その甘いルックスを活かして、少女漫画原作の胸キュンもので女性のハートを射止めてきた千葉雄大。永遠の命を繰り返す、禁断のバトルアクションである映画『亜人』で演じるのは、得体の知れない策略家の亜人テロリスト役だ。原作では謎に包まれた奥山を演じるにあたって、試行錯誤して役と向き合ったという千葉。爽やかな笑顔を完全に封印して挑んだ作品だが、取材ではときおり冗談を交えつつ、現場を和ませてくれた。

撮影/川野結李歌 取材・文/福田恵子 制作/iD inc.

原作とは違うキャラクターとして、奥山を作り上げた

前回取材させていただいたのは2016年の年末でした。じつはlivedoorニュースが2016年最後にインタビューした方が千葉さんでした。お忙しい年末にありがとうございました。
そうでした。縁がありますね(笑)。もちろん覚えています。
取材終わりに、千葉さんに「良いお年を〜」と言っていただきました(笑)。
(笑)。…あれからもう半年以上が過ぎたんですね。今回もありがとうございます。
さて、今回出演されたのは、絶対に死なない新人類“亜人”同士の終わることのない戦いを描く、桜井画門さんの人気コミック『亜人』。実写化にあたり、奥山役での出演が決まったときの気持ちから教えてください。
出演が決まってから漫画原作を読んだのですが、原作は原作の、実写は実写の面白さがあるので、まったく同じにしようというよりは、僕だからこそできる奥山にしようと思いました。台本を読んで、原作の奥山のキャラクターとはちょっと違っていたので、まずはどのように役へアプローチしていくか考えるのが課題だなと思いました。
原作の奥山はちょっとぽっちゃりで、まず体型も違いますよね。
そうなんですよね。あと、奥山は生まれつき右の脚の筋肉が弱くて、車椅子を利用している設定なんです。だから、戦うときも拳と拳の戦いではなく、亜人チームのアジトでハッキングしたり、メカを操って戦うんですよ。
車椅子の扱いに慣れていらっしゃいましたが、かなり練習されたのでしょうか。
はい。乗ったことがなかったので難しかったのですが、電動で小回りが利く車椅子だったので、乗りやすかったですね。ガクガクならないようにスムーズに移動して、不気味な感じの動きを意識して。現場でスタッフさんが仕事をされている隙間を、グルグルと回って練習していました(笑)。
奥山は何を考えているかわからないキャラクターですが、どう捉えましたか?
奥山は、人類と敵対するテロリストの佐藤(綾野 剛)の考えに賛同するんですが、そんなに熱く賛同しているという感じでもなくて。どこか淡々としていて、気味が悪く見えるように心がけましたね。
テロリスト役は演じていて、なかなか共感できるキャラクターではなさそうですね。
そうですね。あまり似ているなと思って演じてなかったですけど……。淡々としているところは、もしかしたら似ているのかもしれないです。よく言われるんですよ。みんなが盛り上がっているときに、「千葉くん、楽しんでる?」って。もちろん楽しんでるんですけど、どうやら伝わらないみたいで……(笑)。
(笑)。自分ならではの奥山像を作り上げていくのは、難しい作業ですね。
奥山については、原作でもそんなに深く掘り下げて描かれているわけではないですからね。現場で(本広克行)監督に確認しながら演じていました。たとえば、なぜ佐藤の呼びかけに答えて、テロリストに加わったのか。何も考えずにフラフラやっているような人物なのに戦おうと思ったのは、それなりの理由があったんじゃないかと想像させられました。
映画版ならではの奥山の見どころは?
予告にもありますが、奥山が笑うシーンもあるんです。そこは監督の指示で笑ったんですが、淡泊な奥山の意外な表情なので観てほしいですね。あと、最後には奥山が驚きの行動に出るという展開も待ち受けています。映画では、その場その場で変わっていく人物として見せることができたという手応えを感じています。

ストイックに肉体改造に励む、綾野 剛から受けた刺激

緊迫した戦闘シーンが多いですが、現場はどんな雰囲気でしたか?
待ち時間もみんなで話すなど、和気あいあいとした現場でした。綾野さんとは初共演でしたけど、何度か一緒に食事に行っていたので、今回同じ作品でお仕事できるのが嬉しかったですね。仕事の話だけでなく、共通の友人の話とか他愛もない話で盛り上がりました。
綾野さんは今作のために過酷な食事制限をして、体作りに挑まれたそうです。ぽっちゃり体型の奥山を演じる千葉さんは、体を絞る必要はまったくなかったのでは。
そうなんですよねぇ、綾野さんにホント申し訳ないです!(笑) 僕はまったく何もしてないですからね。『亜人』の若手チームみんなで綾野さんにお寿司を食べに連れて行っていただいたときも、気にせず何でも食べましたし。そのとき、綾野さんはストイックに限られたものだけを召しあがってましたね。
佐藤 健さん(永井 圭役)も撮影中、徹底した糖質制限をしていたそうですね。
そうなんです。控室にはサラダチキンや低カロリーのゼリーとか、ダイエットフードがたくさん置いてありました。僕は撮影の合間に外でご飯を食べるときも、まるでOLさんのランチタイムみたいで、カレーを食べて「おいしい♪」ってご飯の時間を満喫してましたもん(笑)。
原作の奥山に近づくため、逆にたくさん食べていたりして(笑)。
いえ、僕はもともとワガママボディなので(笑)。そんなに太る必要もなく、普段通りです。
(笑)。過去に千葉さんも肉体改造に挑んだことはありますか?
ありますよ。ドラマ『水球ヤンキース』(フジテレビ系)のときに、一回やったんですが、大変でした。水球ってプールの足がつかないところで競技をするので、ものすごく筋肉が必要になってくるんです。その時期は体を鍛えましたね。
では、現場で綾野さんが鍛えている姿を見て、大変さも理解できた?
そうですね。撮影ギリギリまでパンプアップされて本番に挑まれる姿を見て、ホントにスゴいなと思いました。
そんなストイックな姿を見て、刺激を受けることも多かった現場だったのでしょうか。
体作りから何から、ひとつの作品に対して情熱を注げる綾野さんを見て、命を削って役に挑んでいるなと刺激になりました。それだけストイックに役に入り込んでいるのに、現場では気さくに話をしてくださって。自分も年を重ねて、後輩の共演者の人たちに同じようにできたらいいなと思うお手本を示してくださいましたね。
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