サッカーチームに続き、野球チームを立ち上げた37歳

 滋賀県初のプロ野球チーム、滋賀ユナイテッドベースボールクラブの母体である株式会社滋賀ユナイテッドは、スポーツ事業と青少年の育成、地域貢献活動を目的として、2015年12月に設立された。代表取締役の鈴木信哉氏が、脱サラをして起業。傘下には、滋賀県1部に所属する社会人サッカーチームの滋賀ユナイテッドMFC(本拠地滋賀県草津市)があり、ルートインBCリーグに所属する滋賀ユナイテッドベースボールクラブは、2つ目の事業として8日、1シーズン目の開幕を迎えた。この他、サッカーと野球を傘下に持つ企業としては、新潟アルビレックスがある。

 迎えた記念すべき開幕日。戦いの場となる皇子山球場で忙しく動き回る鈴木信哉代表取締役は、まだ37歳。サッカーチームに続き、野球チームを立ち上げた同氏に直撃インタビューした。

 球団を立ち上げ、実際に開幕を迎えるまで、監督や選手、スタッフを揃えることにも苦労したが、こんな難しさもあったという。

「一番苦労したのは球場の確保です。ここ皇子山球場をはじめ、滋賀県内に6球場を確保しました。滋賀ユナイテッドが球場を確保することで、地域の子供たちの試合(開催)に影響しないか少し気がかりですが、子供たちに良い試合をお見せすることで還元したいですね」

 球場としては、開幕戦を行った皇子山球場が一番大きく充実しているが、独立リーグは「県民の球団」でもある。多くの滋賀県の人々、とりわけ子供たちに観戦してもらうために、今季は湖東、甲賀、守山市民、彦根、今津の6球場で主催ゲームが予定されている。日程調整や広域に及ぶ観客動員を狙った活動なども苦労は多いが、地域貢献活動という意味では大いに意義があることだ。

目標は「1人でも多くの選手をNPBに送り出すこと」

 生まれたてのチームを率いるのは、2007年に8勝を挙げ、新人王に輝いた元阪神の上園啓史氏だ。ヘッドコーチには、往年の名捕手で元中日の木俣達彦氏が就任。そして、打撃コーチには、上園監督と阪神で共にプレーした元捕手、桜井広大氏が就いた。地元出身の桜井コーチをはじめ錚々たる顔ぶれに、鈴木代表も大満足だ。

「地元滋賀県野洲市出身の桜井広大コーチをはじめ、熱い気持ちでお集まりいただきました。滋賀県は阪神ファンも多いので、桜井コーチには頑張ってほしい。選手も、いろいろなご縁をいただいて集まってきてくれた。ありがたいことです」

 ベースボールクラブとしての目標に掲げるのは、やはりNPB球団に選手を輩出することだ。

「1人でも多くの選手をNPBに送り出すことを目標にしたい。チームには、元阪神の西村憲投手も参加している。西村投手にとっては最後の挑戦だと思う。ぜひ頑張ってほしいですね。そして選手たちのセカンドキャリアづくりにも前向きに取り組みます」

 そして何よりも、滋賀県初のプロ野球チームが地域に愛され、子供たちに夢を与える存在であることを目指す。

「滋賀県でもスポーツ少年団の人口が減っていますが、子供たちに素晴らしいプレーをお見せすることで、スポーツ、野球の普及につなげたい。大変なこともあると思うが、滋賀県初のプロ野球チームを地域に根付かせていきたい。頑張ります」

 鈴木代表の挑戦は始まったばかりだ。

広尾晃●文 text by Koh Hiroo