前人未到の通算1050勝を達成した横綱・白鵬(32)に「物言い」がついている。横綱審議委員会の北村正任委員長が、白鵬の「張り手」に「私はあまり良い印象を持っていない」と発言した。

白鵬は長く「一人横綱」として日本の大相撲界を支えてきた功労者だが、大記録を打ち立てても賛否が渦巻いている。

「一番上に立つ人が下の人のほっぺたを叩くのは...」

横綱審議委員会が2017年7月24日に東京・両国国技館で開かれ、元大関・魁皇の通算最多1047勝を名古屋場所で1050勝に塗り替えた白鵬に、特別表彰を授与すると決定した。白鵬は歴代2位の63連勝を記録した10年にも同表彰を受けていた。

一般紙・スポーツ紙の複数報道によると、この横審委で北村委員長は「大変な偉業だと思う」と絶賛しながら、「張り手など若干横綱らしくない」「一番上(の番付)に立つ人が下の人のほっぺたを叩くのは、禁じ手ではないが、印象がよろしくないとの意見もある。私はあまり良い印象を持っていない」と釘を刺している。

がっぷり四つで組み合って寄り切るのが白鵬の得意とする取り口だが、近年は立ち合いから張り手で相手をひるませて優位に立つ「張り差し」が目立つ。一般的に正面から相手を跳ね返すのが「横綱相撲」とされる中で眉をひそめる向きもある。

名古屋場所15日間でも、白鵬が張り差しを選んだのは8番あった。たとえば1047勝目をかけた12日目の関脇・玉鷲戦では、左の張り差しから左右の張り手を頬に4、5発見舞っている。6日目の前頭2枚目・北勝富士戦では張り差しのバチンという音がNHKのテレビ中継越しにも聞こえた。4日目の前頭筆頭・貴景勝戦や14日目の大関・豪栄道戦では張り差しに加え、上腕を首〜胸あたりにぶつける「かち上げ」も組み合わせた。いずれも基本的には組み合わずに距離を取っている。

こうした取り組みに、場所中からツイッター上でも否定的な意見が数多く出ていた。

「いい加減白鵬のエルボー(編注:かち上げのことと思われる)禁止にしろよ相撲協会!! 今日も立ち会いに張り手からのエルボーとか相撲を冒涜する横綱なんていらねーよ!!」
「白鵬の凄さは認めるし、態度も立派だと思う。しかし、どうどうたる体躯の横綱が張り手や立会いの変化をすることがどうしても納得出来ない」
「優勝回数断トツの白鵬、勝利数も今後、断トツの数字を積み上げてゆくだろう。 しかし、はたき、張り手、変化など、安易な勝ち方が多いのも事実」

「プロの世界では結果を残さないといけない」

白鵬の取り口の変化、何が何でも勝ちにいくとも取れる姿勢には、理解を示す向きもある。

24日「クローズアップ現代+」(NHK)では白鵬へのインタビューを放送。「横綱に相応しくないと言われることもある」との問いに「ありますね。難しい。でも野球で『投手は直球を投げなければいけない』というと肩が壊れる。それで結果を残せるかと言えばわからない。今は『離れてもよし』『組んでもよし』という域にきたと思う」「プロの世界では結果を残さないといけない。負ければ横綱は引退だ」と話している。

番組には、好角家として知られるデーモン閣下が出演。交流があるという白鵬の取り口の変化について「年齢もかなりになってきて若いころのような相撲がとれない。目先の超えられそうな目標でモチベーションを高めることも考えられる。白鵬にいま大事なのは勝ち星。勝ちにこだわる相撲をとる年齢になったのではないか」と理解を示し、「逆に、いろんな技を持つ白鵬を若い力士が凌駕できないのが、だらしない」と他の力士に注文もしている。

モンゴル出身の白鵬にはたびたび逆風が吹いてきた。2013年の九州場所14日目、当時10年以上誕生していなかった日本出身横綱に向けて期待された稀勢の里(当時大関)が、無敵に近かった白鵬を破ると、観客は万歳三唱を響かせ異様な雰囲気に包まれた。これを象徴とした風当たりについて白鵬は番組で「(元横綱)双葉山関の言葉を思い出します。『勝って騒がれるのではなく、負けて騒がれる力士になりなさい』と。良いように考えていくしかない」と受け止め、前を向いていた。

大相撲界では2010年に野球賭博問題、11年に八百長問題が相次いで発覚し当時一人横綱だった白鵬が奮闘してきた経緯がある。デーモン閣下は「相撲界が苦難のときに一生懸命屋台骨を支えてきた白鵬にファンはああいう態度かと。日本人はもうちょっと了見広く白鵬を見るべきだと思う」とし、「憎らしいほど強い」と言われた元横綱・北の湖を引き合いに「北の湖関がいくら強かったと言っても、負けて万歳は出ませんでしたよ。イチロー選手に米国のメジャーリーグでブーイングが起きたら悲しいですよね。そういうことを思って相撲を見ていかないといけないんじゃないかなと思います」と話した。

なお白鵬は名古屋場所中の7月21日、近い将来日本国籍を取得する意向であると複数のメディアから報じられた。取得すれば親方として日本相撲協会に残り、後進の育成に携われる。

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