸出が見込まれますが、ライバル機の存在やスペック以外での問題など、課題も見えています。

デビューがドバイなのにもワケがある

 2017年11月12日(日)から16日(木)にかけ、中東のドバイにて開催されていた「ドバイ航空ショー」において、川崎重工および防衛装備庁/防衛省・航空自衛隊は2017年に実用化されたばかりの新鋭国産輸送機C-2を出展、同機は国際デビューを果たしました。


国産の川崎重工C-2輸送機。「ドバイ航空ショー」における展示にあわせて自衛隊唯一の海外基地が存在するジブチへも向かう(画像:防衛省)。

 英字航空・防衛誌「エビエーションウィーク」や「ジェーンズディフェンスウィークリー」などは、これまで海外への軍用機輸出に積極的ではなかった日本の輸送機市場への参戦と、アラビア半島を構成する湾岸協力会議諸国への輸出を狙っているものとして報道し、航空業界において世界中の注目を集めています。

 また数年ほど前より、アラブ首長国連邦(UAE)がC-2の採用に強い関心を持っているとも報じられており、アラブ首長国連邦を構成する国家のひとつドバイにおいての国際エアショーデビューは、これを裏付けているものと考えられます。

C-2はどこを狙っている? ライバル機に勝るポイントとは

 C-2はC-130「ハーキュリーズ」に代表される中型輸送機よりはひと回り大きく、また大型輸送機C-17「グローブマスターIII」よりはひと回り小さいという、中型機と大型機のあいだの隙間市場における需要への供給を目指すものと見られます。

 ライバルとなりそうな機種は少なく、エアバス社の軍事部門エアバスディフェンスアンドスペースA400M「アトラス」が唯一その対抗馬となるでしょう。

 A400Mに対するC-2の優位点としては、まずエンジンがジェネラル・エレクトリック社製CF6-80C2K1Fの双発であるということが挙げられます。CF6シリーズはボーイング767をはじめ、多くの旅客機に採用された極めて普遍的なエンジンであり、世界中どこの空港においても運用しやすい特徴を持ちます。

 一方A400Mが4基搭載する、ユーロプロップ・インターナショナルTP400はA400Mのために開発されたターボプロップ(ジェットエンジンの排気を回転力に変換しプロペラを駆動させる)エンジンであり、CF6に比べて実績がありません。

 またC-2は最大巡航速度マッハ0.82で、ジェット旅客機と同等であり、A400Mをマッハ0.1上回ります。ゆえにC-2は旅客機と同じ航路・高度を飛行でき、そのため飛行計画がはるかに立案しやすいメリットがあります。

課題は「経験」? C-2を待ち受ける過酷な戦いとは

 逆にA400Mの利点としては、最大離陸重量こそC-2の141トンをやや下回る137トンではありますが、貨物室容積はC-2の234立方メートルに対してA400Mは283.2立方メートルとなっています。通常、最大搭載貨物量は重量より容積によって制限されるため、搭載量についてはA400Mが有利であり、たとえばA400Mは機内にCH-47大型ヘリコプターをそのまま収容できますが、C-2はUH-60中型ヘリコプターが限度です。さらにA400Mは舗装されていない不整地における離着陸能力にも優れます。


イギリス空軍アクロバットチーム「レッドアローズ」と編隊飛行するA400M「アトラス」。すでに174機を受注している(関 賢太郎撮影)。

 以上のようにC-2とA400Mはほぼ同等の輸送機ながら、それぞれに異なった優位点を持ち、単純にどちらが優れているとは決められず、あくまでカタログスペック上での比較においては両者ともに同等であると言えます。

 C-2の海外輸出における障害は機体性能そのものよりも、これまで日本が軍用機の輸出を行ってこなかったという点にあります。A400Mを製造するエアバスディフェンスアンドスペースはエアバスグループ全体において旅客機はもちろん輸送機においても傘下企業が輸出実績を持ち、こうした点においてはC-2陣営を遥かに上回ります。

 C-2が課題を乗り越えA400Mの対抗馬たりうる販売実績を残すことができるのか、厳しい戦いはこれから始まります。

【表】川崎重工C-2輸送機の主要スペック


C-1輸送機の後継機として開発され、2016年度に開発完了。C-1に比べ、約4倍の航続距離、約3倍の搭載重量を誇る(乗りものニュース編集部作成)。