虫歯でもないのに歯が痛い……、もしかして、肩がこっていませんか? 実は、肩こりが原因で歯痛になることがあるんです。その原因と関係性について、歯科医師の吉本彰夫先生に教えていただきます。

■肩こりと歯痛の関係性

歯の痛みに肩こりが関係しているなんて、考えたことありますか? 一見無関係そうな肩こりと歯の痛みがどう結びつくのか、虫歯でもないのに歯が痛いのはどういうことなのか、吉本先生に解説していただきました。

◇肩こりと歯痛の関係性

吉本:肩こりと歯の痛みについて、肩がこるから歯が痛むのか? それとも歯が痛くなるから肩がこるのか? という質問をよくいただきます。実はこれ、どちらもあり得るので、分けて考える必要があります。さらに肩こりからくる痛みとして、「関連痛」といわれる直接的に歯を痛く感じさせるもの。また、間接的に歯を痛めてしまい歯が痛くなってしまうものがあります。これも分けて考える必要性があります。これらを一緒に考えてしまうと、何科を受診すればいいのか誤る可能性があります。歯が痛むとほとんどの方が歯科を受診しますが、別の科が適切な場合もあることを知っていただければと思います。

■肩こりから来る歯痛の原因

肩こりと歯痛の関係性についてご説明いただきました。では、その原因について吉本先生に教えていただきましょう。

吉本:まず「関連痛」と言われる、直接的に歯が痛くなる場合です。例えば、冷たいカキ氷を一気に食べて、頭がキーンと痛くなったことはありませんか? 口の中に刺激を受けたのに頭が痛む、こうした事象を「関連痛」といい、原因とは離れた場所に痛みが生じます。「関連痛」の原因には末梢(まっしょう)説や中枢説など諸説あり、専門家によっても意見の分かれるところです。肩こりの一部に、歯を痛くさせる「関連痛」があることが知られています。肩こりの原因は多々あります。例えば無理な姿勢、猫背など姿勢の悪さ、パソコンやスマートフォンの長時間連続使用によるストレートネック、顎関節症やかみ合わせの悪さ……。いずれも本来の正しい姿勢とは異なる姿勢をとることで、頭の位置が移動してズレます。人の頭は意外と重くスイカの大玉くらいの重さがあり、その頭が本来とはズレた位置にあると、姿勢が簡単に崩れてしまうのです。姿勢が崩れると、さまざまな弊害が生じます。

第一に崩れた姿勢で頭を支えなければいけませんので、首や肩の筋肉に過剰な力が必要となり肩こりになり「関連痛」として歯を直接痛くさせるということがあります。第二に姿勢が崩れることにより、上下の歯が本来とは違う場所で当たってしまうというかみ合わせになってしまうことがあります。

上あごは頭と一体化して動いていますが、下あごは振り子のようにぶら下がっていて、バランスを取ろうと自由に動きます。そのため、本来受け持つ力の何十倍もの力がかかったり、無理な方向からの力がかかったりして、歯が痛くなることがあります。またかみ合うタイミングが本来よりも早かったり、強かったりしたときに、食い縛りや筋肉の緊張、噛むときの筋肉(咀嚼筋)が強くなることによって歯に痛みが発生することがあります。

■肩こりからくる歯痛の解消法

肩こりで歯痛になる原因がわかりました。ではその痛みを解消する方法はあるのでしょうか。

吉本:肩こりから来る歯痛の解消法は、何が原因で発生しているのかによって変わります。まずは原因を突き止めて、その痛みを解消していく道すじが大事です。例えばかみ合わせの悪さが原因の肩こりだと思っていても、実は別の原因による肩こりの可能性もあります。ですから必ずしもかみ合わせを調整すれば良くなるとは限らないのです。起こっている症状と原因を見極めて、それぞれの原因への対処法がまったく違うことを知ってください。ひとりの同じ患者さんであっても、診る先生の専門によって診断や治療方針が変わってきます。

ただし、取り急ぎ自分で痛みに対処するのなら、以下のような方法もあります。
・ゆっくりと顎を開閉するストレッチで、顎周辺の血行をよくする。
・肩や肩甲骨の筋肉を伸ばすストレッチやエクササイズをする。
・猫背やストレートネックなど悪い姿勢をやめて、背筋を伸ばす。
・歯科医に診てもらう。

基本的には、何が原因で発生しているのか突き止めて、その痛みを解消することがオススメです。

■まとめ

肩こりが原因の歯痛、それに歯痛が原因の肩こり、どちらもあることがわかりましたね。もし、虫歯でもないのに歯痛になったり、急に肩こりになったときは、痛みの原因を突き止めて、正しい処置をするようにしましょう。

(監修:吉本彰夫)

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