まもなく節目の30歳を迎えるが、青木玄徳は「怖いですね」と率直な思いを口にする。ここ最近、舞台にドラマに映画にと、確実に活躍の場を広げている。山田裕貴とともに主演を張り続けてきたオリジナルシリーズ『闇金ドッグス』は7作目を数える。それでも、胸にあるのは恐怖、そして危機感だという。「決してネガティブな意味ではなく、自分にとって必要な恐怖だと思っています」――。たしかに、そう語る彼の目からは、怯えではなく、強い覚悟が感じられる。

撮影/祭貴義道 取材・文/黒豆直樹 制作/iD inc.

ラブストーリーの中で、須藤を演じる難しさに気づいた

映画『闇金ドッグス6&7』が連続公開されています。前作の『5』の公開が今年の1月ですから…。
ちょっとペース早すぎでしょ!(苦笑) 正式に話を聞いたのは今年の5月くらいかな? そこから撮影して…。
あっというまですね。違法な闇金融業者として働く、元ヤクザの組長の安藤忠臣(山田裕貴)と青木さんが演じる元ホストの須藤 司を中心に、金にとりつかれた者たちのドラマを描く人気シリーズですが、今回はラブストーリーです! おまけに、須藤は闇金から足を洗い、キャバクラのボーイとして人生を再出発するところから始まります。
「恋愛ものをやる!」という話は聞いていて、ガッツリとラブストーリーで来るのか? と思ってたら、いくつもの物語が絡み合っていて。奨学金の返済のためにキャバクラ嬢になった女と、職を失ってボーイになった男。さらに司の小学生のときの先生まで登場して、これ、どうまとまるんだ? 心配だなぁと思いつつ、いつも通り(笑)、すぐ撮影だし…。
『6』は安藤、『7』は須藤が主人公を務めますが、撮影は続けて行われたんですか?
ほぼ同時進行…というか、撮影自体は『7』からですね(笑)。
なかなか厳しい撮影ですね…。
『7』の撮影が半分くらい終わった状況で『6』を撮り始めて…。逢沢りなさんが演じる、キャバクラ嬢のエマとのキスシーンも、逢沢さんとの最初のシーンでいきなりでしたし。
ちょっとずつ距離を縮めていくふたりなのに!
まあ、いつもそんな感じですよ(笑)。
今回、青木さんがとくに大事にした部分は?
まず思ったのは、“初の試み”と銘打って、制作側がかなりラブストーリーを推してきているけど、よく考えると『3』でも若干、ラブストーリーっぽい流れがあっただろう! と(笑)。
本作についてではなく、そこを「よく考えた」んですね(笑)。
まあでも、『3』よりもさらに親密なシーン、ラブストーリーの部分は増しているので、そこにきちんと重きを置くということ。あとは、『5』があっての『6』、『7』なので、その流れを大事にしたいという思いはありました。
ラブストーリーを謳ってはいますが、須藤のエマに対する思いは、恋愛感情なのか? それとも、トラウマを抱えた元闇金の男の、借金に苦しむ女性への優しさなのか? 最初はなかなか見えづらい部分もあります。
そもそも、須藤は「女性の味方」キャラなので、ある意味、女性に向ける気持ちって全部恋愛感情って言えるのかも(笑)。そういう意味で、ラブストーリーをやるうえで、このキャラクターってこんな難しかったのか! って気づかされました。
たしかに特定の恋愛に身を置くというのが、難しいキャラクターかもしれませんね。
なので今回の物語のために、とくに何かを“変える”というよりも、人助けキャラの「ほっとけない」という気持ちが司らしいのかなって。一方で、先生との話もあって、そっちをどうするのか? というのもありつつ、難しかったですね。ただ、先生のエピソードがなければ、須藤がエマのスーパーヒーローになろうともしなかっただろうと思います。

距離感が見えない!? 山田裕貴との不思議な関係

改めて、これだけシリーズが続いていくということを、青木さん自身はどう受け止めていますか?
自分の中で「どうしたい」って答えはなくて、それは須藤自身がいつも受け身のキャラだというのもあるし、物語自体、ゲストがメインになって進んでいくというのも大きい。そういう意味で、続けようと思えばいくらでも作り続けられる作品ですよね。だからこそ、一作ずつで脚本、お芝居のクオリティを上げていかないといけないなと。
今回、須藤が闇金の仕事を辞めたというのが象徴的ですが、須藤と安藤の変化、人生の変遷が描かれていくというのも大きな特徴ですね。
ここまでシリーズを重ねて、キャラクターによる伏線の配置はすでにできあがっていますよね。それを回収しつつ、変化を見せられるというのは、やはり魅力ですね。だからこそ、どこかで“大まとめ”といえる作品を作りたいなとも思います。ただ、須藤って何でもできちゃうし。
究極の受け身キャラだからこそ、どんな展開にも対応できる。
僕はすごく大変なんですよ!(苦笑) これ、なかなか伝わらないと思うけど…(笑)。何でもできちゃうからこそ、どうしようかって。この先、さらに続けていくうえで、もうひとつ、須藤に何かエッセンスが必要なのかな? ただ、安藤という影響を与えてくれる存在がいるのは、その意味でも大きいですよね。
山田さんとの関係についても、ぜひおうかがいしたいです。今回は、須藤が安藤の元を飛び出してからの物語ということで、接点は少なかったと思いますが、現場での関係は…?
変わらないですね。現場では時間がない中で、ほぼ芝居の話ですし。「ここ、こういうふうにしたいね」「じゃあ俺、こうやってみるわ」って。会話が少ない中で、お互いに楽しんでいるのは感じていましたけど。
不思議なんですが、これだけシリーズを重ね、ある種のバディものとしてやってきたわりに、おふたりの普段の関係性、距離感が見えないというか…。
このシリーズをやっているからこそ、必要な距離をとっているというのはある気がします。もちろん、仲は悪くないし、クランクインするときに久しぶりに会えば「あの作品、見たよ」なんて会話もするけど。もし、他の作品で一緒だったら、もうちょっとワチャワチャしてたかな…? とくに悩みを話すこともないし、恋愛相談もしないし(笑)。
現場以外で会うことは?
ないですね…。
以前、バスを待っているあいだの時間で、一杯だけお酒を一緒に飲んだという話をされていましたが…。
いまだにそのときの一回きりですね(笑)。普段、遊んだりはしないし…。役者同士ってそんな関係だと思いますよ。
なんだか、コンビ歴の長い漫才コンビにありそうな“決して仲が悪いわけじゃないのに、お互いのプライベートはまったく知らない”みたいな関係ですね…。
いやいや、そもそも僕ら“闇金ドッグス”ってコンビを組んでるわけじゃないし!(笑) いい意味で互いに時間がないし、芸能界に必死にしがみついている時期ですしね。いま、山田くんはとくにいろんな作品に出て、すごくいい時間を過ごしてるなと思うし、僕ももっと頑張らなきゃって思う。そのうち、ご飯とか行けたらいいですね。
いまさらふたりで食事に行ったら、事件ですよ。
それでニュースになるなら行こうかな(笑)。
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