ファーウェイは2017年4月11日から13日の3日間、中国・深センで「ファーウェイ・グローバル・アナリスト・サミット」(HAS)を開催した。今年で14回目となるHASは、世界各国から主に産業アナリストやオピニオンリーダーが集まるイベントで、ファーウェイのこれからの経営戦略方針が説明された。

 

▲ファーウェイのグローバル・アナリスト・サミットが今年も開催

スマートフォンなどのデバイス事業だけではなく、ネットワーク関連のインフラ、さらには企業向けのソリューションビジネスと、ファーウェイのカバーする範囲は今のICT時代に求められるほぼ全ての分野をカバーしている。

この3分野それぞれに強みを生かすことで、ファーウェイは5Gに向けて加速化する通信業界の中核的な存在になっている。スマートフォンはよりユーザーフレンドリーなものとなり、ネットワークは全てを繋ぐパイプとしての重要性を増し、そしてあらゆる企業がクラウドを活用することで、"オールコネクテッド"と呼べるインテリジェントな世界が現実なものになろうとしている。

 

▲3つの事業で市場をけん引する

同社の事業の中でも、スマートフォンの販売台数で世界シェア3位の座を確固たるものにしているデバイスビジネスは今最も注目されている存在だ。サムスン、アップルと言う2つの巨人に対し、その存在を脅かす対抗勢力はなかなか生まれてこなかった。しかし今やファーウェイは上位との差をじわじわと詰め始めている。

1年の間で最もスマートフォンが売れる2016年第4四半期(10-12月)、ファーウェイの販売台数はついにサムスン、アップルの半分を超えた。2016年は通年で1億台の大台にも販売数を乗せている(ガートナー調査)。

このファーウェイの強さについて、同社コンシューマービジネスグループのグローリー・チャンCMO(最高マーケティング 責任者)から昨年のパフォーマンスの分析結果や市場での動きが報告された。ファーウェイの強さは一時の勢いではなく、数年にわたる地道な製品開発や大胆なマーケティング戦略のもたらした結果だ。

 

▲2016年のデバイス事業のパフォーマンスをグローリー・チャンCMOが説明

チャン氏は最初にファーウェイのブランド力が一昨年に比べ大きく高まっていることから説明した。世界のブランド力を調査する有力3社---インターブランド、ブランドZ、ブランドファイナンス---の調査によると、2016年のファーウェイのブランド認知度はそれぞれ88位 72位、70位 50位、47位 40位となり、消費者に知られるメーカーとして着々とそのポジションを高めつつある。

また個別のイメージを見てみると、海外市場では「信頼性」「スタイル」「ダイナミック」という印象がこの1年で大きく高まっている。もはやファーウェイの製品は安心して使え、見た目も良く、そして何か新しいことやってくれるというイメージを高めているのだ。

 

▲ブランド認知度は年々上昇

またメーカーに対するロイヤルティも各国で高まっている。その指標の一つであるネット・プロモーター・スコア(NPS)はメキシコなど新興国だけではなく、ドイツなどの先進国でも数値を大きく上げた。日本でも昨年発売の「P9」を購入し、それを人に勧めた購入者も多いだろう。

今年2月のMWC2017で発表された「P10」も、発売前から世界各国での人気が高く、筆者の回りのファーウェイ端末の未所有者の中からも「購入したい」という声が多く聞かれる。

 

▲ファーウェイに対するロイヤルティも高まっている

チャン氏の説明によると、出荷台数ベースでのファーウェイの2016年のマーケットシェアは9.3%で3位。しかし国別でみると、15%を超える国が33カ国、20%を超える国は22カ国もあるという。しかもイタリア、フィンランド、オランダ、ベルギー、ポーランド、スペインなどヨーロッパの主要国がいずれも20%を超えているのである。

ここ1-2年でスマートフォン市場を賑わせているシャオミやオッポなどの中国新興メーカーはその出荷数の大半を中国や新興国に頼っているが、ファーウェイは先進国でもしっかりと売れているのだ(ベースデータはGFK、2016年12月の結果)。日本でも2016年1-11月でシェアは6%弱ながらも4位に入るなど、ファーウェイの端末は世界中で売れまくっている。

 

▲シェア20%を超える国はヨーロッパの先進国を含む22カ国に達している

さらに今、ファーウェイは販売台数・出荷台数だけではなく、端末の収益面でも利益を高めつつある。2015年第4四半期と2016年第4四半期の端末シェアを価格帯別で比較すると、300-400ドル、400-500ドル、それぞれの価格帯のシェアは約1%の微増だった。

一方500-600ドルの高価格帯では11.2%から22.6%と倍増、しかも300-500ドルの製品よりもシェアを高めている。つまりファーウェイの売れ筋製品はこの1年で一気に高価格帯の製品へと移り変わったのだ。

もちろん100ドルから200ドル台の低価格品もかなりの数が売れているだろうが、高性能・高価格なフラッグシップモデルもしっかりと売れているのである。これはより高価な価格帯の製品で戦っているアップルにとって、無視できない状況になっていくだろう。ちなみにiPhone 7の32GBモデルの価格は649ドルだ。

▲500-600ドル台の製品が売れ筋となっている

ファーウェイのハイエンド製品の人気は数字が証明している。ライカカメラで一躍メジャー製品の仲間入りをしたP9とP9 Plusの累計出荷台数は1200万台を突破、大画面モデルのMate 9も500万台と、2つのフラッグシップだけで1700万台を売りまくった。前年投入のP8、Mate 8と比較してもその伸びは高く、2016年のファーウェイの躍進はこの2つの機種がもたらしたと言っても過言ではない。

 

▲P9シリーズとMate 9は絶好調

2017年にはP10シリーズが早くも登場。サムスンのフラッグシップより早く出荷され、アップルの新製品の話題が市場をまだ賑わす前に市場での存在感を一気に高めようとしている。P10はカラバリも大きく増え、新たなユーザー層を開拓していくだろう。発売から約1年たったP9が今でも好調なだけに、P10も加わった製品ラインナップの魅力は強力だ。

 

▲グリーナリーやダズリングブルーなど新色が追加されたP10

ではファーウェイのスマートフォンは今後どの方向へ進もうとしているのだろうか。それはスマートフォンを最もよく使うユーザー層の動向から見えてくるはずだ。消費者の年代別に利用実態を見ると、18歳から34歳のいわゆるミレニアム世代は1日平均146分間スマートフォンを使っているという。これは35歳以上の倍以上も多い。このミレニアム層の50%以上がビデオや映画をスマートフォンで楽しんでいる。またSNSでのコミュニケーションは1日3時間以上であり、80%がFacebookアカウントを取得している。

▲ミレニアム世代が最もスマートフォンを使っている

そしてスマートフォンの使い方の1つのトレンドとしてチャン氏が上げたのが自撮り、セルフィーだ。18-24歳が撮影する写真の1/3がセルフィーであり、インスタグラムには世界中から10秒ごとに1000枚、すなわち1秒100枚のセルフィーがアップされている。またスナップチャットの74%の写真がセルフィーだという。

P10がフロントカメラをライカにし、また2016年発表のnovaシリーズがセルフィー機能をフィーチャーしているのも、このトレンドをしっかりと反映しているのだ。

 

▲スマートフォンでセルフィーがトレンド

子会社のハイシリコンがチップセット「Kirin」を開発するだけではなく、利用時間を延ばすための省電力技術や大容量バッテリーの搭載、ストレスなくネットにアクセスするためのアンテナ技術の向上、そしてカメラの高性能化など、ファーウェイのスマートフォンはここ数年で急激に性能を高めている。だがそれは単純にスペックの向上を目指したのではなく、ユーザーがストレスなくスマートフォンを使うことを第一に考えて技術開発を行ってきたのだ。

これから出てくるスマートフォンも、今のトレンドや市場ニーズにマッチした機能が強化されていくのは間違いない。

 

▲スマートフォンの技術向上はユーザー経験を高めるためのもの

今のファーウェイは高いブランド力と高品質かつ高性能な製品を送り出している。しかしユーザーの満足度を高めるためには、それだけでは不十分とチャン氏は最後に説明を加えた。スマートフォンという製品を消費者に提供するメーカーにとって、製品と同じレベルで重要なのが、買った後のサポート体制なのである。

トラブルや故障時に素早く対応し、ユーザーに的確なアドバイスを与えることができてこそ、メーカーとしての信頼を消費者に与えることが出来るのである。ファーウェイのサービスセンターは世界56カ国、720カ所以上の拠点を構えるに至った。日本でも銀座にカスタマーセンターをオープンしたのは記憶に新しい。またコールセンターは105カ国以上、64以上の言語に対応している。

 

▲サービスセンターなどサポートの充実化が顧客満足度に結びつく

一流メーカーの仲間入りを果たしたと言えるファーウェイだが、製品だけではなくサポートの向上など、その視線はさらなる上を向いている。日本にはP10を始め、今年も多数の製品が投入されるだろう。ユーザー視線で製品に向き合うファーウェイのこれからの新製品は、どれもが期待できる製品になりそうだ。