クールで冷静に言葉を選ぶこの男の胸には、まだまだ熱い想いが秘められているに違いない。「もっと聞きたい」と後ろ髪を引かれつつ、レコーダーのスイッチを切る。引く手あまたな俳優・菅田将暉の取材時間には限りがあるのだ。映画『帝一の國』で菅田が演じるのは、「総理大臣になって自分の国を作る」という壮大な野心を抱く高校生。「野心まみれのところが自分と似ている」と話す彼は、「コソコソしてるもんですから、役者って」と思わせぶりにかすかな笑みを浮かべてみせた。

撮影/川野結李歌 取材・文/新田理恵 制作/iD inc.
企画/ライブドアニュース編集部

“帝一”を「他の人にやられたら悔しい」と思った

『帝一の國』は、日本一の超名門校を舞台に、将来の内閣入りが確約されている生徒会長にのぼりつめようと、主人公・赤場帝一がライバルたちと戦いを繰り広げる物語です。完成した作品を観たご感想から教えてください。
もう1回ゆっくり観たいと思っていますが、暑苦しくて、全員が全員、本気なんだなっていうことが、ビシビシ伝わってきたので、まずはそれでよかったなっていう感じですね。もちろん笑いどころもあるし、笑ってたらいつの間にかホロッとくるところもあるし、ちゃんとエンターテインメントになってるな、よかったな、と思いました。
もともと原作である漫画が好きだったと聞いています。出演が決まったときの気持ちは?
嬉しかったですし、「この役は他の人にやられたら悔しい」っていう気持ちがあったので、「よし!」っていう感じでした。
帝一のどういう部分にひかれたのですか?
もともと古屋兎丸先生の漫画が大好きなんです。必ずしも好きな漫画の役を全部やりたいとは思わないんですけど、『帝一の國』は古屋先生の作品の中でもちょっと異色で。じつはすごく地味な“生徒会選挙”という戦いが、古屋先生が描くキャラクターの濃さと、表情と物語によってエンターテインメントになっているところが、今っぽくもあると思う。それに帝一のビジュアルや、はいつくばってる感じがなんか好きで…。
たしかに、帝一はものすごく頑張ってますよね。
本当は頑張らなくてもいいんですよ、そんなに。帝一って家柄も申し分ないし、容姿端麗、成績優秀だし、普通に生きようと思ったらいくらでも生きられる。けれど、「それじゃダメだ」っていう。総理大臣を目指す、トップを目指す、僕の国を作るっていう、ある種自分で苦しいところに身を置こうとしていくところが好きで、演じたいなと思っていました。
映画化が発表になったときのコメントで、「原作を読んで、この役は自分が演じるためにあるんじゃないかと感じていた」とおっしゃっていましたが、その理由は?
たぶん、同世代の俳優の中でダントツ、七三をやってるのが僕なんで(笑)。「一番、七三を愛してるのは僕だ!」っていう気持ちと、あとはなんですかね…。
菅田さんの中にも、帝一のような要素があるということでしょうか?
そうですね。同じく野心のかたまりでもあると思うし。帝一の、靴まで舐めるという、要は、「勝ちゃいいんだよ」ってところとか。でも、ただ「勝ちゃいい」のではなく、自分なりの美学を持っているところが好きですね。間違ったらすぐ謝るし、素直なんですよね。
帝一に感じる美学というのは、たとえば?
真面目ですし、勤勉だし。ちゃんと一生懸命頑張るところじゃないですかね。父の代から続く因縁みたいなものも背負い、何がなんでも一番を目指す。そのために日々をすべて費やすというのは、なかなかできないことだし、平成生まれの僕ら世代にはいない、そんな生き方ができる帝一にどこか憧れもあります。

若手俳優が作り上げる「果たし状」のような作品に

野村周平(東郷菊馬役)さん、竹内涼真(大鷹 弾役)さん、間宮祥太朗(氷室ローランド役)さん、志尊 淳(榊原光明役)さん、千葉雄大(森園億人役)さんなど、同世代の共演者が多い現場の雰囲気はいかがでしたか?
男子校ですね。ホントに箸が転がっても笑うような、バカばっかりなんで(笑)。今回、みんなで裸になって撮影する日々が多かったので、ただ楽しかったです。仲もいいです、いまだに。いわゆるグループLINEみたいなもので、掛け合いがずっと続く現場もめずらしい。もともとみんな、この作品に入る前から知り合いだったので、普通の友達としても関係性が成立している彼らと、こうして、大きな映画を作っているというのは変な感じでした。
撮影に臨む前に、「これをやろう」という目標はありましたか?
ひとつは、同世代の他の役者が観たときに、「わー、出たかったな」って思える作品にしたいなということがありました。アンダーグラウンドなものだけをやってる人ばかりではなく、エンターテインメント性の高い作品で、光を当てられるところに飛び出していってる20代前半の俳優が集まって、中心になって成り立たせようと頑張ってる映画って、おそらく今ないと思うので。
なるほど。
そういう意味では、この作品は「果たし状」というか、「こんなヤツらがいますよ」っていうことをドーンと記憶に残してもらえる作品にできればなって思っていました。
完成した作品をご覧になって、そのあたりの手応えはどうでしたか?
手応えはありますね。誰ひとり埋もれてないですし、みんなちゃんと記憶に残る。このメンバーのキャスティングは大正解で、それぞれ、どこかパーソナルな部分でも役にはまってる。この業界は、嫉妬の世界でもあるので、「あの役いいな」という気持ちになることもよくあると思うんですけど、今回に関しては誰もないと思うんですよね。自分が役にはまってるって、それぞれが自覚していただろうし、それを楽しんでやっているのが目に見えたので、バランスがすごくよかったと思います。

「役者業ってプライベートなんて見せなくていい」

みんな役にはまっているとのことですが、ご自身と帝一に近い部分はありますか?
人前に出たときはそんなに感情を表に出さず、信頼できる人と何か企んでるときに一番テンションがあがるっていうのは、すごくよくわかります。
菅田さんも密かに策略をめぐらすタイプ?
そうですね、みんなそうじゃないですかね。モノを作るっていうのはそういうことで。あと、役者業ってプライベートなんて見せなくていいと思っているので。あくまで、役を演じるという仕事ですから、タレントともまた違う。だから、帝一の生き方って役者っぽいですね、気質として……。彼はちょっと見せすぎですけど(笑)。
感情がポロッと出ちゃっていますからね(笑)。
抑えきれない。だから可愛いんですけど。
帝一が役者っぽいという見方は意外でした。
たとえば、実力者の氷室ローランドの下につくときは、完全にそれに徹するところとか。どこか身を削っている、そんな小器用さが必要なところは非常に役者っぽいなと思います。コソコソしてるもんですからね、役者って(笑)。
靴を舐めるシーンも印象的ですが、今までの人生で「靴を舐めてもいい!」って思えるような人との出会いはありましたか?
ないですね! 残念ながら。帝一は目標が明確にあるからできるんでしょうね。僕もたぶん、目の前にどうしても成し遂げなければいけないことがあって、「この人の靴を舐めればいい」ってなったら舐めますけど……。でも、他にも選択肢はあるんですよね、現実には。あとはプライドの問題ですよね。
帝一と、彼を献身的にサポートする親友・光明の信頼関係もしっかり描かれていましたが、菅田さんにも光明のような存在の人はいますか?
「補佐」という役割ではないですけど、いろいろと技術を貸してくれるパートナーはたくさんいます。たとえば洋服関係だったり、音楽関係の人たちだったり。各分野に、僕の知らないことや「やりたい!」って思ったものを手助けしてくれる人はいっぱいいます。
そんな存在をありがたいと思うのはどんな瞬間ですか?
その人たちと会うのは、僕にとって飲みに行くようなものなんです。僕は、お酒はそんなに飲まないんですけど…。もし飲む人だったら、仕事が終わって、ワーッとしゃべって飲んで…っていう時間が、モチベーションにつながったり、活力になると思います。それがたぶん、僕の場合は服を作ったり、音楽をやったり、真っ白なパズルを作ったりしてる時間なんです。そういう時間がないと、たぶんやっていけない。
真っ白なパズルというのは…?
想像してみてください。
めっちゃくちゃ難しそうですよね…。
めっちゃ難しいです。絵柄がないので。ぜひやってみてください、150ピースぐらいのものから3000ピースぐらいのものまであります。自分で絵を描きたい人や、単純に地獄を提供されたいっていうドMの人用のものです。
なぜそれが好きなのですか? 苦しいところに身を置こうとする帝一と、つながるところがあるような…。
そんなストイックなものではないですけど(笑)。淡々と何かをするのが好きなんですよね。ちょっとでも時間が空くと、あれこれ考えてしんどくなるので、無意識に集中できるものがあったほうが、1回脳を休められるからです。(白いパズルは)けっこう大変なんですよ。まず形状が類似したものごとに分けていって、それから外枠のパーツだけを埋めて、1個1個地道にはめていくんです。面白いですよ。やる必要はないけど、こういう場でしゃべれるので報われたなと思います(笑)。

俳優としての野心…まずは日本、そして海の向こう側

先ほど、帝一と同様、菅田さん自身も「野心のかたまり」とおっしゃっていました。菅田さんの野心を教えてください。
野心ですか? いっぱいあります。どんなのがいいですかねぇ…。
すでに若手の実力派として、人気も評価も獲得されています。俳優が抱く野心として、行き着く先はどこなのだろう? と興味があります。
まずは日本っていうもの、そして世界っていうもの…ですかね。言葉にすると。
海外の作品に出演したいとか、あるいは日本の作品を海外に持っていくとか…?
両方ありますね。今度初めて大河(NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』)に出させていただくんですけど、それもひとつ、日本の俳優として大きな出来事ですし、日本のエンターテインメントを、もっと、なんていうのかな…。
地位を高めていきたい?
今はどうしても、お客さんとの距離がどんどん近づいてきてるので…。
お客さんの意向を意識して作られた作品が、多くなっているということ?
そうです。こっちから歩み寄らないと、お客さんが劇場に入ってくれなかったりする。もちろん、時として大事なことだけれども、そうなってくるとスターやカリスマは生まれないと思う。そのへんがもっと自由に、面白くなってくればなって、思うところはありますね。
そのためにご自身ができることを考えていますか?
自分が何をできるのかはわからないですけど、そんなことを感じながらやっていくことは大事だと思います。人気者だからできないものもあるし、そうじゃないからできることもある。僕も、来年食えなくなるかもしれないわけで…。だからひとつひとつ力をつけて、ものづくりをしていきたいですね。
真摯に向き合っていくことで開けるものがある、と?
そうですね。そこはホント、帝一の生きざまと同じだと思います。
野心や希望って公言すると叶うって言いますが、こういうお話はよく人にされるのですか?
言うようにしていますし、ほぼ有言実行でここまできています。
明確に、海外の作品に出演したいという気持ちも…?
もちろんありますね。
好きな海外の監督さんっていらっしゃいますか?
今だと、グザヴィエ・ドラン監督にお会いしてみたいですね。年齢も僕より少し上なくらいですから。
同世代ですごいものを作ってる人って刺激になりますか?
なりますね。「知りたいな」って純粋に思います。「なんでこんなものが作れるんだろう?」って…。
菅田将暉(すだ・まさき)
1993年2月21日生まれ。大阪府出身。A型。2009年、『仮面ライダーW』(テレビ朝日系)でデビュー。NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』、『ちゃんぽん食べたか』(NHK)など話題のドラマに次々と出演し、『民王』(テレビ朝日系)で民放連続ドラマ初主演。2016年は『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)も話題に。今年はNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』に井伊直政役で出演予定。映画では『共喰い』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後、『セトウツミ』、『溺れるナイフ』、『キセキ -あの日のソビト-』に出演。2017年に『銀魂』(7月14日公開)、『あゝ、荒野』、『火花』などが控える。歌手としても活躍の場を広げ、6月7日発売のau CMソング『見たこともない景色』でCDソロデビューが決定している。

出演作品

映画『帝一の國』
4月29日(土)全国ロードショー!
http://www.teiichi.jp/

サイン入りポラプレゼント

今回インタビューをさせていただいた、菅田将暉さんのサイン入りポラを抽選で2名様にプレゼント。ご希望の方は、下記の項目をご確認いただいたうえ、奮ってご応募ください。

応募方法
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受付期間
2017年4月27日(木)12:00〜5月3日(水・祝)12:00
当選者確定フロー
  • 当選者発表日/5月8日(月)
  • 当選者発表方法/応募受付終了後、厳正なる抽選を行い、発送先のご連絡 (個人情報の安全な受け渡し) のため、運営スタッフから個別にご連絡をさせていただく形で発表とさせていただきます。
  • 当選者発表後の流れ/当選者様にはライブドアニュース運営スタッフから5月8日(月)中に、ダイレクトメッセージでご連絡させていただき5月11日(木)までに当選者様からのお返事が確認できない場合は、当選の権利を無効とさせていただきます。
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