DAZNがスタートして数か月が経った。iPhoneやiPadを使って視聴している人によく出くわすが、実際どれほどの人が加入し、サッカー中継を楽しんでいるのだろうか。

 例えばJリーグ。視聴者はスカパー時代より増えたのか減ったのか。もちろん調べたわけではないけれど、増えてはいないだろう。加入のハードルはスカパー時代より上昇したと見る。

 DAZNは、すでにファンである人を囲い込むためのもの。それ以外の人がファンになる可能性を減らした可能性がある。NHKBSで週1回、見られるかどうか。万人が視聴可能な地上波では、ほとんど放送されていない状態だ。Jリーグは非大衆的な存在になりつつある。 

 協会やリーグの使命は、サッカーならサッカーという競技の普及、発展に寄与することだ。DAZNと10年間契約することで、Jリーグはおよそ2100億円を手にすることになったが、その結果、Jリーグがファンの絶対数を減らす結果になるなら本末転倒だ。

 ネット社会とどのようにして関わるか。これはサッカーに限らず、ありとあらゆる分野について言える問題だ。この原稿もネットに掲載されている。読者の方が、このページにどうして辿り着いたかは、人それぞれだと思うが、毎回、欠かさず読んでいただいている読者は、ブックマークしていただいているのだと思う。ある意思を持って直接的に、このページに来てくれたのだ、と。

 それはそれでとても嬉しいことだけれど、これが雑誌なら、偶然、たまたま、何かのついでといった理由の人も相当数いるだろう。読みたかったのは、その前のページの記事で、読み終わって、次のページをふとめくったら、ここに辿り着いたとか。好き嫌いなど全く関係なく、何かの弾みで偶然にというパターンは、少なくないはずだ。

 いわゆる雑学は、まさにネットになる前の時代の方が身についたように思う。現在は、関心のある題材にはストレートに迫っていきやすい反面、それほどでもないものには疎遠になりがちだ。好奇心の絶対的な幅はむしろ狭くなっている。知識を、偶然、たまたま、何かのついでに深める機会が減っている。

 雑誌はテレビで言えば地上波だ。スカパーやDAZNは専門書。Jリーグや欧州サッカーを見るのは、従来から関心が高い専門家、愛好家に限られる。DAZNが新しいファンを獲得する力は弱い。

 海外、とりわけ欧州に出かけていったとき、宿泊ホテルで、テレビのリモコンをカチャカチャすると、サッカー、テニス、自転車、陸上等々、様々な競技が目に飛び込んでくる。世界陸上とか、世界水泳とか、ゴルフテニスの4大メジャー大会とかではなく、わりとローカルな大会も簡単に見ることができる。そして、それについ見入ってしまったという経験が、実際、幾度となくある。好試合に遭遇することもある。となれば、その競技のファンに半分なったも同然。

 世界も日本と同様、ネット社会を迎えているが、テレビでたまたま見た競技に感化され、ファンになるという可能性は、日本より遙かに高い。そういった意味で、日本より五輪を開催する資格のある国はごまんとある。日本のお茶の間におけるスポーツ観戦環境のレベルは、決して高くないのだ。

 子供たちがスポーツ観戦を通してある競技のファンになる。さらには、競技者への道を歩むというケースは、枚挙にいとまがない。五輪を開催する一番の意義というべきかもしれない。

 五輪は各競技の博覧会。広告宣伝の場でもあるのだ。選手が自らの力を誇示する場であると同時に、競技が内包する魅力をアピールする場でもある。有望選手だけを追いかければいいという話ではない。マイナー競技もメジャー競技も、日本人選手が活躍するしないに拘わらず、中立公正に向き合う。とりわけNHKはそうでなくてはならない。

 東京五輪では、ネット中継に力を入れるという話だ。視聴可能なのは受信契約を結んでいる人に限られるらしいが、ネットは先述したとおり、偶然、たまたま、何かのついで……が望める場所ではない。好きな人があらかじめ明確な意志を持って向き合う視聴方法だ。視聴する装置がiPhone、iPadとなれば、なおさらだ。

 中立公平の精神を理由に受信料を徴収するなら、ネットではなく、テレビでそれに応えるべきだろう。

 このコラムで何年か前にも書いた記憶があるが、NHKはスポーツ専門チャンネルを設けるべきだと思う。様々な競技、種目が24時間絶え間なく流れているチャンネルだ。

 五輪開催に向けて改善されるべきは各競技の普及発展だ。スポーツ好きな人の数を増やすこと。各競技のファンの絶対的な数を増やすことだ。話をDAZNに戻せば、それでJリーグファン、欧州サッカーファン、ひいてはサッカーファンを増やすことができるのか。問われるべき点だと思う。 

外部リンク

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