“晴れ女”の内田真礼の撮影は、屋外で行おうと決めていた取材陣。ところがその日は朝から雨が降りしきり、やむ気配はほとんどなかった。それでもと、一縷の望みをかけてインタビューから先に行い、話が終わったちょうどそのとき──雲が切れて雨があがった。“周りの目を気にしすぎる、消極的な私”の殻を破ろうと決意した2017年。内田が直球で投げかける5thシングル『+INTERSECT+』は、まさに“晴れ女”にふさわしい、はじけるようなパワーに溢れていた。

撮影/平岩 享 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.
スタイリング/西辻未絵(Dear World)

やっとZAQさんと交差(INTERSECT)することができた

6月21日にリリースされる5thシングル『+INTERSECT+』ですが、まずこのパステルカラーのジャケットがとても可愛いなあと思いました。
ありがとうございます!
そういったビジュアルも含めて、パッケージとしてのテーマを教えていただけますか?
今回は、タイトル曲もカップリング曲も、ZAQちゃんに作詞・作曲をしていただきました。ZAQちゃんとは今まで、キャラソンのお仕事などでご一緒していたので、私自身の曲も作っていただきたいなあって思っていたんです。相談する機会はたくさんあったんですが、なかなかタイミングが合わなくて、叶わなかったんです。でも、5thシングルを作るタイミングで、やっとふたりが交差して…。
まさに、新曲のタイトルにもなっている「INTERSECT(=交差)」ですね。
そうなんです。本当に今ここでやっと交差して、作品にすることができました。だからこのジャケットも、緑とピンクが……色と色が混ざり合っていくようなイメージで作っています。
表題曲の『+INTERSECT+』はどのように作っていったのでしょうか?
『中二病でも恋がしたい!』(内田さんは小鳥遊六花役)という作品の劇場版(『小鳥遊六花・改〜劇場版 中二病でも恋がしたい!〜』)の主題歌『-Across the line-』(2013年)をZAQちゃんが作って、私が歌わせていただいたんです。その楽曲は、キャラクターとして歌っていたのですが、「ああいう、ドキドキやトキメキがある曲を自分名義でもやってみたいよね」というイメージがまずあって。それに、2月に代々木でやらせていただいた2ndライブの影響もすごくありましたね。
というのは?
2月のライブが終わってから、1ヶ月くらいずーっと余韻が残っていて、ふわふわしていたんです(笑)。「好きな歌が歌えるって、とっても幸せなことだなあ」なんて思っているなかで、ZAQちゃんに会う機会があったので、「とっても幸せで、ウキウキしている感じを歌にしたい!」というのを伝えたんです。
ほかに、詳しいオーダーなどは?
細かい注文みたいなことはしていないんですけど、ZAQちゃんは私のことを見てくれていて、それを歌にしてくれたんだなあと感じました。今のハッピーな感じが、歌に入っているなって。
最初に上がってきた曲を聴いて、どう感じましたか?
「ZAQちゃんが思う内田真礼って、こんな感じなんだ!」と思いました。この曲を作り始めたときは……私とZAQちゃん、ふたりの道が交差していく話でスタートしていたんですけど、レコーディングやPVを撮っていくうちに、もっと広がっていったんですね。
どんなふうに?
たとえば……ファンの方に届けるメッセージとしての一面だったり。「思い出も更新したい」という歌詞があるんですけど、それは私がずっとライブで言ってきた言葉なんです。そういった、ZAQちゃんとだけではなくて、いろんな人との距離を感じられる要素が入っているのでびっくりしました。
びっくり?
「私のことをなんでこんなに知ってるんだろう?」と思うような曲が上がってきたので、驚いちゃいましたね。
歌ってみて、どう感じましたか?
楽しかったです。すごくストレートな曲なので、気持ちにウソがなくて、バーン! とぶつける感じで歌いました。レコーディングをしたのは、桜が咲いている頃だったと思うんですけど、そういった、花が開いていくときの気持ちみたいな感じでレコーディングができたのでとても楽しかったですね。
声のトーンも、女の子らしいなかにセクシーな響きも少し入っていて、まさに女性が書いた曲だなって思いました。
サビで「抱きしめたい そう思って背中を見てる」って歌詞があって、「背中を見て抱きしめたいって思うんだー! すごい女子っぽい!」と思いました。「抱きしめたい」って相手に思われているんじゃなくて、自分も思っているというのが、女子から見た女子というか、すごく共感できる女の子像だと感じましたね。

すみぺ(上坂すみれ)が、私の世界にやってきた!

カップリング曲『魔女になりたい姫と姫になりたい魔女のラプソディー feat.上坂すみれ』はまた、とても可愛くて楽しい曲ですね。内田さん(姫役)と上坂さん(魔女役)にそれぞれキャラクターをあてて、掛け合うアイデアはどこから出てきたのでしょう?
ZAQちゃんの頭のなかにあったんじゃないでしょうか? まさかこういった曲が上がってくるとは思っていませんでした。
最初、びっくりしました?
びっくりしました! 「キャラソンじゃなくて本人として、これを歌うんだー! どっちが姫で、どっちが魔女なんだろう? どういうことだろう?」と、最初は思いましたね。
曲の展開も楽しいですね。
そうなんです。この曲を聴いていると1クールのアニメを一気に見た気分になります。物語がぎゅっと詰まっている感じがするんですよね。最初は仲が悪かったふたりが、徐々にわかり合っていくところが「感動するなあ」と思います。
上坂さんとは、アーティストとして何か一緒にやろうというお話はされていたのでしょうか?
はい。すみぺ(上坂さんの愛称)と「何かやれたら面白いね」なんて話していたんです。それがこういった形で叶ってこれもびっくりでした。
おふたりの掛け合いが、ガッチリ噛み合っていて素晴らしかったです。
ありがとうございます。仮歌をZAQちゃんが歌ってくださって、私とすみぺ、それぞれのパートのところを、ちょっと本人っぽく歌うんですよね。それがまた面白くて(笑)、「私たちのことをよく知ってくれているんだなあ」と思いました。
普通、こういった曲を声優さんが歌う場合、ご自身で二役を演じられることが多いと思うのですが、今回、上坂さんが担当されるというのがすごく新鮮でした。
すみぺは……もしこの曲をひとりでやっていたら、想像つかなかっただろうなあっていうアプローチをしてくれるので、「ああ、すみぺだなあ」って。じつは私たち、お互いの音楽活動について、全然関わりがないんです。違う方向性でやっていて、そのふたりがぶつかったらどうなるかな? という感じがとても出ていると思いましたね。
なるほど。
こういった速い曲は、私は自分の楽曲でこれまでも歌っているんですけど、そういう私の世界にすみぺがやってきたら、どんな感じになるかな? と楽しみにしていたので、それが聴けてすごくワクワクしました。
今回、内田さんとZAQさんと上坂さん、同世代の女の子3人がタッグを組むというのが新鮮で、ちょっと見られないコラボかなって思ったんですが、やってみてどう感じましたか?
だからこその、ストレートさというか。たとえば、ケンカしているところも……年上の、私たちを守ってくれるような人が作っていたら、ここまでのことを書かないと思うんです。「私たちはこうだから!」ってバーンとぶつける感じは、この年代の女子同士の距離だからこそ、作れるものなのかなって思っているので、とても気持ちよかったですね。
今しかできない表現ですよね。
そうですね。今だからこそ、できたのかなと思います。数年前だったらできなかった自分のやりたいことが、何年か経って、「そろそろできるかな?」と思うところまで歩んで来られたからこそ、好きなことをやらせてもらえたんでしょうね……。今回、ZAQちゃんともう一度出会えて、すみぺとのコラボができたように。

音楽活動があるからこそ、声優業を頑張れる!

お話にも出てきた2月のワンマンライブについておうかがいしたいのですが。前回のインタビューで、ライブでの体力的な課題を挙げられていましたが、今回はいかがでしたか?
2月のライブは、自分の持っている曲をほとんど歌いました。2日間のライブだったので不安でしたが、トレーニングもして、なんとかやりきれたんですよね。やりたいことを全部詰め込んで、完全燃焼で終わってみたら……ひと月後に「もう一回やりたいなあ」と、満足感と余韻とでいっぱいでした。
先ほども「幸せだった」っておっしゃっていましたね。
本当に幸せでしたね。
それだけ詰め込むと、プレッシャーも大きいと思うのですが、それも忘れちゃうくらい?
そうですね。覚えることもたくさんあって、すごく不安だったんですけど、周りの人に助けてもらって、なんとかやりきれて(笑)。あのときやりたかったことは、全部できたと思います。でも、それがやりきれた今は、さらに未来に向けて、もっとやりたいことも増えていて。「次、もしやるんだったら、こうしたい」というのは、たくさんあります。
声優でありアーティストである内田さん。その境界をしっかりと引くタイプでしょうか?
あんまり引いていないかもしれないです。声優業って、グッと我慢が多いお仕事だと思っているので……。スタジオにこもって何時間もマイクに向き合うのは精神力を使うんですけど、それを頑張れるのは、ライブでお客さんが応援してくれたりするからなのかなと思っていて、今はいいバランスでできていますね。だから、声優とソロ活動は全然違うものという感じは、あんまりしていないです。
最初からそうでした?
最初はキャラソンと自分の歌を分けるのが大変だったんですけど、それはやっと馴染んできて違和感なくなってきたかな? 頭で考えてもしょうがないと思えてからは、あんまり考えなくなりましたかね。
今回の、同世代の女の子3人で曲を作るというのも斬新でしたが、今後、音楽の表現としてチャレンジしてみたいことはありますか?
私、たくさん音楽を聴くんですけど、そういった自分の好きな音楽とか、「こういうのがやってみたい」というのをどんどん発信して、実現できたらいいなと思っています。今までもそうでしたが、いろんなことにチャレンジして、良かったものをさらに広げていく作業というか…。
なるほど。
良かったものをブラッシュアップして、輝かせることがしたいですね。私、すごい多趣味なんです。いろんなことに手を出すんですけど、結果残るものって決まってきていて、それが自分のなかの大切なものになっていくんですよね。そういうかたちで制限を設けずにいろんなことにチャレンジしていって、次の曲やライブで、さらにいいものにしていきたいと思います。
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