世界各地に店舗を持つスウェーデン発祥の大手家具メーカー「IKEA(イケア)」の製品で、今年またも幼児が死亡するという悲劇が起こっていた。米カリフォルニア州の2歳男児が昨年リコール対象となった「マルムシリーズ」のたんすの下敷きになり、5月に死亡していたことを『Philly.com』『Metro』などが伝えている。死亡した男児はこれで8人目のIKEA製品の犠牲者となった。

カリフォルニア州ブエナパークに住むヨゼフ・デューデック君(2歳)は今年5月24日、両親の寝室で寝かせられていた。しかし午後5時頃に父親が寝室を覗くと、ヨゼフ君はIKEAの3段の抽斗が付いたたんすの下敷きになって息絶えていたという。

そのたんすはマルムシリーズの製品で、幼児が下敷きになり死亡する事故が相次いだことから昨年、IKEAがアメリカ国内だけで2900万にものぼる製品のリコールを発表していた。昨年6月からリコールを開始したIKEAは、最初の6か月間で88万以上のたんすが返品もしくは修理されたと報告しているが、それは発表したリコール数のわずか3%に過ぎず、IKEAは「このシリーズは何十年も前から販売されているため、どれだけの家庭で使用されているかを把握するのは不可能であり、またリコールに応じずにたんすを壁に固定して使い続けている家庭もあるだろう」と述べていた。

ダニエル・マン弁護士によると、ヨゼフ君の両親は昨年のリコールの件を全く知らなかったそうだ。マン弁護士の事務所はヨゼフ君同様、マルムシリーズのたんすの下敷きになって2014年6月に死亡したワシントン州のカムデン・エリス君(1歳)、2015年2月に死亡したペンシルベニア州のカラン・コーラス君(2歳)、そして2016年2月に死亡したミネソタ州のテッド・マックギー君(2歳)一家の代理弁護を務めており、「今回のヨゼフ君の悲劇も完全に防ぐことができたもの」と語る。

2年で3件の死亡事故が相次いだ後、IKEAは修理プログラムを発表し、たんすを壁に固定するキットを無料で提供した。また亡くなった幼児の3家族に対しても、昨年12月には総額5,000万ドル(約56億6500万円)の損害賠償の支払いにも同意している。

しかし結果として、製品のごく一部を廃棄もしくは修理したに過ぎず、リコールに関しても世間への十分な注意喚起を怠ってしまったために、ヨゼフ君がマルムシリーズ製品の下敷きになり死亡するという4番目のケースとなってしまった。

IKEAはリコールした製品に対してほぼ全額返金に応じることを同意しており、抽斗に50ポンド(約22.7kg)の重さがかかっても壁への固定ねじ無しでも倒れないという安全基準に見合った製品を再生産している。

なおヨゼフ君の事故に関しては「the U.S. Consumer Product Safety Commission(米国消費者製品安全委員会」が調査を進めており、マン弁護士は「一家はひとり息子を亡くし悲しみに暮れている。両親はペンシルベニア州コンショホッケンにあるIKEA北アメリカ本部を告訴する予定だ」と話している。

遡ると1989年、2002年、2007年にIKEAの製品が原因の似たような事故で幼児が死亡、さらに2011年9月にもバージニア州で2歳男児が死亡していた。つまり、IKEA側は安全基準を満たしていない製品を販売したことにより、8人の犠牲者を出したことになる。このたびIKEA側は、ヨゼフ君の家族に哀悼の意を表し「たんすは壁に固定して使用して頂きたい」と改めて世間に注意喚起を促した。

このニュースを知った人からは「マルムシリーズを購入するのは絶対に危険だ」「家具はやっぱり高くても質がいいものを買わないとダメだと思う」「壁に固定さえしていればこんな事故にならなかっただろうに。かわいそう」といった声があがっている。

画像は『Philly.com 2017年10月18日付「After historic Ikea dresser recall, another child has died」(DUDEK FAMILY)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)