オックスフォード大学大学院で修士号を取得、ほかにも英国有名校のMBAを持ち、数々の外資系企業で重職を歴任――。そんな山田美樹さんが、自身の仕事術を『外資系で学んだすごい働き方』(プレジデント社)にまとめました。その内容はずばり「すぐに役立つ」仕事術。今回は著書から「睡眠の取り方」について紹介します。

■毎日6〜8時間、質の高い睡眠を取る

安定して高いパフォーマンスを上げるには、コンディションを整えることも大切になります。休息と栄養をきちんと取ることが大事です。

重要なのは十分な睡眠を取ることです。私は常に睡眠の時間を確保すること、睡眠の質を上げることを心がけています。毎日6〜8時間の睡眠時間を確保し、夜は10時、遅くとも12時には寝て、朝は6時過ぎに起きています。睡眠時間は特に気をつけていて、非常に忙しい時期でも最低4時間半は取ります。

仕事が終わらず、やらなくてはならないことが残っている時は、とりあえず寝て、翌朝早く起きて仕事をするようにしています。目覚まし時計だけでなく、寝る時間もリマインドするアプリを使って睡眠時間を管理しています。

「ニュートン」で発表されていたある研究結果によると、睡眠時間を削って仕事をするのは酩酊状態と同じで非常によくない。それよりは、きちんと睡眠を取ったほうがパフォーマンスは向上するという結果が出ています。どんなに忙しくても眠ることが大事なのです。

ただ眠ればよいのではなく、睡眠の質がポイントで、深い睡眠が必要です。

ストレスフルで長時間労働のコンサルティング会社に勤めていましたが、会社主催で睡眠セミナーが数回開催され、そこで睡眠の質を高めるには、音や温度、湿度、光にも注意すべきと教えられました。

静かで、真っ暗で、そして適度な温度、湿度の部屋で眠りましょう。

■夜10時以降、スマホはみない

以前は仕事が忙しい時に疲労困憊して帰ってくると、リビングのソファに倒れ込むようにして寝てしまうこともありました。はっと目が覚めると電気がこうこうとついている中、着替えもしないまま寝ていたというのは、最悪な睡眠ですね。 

こういう生活を続けると、疲れはとれず、翌日も気分が乗りません。

睡眠をおろそかにしていた頃は体調を崩したり、仕事がうまくいかなかったり、精神的にも落ち込んだりということが多かったので、睡眠にこれだけこだわるようになったのです。

実際、睡眠の時間と質を確保するようになってから、気力が充実し、集中力もアップ。

優先順位づけや意思決定も適切に行え、ポジティブで建設的な対人関係を築きやすくなったように思います。

夜、家では蛍光灯は使いません。蛍光灯の光は刺激が強く、神経を興奮させ、眠りにはよくないからです。光のやわらかいフロアランプにしたり、ろうそくを灯したりします。

ろうそくの揺らぎを見ていると、気持ちが落ち着く効果があると言われています。スマートフォンやテレビの光も神経を興奮させるため、寝る2時間前からは見ないようにしていますし、会社からのメールも「夜10時以降はいっさい見ない」と宣言しています。

■入眠用のCD、寝具にも気をつける

なかなか眠りに入れない時には、入眠用のCDを流しています。α波が出るようなCDを数枚持っています。クラシック音楽(静かな曲目)を聴いて気分を落ち着かせることもあります。

睡眠中の胃腸に負担がからないよう、眠りに入る3時間前以降は食べ物を摂らないようにして、飲み物もノンカフェインのものを選びます。カモミールティーやホットミルクに蜂蜜を少しだけ加えたものを飲んでいます。

質の高い眠りのために大切なのが、寝具です。

寝具は軽いもの、軽くて暖かい羽毛布団がおすすめです。

枕はカスタムメイドのものを使っています。頭の沈み具合が一番よい状態になるような高さに作ってもらいました。

枕が合わない場合、寝違えたりして疲れが取れないことがあります。枕は睡眠の質に関わってくるので、できれば自分に合った枕を作ってもらうといいと思います。

寝間着は、身体に服の圧力をかけないものを選んでいます。軽くゆったりしていて、身体を締めつけるようなゴムが入ってないもので、夜間にかいた汗を吸い取ってくれる生地のものがおすすめです。ゴムが入っていない長いシャツのような、インドのパンジャビスーツのズボンなしのような寝間着を着ています。

■昼休みに15分仮眠を取る

会社でも、疲れてしまって頭が働かない時は15分だけ仮眠を取るようにしています。以前勤めていた会社にはマッサージチェアが設置されていて、そのプログラムが15分だったので、マッサージしながら仮眠を取っていました。

今は、昼食後、午後の仕事を始める前に15分だけ仮眠を取ることがあります。

15分という時間が重要で、本格的な眠りに入る前の眠りに留めるようにします。

なぜかというと、本格的に深い眠りに入ってしまうと夜の睡眠の質が下がってしまうからです。ですから昼寝は長く眠ってはいけない。軽く疲れを取るための15分程度の仮眠。

これでかなりリフレッシュできます。デスクで仮眠するのではなく、カフェなどを利用しています。旅先で周囲の音が気になる時には耳栓、光がまぶしい時のためにはアイマスクを用意しています。飛行機の中でもこの二つを用意しておくと、かなりよく眠れます。

心身の不調がある方はまず、質のよい睡眠を心がけてみてはいかがでしょうか。よい睡眠を取ることは、今やビジネスプロフェッショナルのたしなみと言ってよいと思います。

※本連載は『外資系で学んだすごい働き方』からの抜粋です。

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山田美樹(やまだ・みき)
外資系企業社員
1975年埼玉県行田市生まれ、行田市育ち。上智大学比較文化学部卒業後、オックスフォード大学大学院社会人類学修士(M.Phil)を経て、欧州系戦略コンサルティングファームCVA、グローバル会計事務所Deloitteに勤務。その後、ロンドンビジネススクールにてMBAを取得し、組織・人事領域を専門とするコンサルティングファーム、ワトソンワイアット(現Willis Towers Watson)に入社。これまで、大手企業を中心に15年以上、100社以上の経営戦略を実現する組織と、個人のミッションを実現するキャリアの構築を支援し、ハイパフォーマンス人材の発掘・評価も手がける。現在は、大手外資系ヘルスケア企業にて、社内の人事戦略立案、人事課題の解決に従事。共著に、『攻めと守りのブランド経営戦略』(税務経理協会)。GCDFキャリアカウンセラー(Global Career Development Facilitator)、認定レジリエンストレーニング講師。寄稿、講演多数。本書が初の単著。

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(山田 美樹)