「退職届とツイッターの写真の署名には、共通点が見受けられますが、上申書の筆跡と、退職届の筆跡では異なる特徴が数多くあります」

 こう話すのは、本誌の依頼で筆跡鑑定をおこなった筆跡研究開発センター代表の朝倉太郎氏だ。鑑定の結果は、 驚くべきものだった。

 都議選で躍進した小池チルドレンの一人、平慶翔都議(29)は、かつて秘書として仕えた下村博文元文科相 (63)と泥沼バトルの真っ最中だ。

 6月29日、下村氏は会見で、かつて平氏が秘書時代に、「事務所費横領」「パソコンのデータの持ち出し」などを犯したと主張。下村氏の疑惑報道を「週刊文春」に流したのは平氏だとにおわせ、平氏が罪を認めたとするサイン入り上申書と、下村事務所へ提出したという退職届を報道陣に配布した。

 これを平氏は、「事実無根」と否定。都議選後、平氏の代理人弁護士は本誌にこう答えた。

「平氏が上申書に署名した事実はありません。当該上申書は偽造文書です。平氏が当該上申書に記載されている犯罪行為をおこなった事実はありません」

 そこで本誌は、上申書と退職届のサインの筆跡、さらに、平氏がツイッターに投稿した写真に写ったサインの筆跡の鑑定を、冒頭の朝倉氏に依頼した。

 全体的な印象を朝倉氏が語る。

「今回の鑑定資料のうち、立候補時に書いた筆跡の画像は不明瞭なので、基本的な部分についての鑑定としました。ただ、この基本的な鑑定でも上申書と退職届に異なる点が多く確認されれば、2つの筆跡の筆者は、別人である可能性が高くなります」

 本誌の筆跡比較を見れば、3つの筆跡の相違と同一性が一目瞭然だが、ほかにも不自然な点があるという。

「退職届の筆跡と比べて、上申書の筆跡は省略されている箇所が多い。平氏が、20年以上も書き慣れた自分の名前をこのように省略するのは考えにくい。さらに、退職届と上申書では、筆順が違うように見える部分もある。名前の筆順を変えるのは、不自然です」(朝倉氏)

 上申書の筆跡は、第三者が模倣して書いた筆跡である可能性を指摘する。

「一見、似ているように感じるのは模倣しているせいかもしれません。上申書の筆跡は筆速、筆の速度が速いように見えます。書く速度が速ければ速いほど、字の形を真似て書いても、細かい部分はおざなりになりやすい。それは字の省略にもつながります」(同前)

 朝倉氏は「上申書は偽造の可能性が高い」と結論づけた。それが事実なら、偽造に関わった人物が、私文書偽造同行使罪などで刑事罰に問われかねない。

 本誌はこの結果を、下村事務所に問い合わせたが、期限までに回答はなかった。7月7日朝、下村氏を直撃した。

ーー筆跡鑑定で、上申書が平氏以外の別人が書いた可能性があるというが。
「それはありえません。(平氏は上申書を)私の目の前で書いていましたから」平氏は、刑事民事両面で法的措置を辞さない構えだという。

 7月7日夕、本誌の取材に応じた平氏は、コメントは弁護士を通じてのみとしながらも、下村氏の直撃の様子を伝えると、思わずこう反応した。

「目の前で、ですか?それはないと思いますけど……」。すでに平氏も、潔白を証明するため、筆跡鑑定をおこなっている。

(週刊FLASH 2017年7月25日号)