30代の同期で年収も同じでも、「ある心掛け」で貯金額にはかなり差がつく。 「貯金ゼロ」の人は何が足りないのか(写真:EKAKI/PIXTA)

同じ会社で同じ期間働いている同期入社組。まだ差がついていないので年収も同程度。なのに、貯蓄の状況だけは「月とスッポン」ということはよくあることです。

私自身、26歳でマンションを購入したときの貯蓄額は、実家暮らしが3年目に入っていたにもかかわらず80万円でした。なのに、1人暮らしでおカネも私よりもかかるはずの同期に「え、私は400万円貯めているわ」と聞き、大きな衝撃を受けたことがあります。なので、決してひとごとではありません。

では、こうした違いは、どうして起こるのでしょうか。32歳で年収600万円もらっている男性の同期2人、AさんとBさんのケースを見ていきましょう。

おカネに対して「素直」でないと、情報は手に入らない

「32歳で年収600万円」というと、一般的には所得水準は高いほうといえるでしょう。同じ会社に勤める「32歳、年収600万円」の男性2人と、以前おカネについてお話ししたことがあるのですが、2人のスタンスはまったく対照的と感じました。

まず、Aさんは自分の収入の高さにはそこそこ自覚はあるものの、「おカネのことを細かく考えるのは面倒だ」と口にしていました。当初は、私に相談をしているわけではなかったため、私も具体的なアドバイスや情報を特に伝えることなく、時間が過ぎていきました。

一方、Bさんは私がFP(ファイナンシャルプランナー)だと知ると、自分がこだわっているおカネの使い方を話してくれたり、「銀行やクレジットカードはどこがお勧めか」などと尋ねてくれたり、マネートークに花が咲きました。その後、期せずして2人からおカネに関する相談を受けることになり、詳しく聞いてビックリしたのです。貯金額があまりに違っていたのです。

詳しく聞くと、Aさんは貯金がたった5万円。ほぼゼロです。一方、Bさんは800万円もあることがわかったのです。

「貯めよう」と思わなければ、おカネは貯まらない

最初に会ったとき、Aさんはおカネのことに興味がなさそうだったため、私は特におカネについて話すことはありませんでした。一方のBさんは、おカネについてフラットに会話をしてくれたため、私も知っている情報をいろいろとお伝えすることができたのです。

確かに、おカネのことは考えるのが面倒なところもあります。しかし、興味がない姿勢を強く打ち出してしまうと、入ってくるかもしれなかった情報を逃すことがあります。Aさんが、面倒で苦手だけど知りたいとは思っている、と話してくれていたら、きっと初めて会った場面でもお伝えできることがあったように思います。

結果的にAさんにも相談をいただいたので、いろいろとお話ができましたが、AさんとBさんでは、日常生活を通じておカネの情報が集まる量は雲泥の差があると感じました。

Aさんに限らず、「収入は高いのにおカネが貯められない人」には、いくつか共通する特徴があります。

たとえば、そもそも「おカネを貯めなければいけない」と思っていない、という人が多いのです。経済的な不自由さを感じることが少ないため、貯金の必要性を感じにくいようです。

一方、Bさんのようなタイプの人は、少し長い目で物事を見ています。今は経済的に困らないけれど、病気をした場合、転職など新しい人生に挑戦したい場合、年を重ねて今と同じペースでは働けなくなった場合などを想定し、「今のおカネは、今だけのものではない」と考えています。

仮に、22歳から60歳まで38年間働き、その後90歳までの30年間は、貯蓄と公的年金で暮らすと仮定します。60歳以降の30年間で受け取ることができる公的年金の総額が現役時代の収入の半分(2分の1と数えず、あえて4分の2とします)だった場合、22歳から60歳までの38年間で「収入の4分の1」を未来のために残すことにすればどうでしょうか。

これができれば、「リタイア後」も、コンスタントに4分の3(4分の2+4分の1)程度のおカネを使い続けることができます。4分の1という額かどうかは人それぞれですが、貯められる人は人生を俯瞰(ふかん)して、このように「収入の4分の1」というように、決まった割合を、給与が出たらすぐに貯金用の口座に「よけてしまう」こと(=先取り貯金)を行っています。

収入が高めの人が陥りがちな落とし穴はほかにもあります。消費の判断基準を、相対的に評価してしまうという点です。

これはどういうことでしょうか。国税庁の行った平成27年分民間給与実態統計調査によると、給与所得者の平均給与は420万円です。こうした平均データをみて、自分は600万円台だから平均の1.5倍の収入があるから、平均よりも1.5倍くらい使える、と見積もってしまう人も意外と多いのです。

自分で「自分の身の丈」を間違ってはいけない

多くの人が知っているように、日本は収入が高いと税率が上がる累進課税制度を採っています。「平均より収入が1.5倍だからといって手取りも1.5倍」とはなりません。収入が高いと所得制限で受けられない助成金なども多いのです。

たとえば、「一般的な収入よりも高いのだから、大きな自宅を買って、車も買って、子どもを私立に通わせても何とかなるはず」、と粗く見積もりがちです。私はこうした現象を「身の丈の見誤り」と呼んでいます。他人との相対的な評価では、本当にわが家の家計にとってその選択が妥当なのかは読めないのです。

もし、年収が近い会社の同僚が家や車を持った場合でも、親の援助や、昔からの貯蓄習慣の有無などもあるわけで、年収だけでは推し量れない家計の要素がたくさんあります。

もちろん、相対的な評価でざっくり「おカネはこれくらいかかりそう」と「相場をつかむ」ことは悪くありません。しかし、大きな支出を伴う判断をするときには、それを払い続けられるのか、「わが家の場合、将来の返済計画や貯蓄推移はどうなるのか」を整理してみることが大切です。

前述したとおり、おカネに関心があることを他人に示すだけで、集まる情報は増え、貯めようと決めるだけで貯蓄は伸び、相対判断ではなく、「自分としての判断」をするだけで無理な消費を抑えることができます。気持ちや視点のスイッチだけで生まれる変化があるのです。

すべてを一気に心掛けるのではなく、まずはできそうなことを1つだけ取り入れて、やってみてください。ひとつの習慣が当たり前になった頃、新たな習慣を増やす。こうやっていけば、5年経てば、5年前の自分よりもうんとおカネの面でスキルアップできます。「やってもいい」と思える習慣から試していけると、無理なく続けられそうですね。