夏の五輪でチケットの値段が一番高いのは、開閉開式以外では、男子100mが行われる日の陸上だ。しかし、この種目も速すぎてよく分からない。現場で見ているのにレース中、気がつけば、スタジアムのスクリーンに映し出される映像に目が向いていたりする。ウサイン・ボルトが9秒69の記録で金メダルに輝いた2008年北京五輪の時はかなり良い席で観戦したが、あまり印象に残っていない。アッという間の出来事で、脳裏に刻むことができなかったという感じだ。

 その点、適度なスピードで行われる競泳は、観戦に適した競技だと言える。スタンドとプールのサイズの関係も良好。視界に奇麗に収まる。というわけで、五輪では常に人気競技だ。スタンドの収容人数も15000人程度なので、チケットの値段はかなりする。

 どこで観戦すれば快適か。競技の醍醐味が味わえるか。テレビか現場か。現場ならどこがベスポジか。どのようなスタジアムが観戦に最適か。東京五輪。観戦するなら外しは少なくしたい。そんなこんなを考えている時に、自宅の近所に位置する新国立競技場の建設現場を眺めると気分は盛り下がる。8万人の観客を満足させるための追求が甘いスタジアム。その正体が日に日に露呈し始めている。

 スポーツは観戦者なくしては始まらない。スタジアムには、お客さんに快適な観戦環境を提供する使命がある。高い入場料を取るならなおさらだ。観戦者ファースト、お客さんファースト。その声をどこまで聞いたのか。組織委員会にスポーツ観戦を趣味にしているスタッフがいない。少ないのだと思う。