『ヘタミュ』の愛称で親しまれている、ミュージカル「ヘタリア」のシリーズ3作目が、7月15日から上演スタート。多くのファンに愛されている本作だが、深い愛を持っているのはファンだけでなく、出演キャストも同じ。初演から参加しているイタリア役の長江崚行、第2弾から引き続きドイツを演じる上田悠介、そして今作での新キャラクターとして加わったプロイセン役の高本 学の3人に、『ヘタミュ』現場が愛にあふれる理由を聞いた。

撮影/祭貴義道 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.
ヘアメイク/ 小田昌弘、佐藤美紗(coo et fuu)、門口明加

シリーズ3作目は、これまでとは違う新しいかたちに

シリーズ3作目の『ヘタミュ』ですが、今回のミュージカル「ヘタリア〜in the new world〜」はどんなところが見どころでしょうか?
長江 初演(ミュージカル「ヘタリア〜Singin’in the World〜」)と第2弾(ミュージカル「ヘタリア〜The Great World〜」)とはまた違う、『ヘタミュ』のかたちなのかなと感じています。今作に関しては…言葉で説明するのが難しくないですか?
上田 そう、難しいんですよ。
長江 今までの『ヘタミュ』って、時代をひとつずつ踏んで進んでいたけれど、今作はそのなかで、大事なものを振り返っていくというか…。
上田 今作では、“フラッシュバック”的な作り方がされているなって僕ら役者も感じていて。たぶん、劇場で見てわかっていただけるかなと思っています。
長江 そのなかでも、オーストリア(ROU)が初演から戻ってきて、プロイセンという新しいキャラクターが加わって、いろんなスパイスが効いていますよね。
上田 僕はプロイセンが本当に大好きなんです。兄弟として、ガッツリ絡むシーンがあるよね。
高本 はい!
上田 それが実際に、どういうふうにお客様に見てもらえるか、すごく楽しみです。今作は、ドイツ・オーストリア・プロイセンのゲルマン3国にもスポットが当たるエピソードが入ってくると思うので…(笑)、その3国が各々進んできた道、みたいな違いを表現できたらなと思っています。
長江 そう思うと、本当にプロイセンは今作で重要なキャラクターだと思います。
上田 プロイセン、オーストリアあたりは時代を揺るがしてきたもんね。ね、プロイセン?
高本 …そうですね。
高本さんが演じる、ドイツとは兄弟であり、豪快で俺様なキャラクターのプロイセンは、今作ではじめて登場しますね。
高本 物語の主軸になるので、僕自身も重要なキャラクターだなと感じています。やっぱりみなさん前回までの公演があるので、稽古をしていてもすごくキャラクターとして見えてきて。僕はまだ探り探りで作っているので、稽古を通してしっかりプロイセンというキャラクターを作り上げて、『ヘタミュ』を盛り上げる一員になれたらなと思います。
上田 大丈夫、大丈夫!
高本 ありがとうございます(照)。
長江 ……いいですよね…プロイセンって。
上田 テープレコーダーに届かないくらいの小さな声で言わないの(笑)。
長江 あはは!
上田 プロイセンがどんな目立ち方をするのかは、注目してほしいよね。
高本 そうですね!

最初はみんなテンパる…!? 『ヘタミュ』の特殊な作り方

高本さんは、はじめて『ヘタミュ』現場に入って、どういう感触ですか?
高本 吉谷(光太郎)さんの演出がすごく特殊というか…。
上田 あー。わかる(頷く)。
長江 特殊ですよね〜。
高本 これまで出演したコメディ作品では、演出の方から「こうやって」って指示を受けることがなかったので、自分のなかでまだイメージしづらい部分も多いなと思っています。
長江 『ヘタミュ』ってすごく特殊な現場なんですよ。普通の現場って「このシーンやってみようか」と言われたら、役者の気持ちの流れで自由に動いて、演出家さんとブラッシュアップしていくことが多いんですけど…。
上田 まず、『ヘタミュ』では演出がついて、そのなかで役者がどう動くか、なんです。
長江 そうそう。吉谷さんの頭のなかには、このシーンに対して何を見せたいかっていうイメージが明確にあるんです。だからこそ僕らは、そのイメージのなかでキャラクターとしてどういう感情で動いたらいいのか、吉谷さんの頭のなかの絵に近づけるにはどうしたらいいのかっていうのを、考えて動かないといけない。
高本 そうなんですよね…。
長江 だから、僕、プロイセンは今回大変なんじゃないかなって…。
上田 あはは! 他人事やな!
高本 (笑)。
長江 いやいや!(笑) 僕は初演からイタリア役を演じさせてもらっていますが、この第3弾でやっと、吉谷さんが何を見せたいか、どう見えたら面白いのか、みたいなものが感覚的にわかってきたくらいなんです。
長江さんでさえ「やっと」とは…。第2弾からドイツを演じている上田さんは、前回のときはどうだったんですか?
上田 僕もかなりテンパりましたね。崚行が言っていたように、自分の気持ちで動くのが当然だったものが、『ヘタミュ』では、吉谷さんの世界のなかでいかに僕らが動けるかが重要だったので。
長江 そうそう〜。
高本 (噛みしめるように)そうなんですよね…。でも、『ヘタミュ』の現場のみなさんは本当に優しい方ばかりなので、「ここはこう動いたらいいんだよ」っていうキッカケをたくさん教えてくれるんです。それを自分のなかに落とし込んで、今は必死にくらいついています。みなさんに本当に助けられていますね。
上田 いい意味で気を遣わない現場だもんね。
長江 そうなんです。『ヘタミュ』の現場って、いい意味で全員がマイペースなんです。
それこそ、キャストのみなさんってとにかく『ヘタミュ』現場の居心地の良さを挙げる方が多い気がします。
長江 そうですね。全員、仲が良いんですが、距離が近すぎず遠すぎずなんです。バラバラで動いていてもみんな何も言わないし、ちょっかいが始まれば全力でのるし。それでお互いの関係がおかしくなることもないんです。気を遣わないほうが、みんなやりやすいのかなって感じます。
上田 なんか、みんなが“暇つぶしのオモチャ”みたいだよね。
高本 (笑)。
長江 そうそう(笑)。
暇つぶしのオモチャ?
上田 たとえば、僕が今誰かからイジられていて、それが終わって僕がイジる番になったら、誰かで遊ぶ。
長江・高本 あはは!
上田 みんながみんな、オモチャみたいで、いろんなものを持っているんです。とても飽きないんですよね。
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