安西慎太郎と碕 理人が舞台上で顔を合わせるのは、2013年のミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン以来。じつに4年ぶりとなる共演は、る・ひまわりと明治座のタッグでおくる、年末恒例の「祭」シリーズ『ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭』だ。さまざまな現場で経験を積んできた今、ふたりはこの共演で互いの成長した姿を見ることを楽しみにしていながらも、「少し恥ずかしさもありますね」と照れくさそうに顔を見合わせて語った。

撮影/川野結李歌 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.

お客様に味わってほしい「なんだったんだろう」という感覚

演劇製作会社、る・ひまわりと明治座がタッグを組み、2011年から毎年、年末に上演されている「祭」シリーズ(通称“る年祭”)。歴史をテーマに、その年の旬なネタをパロディとして織り交ぜて描かれます。今年のタイトルは『ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭』。安西さんは“る年祭”に3回目の出演となりますね。
安西 年末の公演ということもあって、お客様を楽しませようという雰囲気が強く出ている作品だなと思っています。1部はお芝居、2部はショーで、僕らキャスト陣もお客様と一緒に楽しんでやっています。
 僕ははじめて参加するのですが、YouTubeにアップされているダイジェスト映像や2部のショーの映像を見ていて、すごく楽しそうな雰囲気を感じていました。年末のカウントダウンの公演もあるので、今からどんな作品になるのか楽しみでいっぱいです。
安西 (出演が)はじめてだからとか何回目だからとか関係なく、キャスト側も楽しさを感じられる作品だなと思います。僕がはじめて参加したときもカンパニーのみなさんが優しく迎えてくれて、カンパニー全体から楽しい空気感を作る意識が強いなと感じました。
▲安西慎太郎
▲碕 理人
さまざまなジャンルで活躍されている方が一堂に会して出演されるのも、“る年祭”の魅力ですね。
安西 稽古や本番を通して、それはすごく感じます。いろんな畑で活躍されている方が集まるので、最初は個性のぶつかり合いが激しいのかなと思っていたんですけど、知らぬうちに馴染んでいて。それでいてそれぞれの個性はしっかり出ているし、本当に「なんなんだろうな…!?」って感じなんです。
 そうなんだ(笑)。
安西 僕らもそんな感覚なんですけど、「なんなんだろう」っていう感覚は、お客様は2部でより味わってもらえると思います。
 あははは!
安西 単に面白いとか悲しいとかそういう感情じゃなくて、いい意味で「これ、なんだったんだろう?」っていう感覚(笑)。
2部のショーでは、出演キャストがユーモアあふれるコンセプトのユニットを組み、アイドルさながらの歌とダンスショーを見せてくれます。
安西 どのユニットの曲も記憶に残るような楽曲ばかりですし、今回僕が参加するユニット『マーライオンZ』の曲はふとした瞬間に口ずさみたくなると思います。ふと、口ずさんでいただいて、歌詞にツッコんでいただけたらいいなと思います。2部はお客様のために全力を尽くしたいです。
 YouTubeの映像を見ていたので、ユニットのショーは楽しそうだなと思っていました(笑)。今回、僕は『真弾青少年団』に参加するんですけど、ハードなラップとダンスがウリのユニットらしくて(笑)。歌もラップもダンスも、ゴリゴリに見せるらしいので、全力で盛り上がりたいですね。
お芝居メインの1部とはまた違う感覚ですか?
安西 そうですね。2部はお客様がペンライトを振ってくださるので。その光景を見ると、かなりテンションが上がります。毎回、2部はちょっと頭がおかしくて……。
 (笑)。
安西 毎年、面白いことができたらなと思ってやっているので、今年も全力で「ヤバいヤツ」って思っていただけるように頑張りたいです。

当時のお互いの印象は? 『テニミュ』時代を振り返る

おふたりの共演は、2013年のミュージカル『テニスの王子様』以来になるんですよね。
 4年ぶりくらい?
安西 4年経たないくらいですかね。
 しんた(※安西の愛称)とまた共演できるのはもちろん楽しみなんですけど、『テニミュ』で1年半ずっと一緒にいたので、逆にこっぱずかしさもあります(笑)。
安西 そうですね(笑)。『テニミュ』から、お互いいろんな作品を経て、人として役者としてどれだけ成長しているかを見せるのは恥ずかしさもあり、(成長している姿を)見せられなかったら…っていう恐怖心もあり。
長い期間の共演で深く関わっていたからこそ、4年ぶりの共演で「少し恥ずかしい」という気持ちもわかる気がします。『テニミュ』ではじめて会ったときのお互いの印象は覚えていますか?
安西 碕くんの印象か〜。
 こいこい!
安西 本当に見た目での第一印象は、“スマートなお兄さん”。ひとつの輪があったら、そこから少し離れたところで客観的に見ているタイプなのかなと思っていました。その感覚もありつつなんですけど、実際話してみたら優しくて面倒見がよくて、みんなと一緒にワチャワチャするタイプ。キャストのなかでの年齢も一番年上で…。
 君ちゃん(君沢ユウキ)を除いたらね。
安西 そうだね。生徒キャストのなかでは一番年上だったので、すごく大人でした。
 しんたはとても天然なんです。もう、ボケのボキャブラリーもスゴくて、突然ボケ倒してきたことも(笑)。
突然、ボケ倒して…?(笑)
 前触れもなくボケはじめるんですよ。
安西 そうだね(笑)。
 しかも、それがすごく謎なボケ。
安西 よくみんなに「わかりづらい」って言われるんです。仲がいい同士じゃないとわからないようなネタで、急にボケちゃうので(笑)。
 普段はそういう天然な一面がありますけど、お芝居のときはすごく真剣なんです。『テニミュ』ではチームをまとめる部長の役でしたが、キャストの年齢層がバラバラだったのでやりづらいんじゃないかなと感じていて。でも、みんなに気を遣いながらチームをまとめている姿を見て、本当にスゴいなと思っていました。
碕さんはそんな安西さんのサポートに回っていた…?
 いや、僕はかき回すだけかき回していました(笑)。でも全部しんたが拾ってくれて、最終的にはまとめてくれるんですよね。だからこそ、すごく信頼を置いていました。しんたは誰からも愛されるキャラクターで、普段のお茶目な一面と、芝居への姿勢とのギャップが一番の魅力ですね!
当時、お芝居について、おふたりで話したことも多かったのでしょうか?
安西 どうだったかなぁ…。相方だったので、たぶんいろいろと話していたんだと思うけど…。
 日替わりネタの箇所があったので、そこはよく話していたよね。でも、お互いの芝居についてはとくに話すことはなかった気がします。
安西 波長が合ったのかな。多くを語らずともわかり合っていたなって…。
 多くを語らずとも…なんか、カッコいい!
安西 いやいや(笑)。
 でも、僕としては、本当にしんたがしっかりしていたので、相方として安心感を持ってお芝居ができていましたね。

“る年祭”の稽古は、さまざまな表現に挑戦できる場

本作で安西さんが演じるのは、伊達政宗(辻󠄀本祐樹)に仕え、“理想に燃える青年”片倉重長。碕さんが演じるのは、“計算力が高い伊賀の忍者”霧隠才蔵です。
安西 重長は、いろんな役と深く絡んでいくと聞いていて。碕くんが演じる霧隠才蔵とはどんなやりとりがあるのか…。逆に、一切絡みがなかったら面白いなとかも思いつつ。
 一切、絡みゼロみたいな(笑)。
安西 会話はひとことだけ、みたいな。逆に面白くない?
 面白すぎ。見ている方も「お前ら絡まへんのかい!」って思うだろうね(笑)。
安西 たしかに(笑)。
 まだ稽古がはじまっていないので、どういうふうになるのかわからないですが、そういう面も含めて、しんたとまた稽古ができるのが今から楽しみです。
お稽古に向けて、なにか意識しようと思っていることはありますか?
安西 “る年祭”の稽古場の雰囲気って、スタッフさんやキャスト含め「かかってこい!」っていう感じが強いんですよね。押しつけがましい感じではなくて、いい意味で。
さまざまな表現を試すことができる機会がたくさんあるというような?
安西 そうです。自分の思ったことを表現してみて、演出の板垣(恭一)さんが「いいね」と言ってくれたら採用されることも多くて。キャスト同士、それを見て刺激にもつながりますし、今年もどんどん挑戦していきたいです。
 なにより出演キャストが多いじゃないですか。しかも個性が強いキャストが揃っているので、そのなかで埋もれないようにしないと、というのは考えています。
安西 そうだね。
 自分がこれまで培ってきたものをどんどん出していこうと思っています。(脚本の赤澤)ムックさんとはご一緒するのが2回目なんですけど、とても面白い素敵な脚本を書いてくださるので、それに負けないようにしたいです。
“る年祭”は、毎回歴史をテーマに歴史上の人物の姿が描かれます。役作りとして、その役についての史実などは勉強されますか?
安西 そんなに歴史は詳しいわけじゃないですけど、演じる役については調べますね。でも、その作品のなかで必要とされている役の像があるので、土台として頭に入れるだけであまり史実は気にせず役を作ります。
 僕もそうですね。その役の人物像はある程度調べておきますが、演じるのは自分なので。史実を参考にはしますけど、僕だったらという、自分なりの霧隠才蔵を作り上げたいなと思っています。
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