ニュース番組やワイドショーでもしばしば取り上げられる「動物園人気のナゾ」――その答えはきっとここにある。絶妙なゆるさと独創的なスタイルで、空前絶後の大ブームを巻き起こした「けものフレンズ」が、まさかの舞台化。TVアニメの声優そのままに、2.5次元舞台というジャンルで新たに作品の世界が表現される。サーバル役の尾崎由香は、「サーバルらしく、のびのびと演じられたら」と無邪気な笑みで意気込みを語るが、舞台では“フレンズ”たちのどんな姿が見られるのか。期待が高まる!

撮影/川野結李歌 取材・文/渡邉千智 制作/iD inc.
ヘアメイク/佐藤理恵
企画/ライブドアニュース編集部

どんな“ジャパリパーク”になるのか…ワクワクな気持ち

3月まで放送されていたTVアニメ「けものフレンズ」が、舞台になります。舞台化のお話を聞いたときの気持ちはいかがでしたか?
アニメを多くの方に愛していただいたので、アニメのなかの声優がそのままで、舞台版のジャパリパークが実現するのかと思うと、すごくワクワクしました。
プレッシャーというより、楽しみな気持ちのほうが大きい?
楽しみな気持ちのほうが大きいです! アニメのアフレコのときも、けっこうサーバルっぽい動きをしながらアフレコをしていることが多かったみたいなので…その雰囲気がそのまま舞台で活かせたらなと思っています。
アニメでのサーバルらしい動きを、尾崎さんがマイク前でやっていたということですか?
はい。ジャンプしたりとか、サーバルの「すっごーい!」というセリフのときに、けっこう前のめりになったりとか。特別、意識してやっていたわけではないんですけどね。
なるほど。その自然な感じで舞台にも臨もうということですね。
アニメで、私をサーバル役に選んでいただいたのも、「普段の生活が一番サーバルに近そう」だったかららしいんです。だからこそ、「サーバルらしくなろう!」って、ガチガチに意識しなくてもいいのかなって。サーバルらしい、のびのびした感じが出たらいいだろうなと思うので、私も自分らしく、のびのびと演じたいなと考えています。
舞台で楽しみにしていることは?
やっぱり、サーバルがどういうふうに動物たちと関わっていくのかなっていうのは気になっています。サーバルが動物と出会うと、ボケとツッコミみたいになるんです。サーバルがいつもツッコんでいる…みたいな(笑)。だから、舞台ではどう表現されるのかなと、とても楽しみです(※取材が行われたのは5月中旬)。

「すっごーい!」を求められる!? 人気の影響とは

「けものフレンズ」は、2016年に声優デビューされた尾崎さんにとって、初の30分アニメだったんですよね。その絶妙なゆるさから、じわりじわりと人気を伸ばして、今や「社会現象」とも言われる人気を誇るほどに。改めて、尾崎さんにとってどんな作品だと感じますか?
自分を変えてくれたというか…声優デビューをしてまもなかったので、不安なこととか自信がなかったことがたくさんあったんですけど、声優として頑張りたいっていう意欲を強く持たせてくれた作品だなと感じています。「けものフレンズ」に出演して、ホントに「スタートだな」と強く思いました。
サーバルという役に出会ったことは?
自信がなくなったときでも、サーバルの言葉ひとつひとつに助けられたなという感じはしています。サーバルの「大丈夫、かばんちゃん(TVアニメ「けものフレンズ」の主人公・さばんなちほーにいた迷子)ならできるよ!」っていうセリフは、自分に言い聞かせているときもあって。明るくて天真爛漫なサーバルが言うからこそ、「明日から頑張ろう!」って思えるような…励まされる気がしています。視聴者の方からも「サーバルちゃんのおかげで癒やされた」とか、「励まされた」と言っていただけることが多いんです。
Twitterなどで、視聴者の方から直接言葉をもらうことも多くなったのでは?
そうですね! 「けものフレンズ」がはじまる前は、Twitterのフォロワー数が5000人くらいだったんですけど、話数を重ねるにつれて、フォロワーのみなさんが増えていって! 今は、“フレンズ”が4万人くらいになりました!
驚きましたか?
それだけ、愛されている作品だなっていうのを…ホントに噛みしめるように実感しましたね。「けものフレンズ」に出演して一番変わったのは、“フレンズ”の多さじゃないかなと思っています(笑)。
それこそ、動物園にサーバルキャットを見に行く方が増えたり、『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に、どうぶつビスケッツ×PPPとして出演して、主題歌『ようこそジャパリパークへ』を披露されたりもしました。「社会現象」とも言われている現状をどう感じていますか?
ホントにありがたい限りです…。ビックリしています。ただ、私自身が変わったことっていうのはあまりなくて……あっ、ひとつありました! サーバルのセリフがすごく特徴的なんですけど、私が「すごい」ってポロッと言葉にすると、みんな「あっ」って顔をするようになって(笑)。
「すっごーい!」を求められちゃうんですね(笑)。
そうなんです(笑)。だから私も、「あっ…すっごーい!」って言い直したりとか(笑)。だから、いろんな現場で「すごい」って言いすぎないようにしようと思っているんですけど…今日、すでにけっこう言ってますよね。普段から使う言葉なので、つい出ちゃいます。

子役時代の経験を持って声優へ。芝居の表現への戸惑い

尾崎さんはもともと子役として活動されていたんですよね。当時、舞台には出演されていたんですか?
子役の頃はあまり出たことがなくて、小学生くらいのときに2回くらい、ちょい役で出たことがあるくらいですね。ホントに、すぐ出てすぐ帰るみたいな。だからこそ、ちゃんと舞台と向き合うのは、今回がはじめてかもしれません。
子役の頃は、どんなお仕事をされていたんですか?
映像系が多かったです。ドラマに出演していたり。
そうだったんですね! そのときは女優を目指していたとのことですが、声優というのは…?
そもそも、私はアニメをまったく見ないタイプだったので、考えたことがなくて。でも、アニメ好きの兄にオススメされて見はじめてから、アニメってこんなに楽しくて面白いんだってことを感じるようになったんです。
そうして、声優に興味を持ったんですね。
はい。それに、『ラブライブ!』などでもそうですが、最近は、声優がTVなどに顔出しで出演することも多いじゃないですか。そういった声優の幅の広さをすごく素敵だなと感じて、自分のなかで惹かれていきました。
声優のお仕事の楽しさとはどんなところだと感じていますか?
女性でも男性の役を演じることができたり、サーバルみたいな動物の役も演じることができる。身長も、年齢も、性別も関係なく、役を演じることができるという部分に魅力や楽しさを感じています。
子役の頃の経験と違って、最初は戸惑ったりしませんでしたか?
最初は戸惑いましたし、すごく苦労しました。自分の声に自信がなかったのと、アニメもそんなに見たことがなかったので、声の出し方からまったくの初心者で…。マイク前に立つとどうしても体で表現しちゃって、自分が出てしまったりもして…。
それは子役の頃の経験で染みついている部分というか…。
そうなんです。どうしても、体で表現しようとしてしまうところがあったので、声だけで表現することの難しさを痛感しました。ホントにたくさんのアニメを見て、声の出し方だったり、ニュアンスだったりを勉強しましたね。
アニメは、ジャンル関係なく見たんですか?
見ました! 1話1話を、「こういう役だったら、こういうしゃべり方をしたほうがいい」とか、「こうしゃべったら特徴が出るんだな」って勉強しながら。たぶん、負けず嫌いなんだと思うんですけど、できない自分に「何でできないんだ!」って思ってしまうんです。できないことはやらなきゃ! っていう思いが強くて、勉強への意識につながっていったのかなと感じています。
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