サッカーのルールを制定する「国際サッカー評議会」(IFAB)が、試合時間を前後半30分ずつの60分にする可能性を示唆した。

背景として、現状の前後半45分ずつのルールでは「無駄に浪費される時間が長すぎる」という現状をあげている。60分になったら、どんなゲームになるのだろうか。

「90分中、有効なプレー時間が60分未満しかない」

IFABは2017年6月9日付で、「PLAY FAIR!(副題:サッカーの質を向上するために試合のルールを発展させる戦略)」との文書を公式サイトで公開した。国際サッカー連盟(FIFA)と協力し、フェアプレーに向けたルール整備の一環という。

IFABが決定したルールは、FIFAに所属するサッカー協会の全試合で適用される。2016年には、ビデオ判定を行う「ビデオ・アシスタント・レフェリー」(VAR)の制度が提案・承認された。

今回はまず「90分間の試合時間で有効なプレー時間が60分未満しかない」という点が取り上げられた。つまりダラダラ試合で、IFABは「多くの人々が非常に不満を抱いている」としている。そこで「ルール改訂が不要で直ちに実施できること」「議論すべきこと」の2点に分けて、スピードアップを提案している。

まず「アディショナルタイムの厳密な計算」をあげる。アディショナルタイムを掲示する第4審判は、前半は1分、後半は3分をよく表示するが、プレーの停止によって失われる時間はもっと多い場合があるという。そこで審判は、ゴールが決まってからキックオフされるまでの時間や、負傷者の状態確認時などの時間を計測して、これらをアディショナルタイムとして正確に割り出す必要があるとしている。また、ゴールキーパーが手にボールを持っていられる時間、「6秒ルール」の厳密な適用も促している。

交代時の選手のピッチ外への出方にも「ハーフラインに向かってゆっくりと歩いて交代する選手によって、多くの時間が故意に失われている」と苦言を呈す。「ルール上、交代選手はハーフラインから出なくてもよい」として、「負傷者と同様、交代選手もピッチ上の今いる場所の最も近いラインから出るようにルールを適用できる。ただし、審判が安全性に問題があると判断した場合は除く」とスピーディーな交代を提案した。

「30分ハーフ」がもたらす効用

「議論すべきこと」としては、ボールがライン外に出たりファウルがあったりしてプレーが止まる「アウトオブプレー」のたびに、バスケットボールのように「時計を止める」ことを提案。特に前半のラスト5分と後半のラスト10分は、選手が時間稼ぎをする可能性が最も高い時間帯であり、プレー時間を増やすための方法として有効だと訴えている。

さらには、「試合時間を前後半30分ずつの60分で決するようにすることも考えている」と提案。このような根本的な変更をすることで、時間稼ぎを減らすだけでなく、すべてのチームが正確に同じ時間で競い合うことにつながると主張している。

他に「スピード感のある試合」を実現するための方策として、フリーキック、コーナーキック、ゴールキックの「自分へのパス」も提案した。「素早いリスタートが求められる場面が多い現代サッカーでは、ファウルを受けた側の選手がたとえばドリブルでプレーを再開するなど、セットプレーで2回以上連続してボールに触れられるようにすれば、よりスピード感が増すだろう」と考えている。

今回のIFABの文書を18日付で報じた英放送局「BBC」ウェブニュース版では、元イタリア代表FWで現在イングランド・プレミアリーグのバーミンガム・シティで監督を務めるジャン・フランコ・ゾラ(50)の声を紹介。「60分短縮案」について「(現行ルールを)利用して多くのチームが時間稼ぎしながら勝っているから、悪い提案ではないと思う」と支持を表明している。

IFABはこの文書を元にさまざまな会議で提案の改廃などを議論する予定。