〈安倍一強〉安倍政権は、しばしば朝日新聞などにそう批判される。だが、それは本当に国民にとって悪いことなのか。ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、「ためにする批判だ」と指摘する。

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 言うまでもなく民主主義を支える根幹に言論の自由、報道の自由があります。メディアが時の政権を監視し、必要とあれば批判するのは当然です。むしろメディアには政府に対する“チェック機能”の役目が期待されています。ただしそうした報道や批判は、あくまでも事実に基づいていなければなりません。

 ところが朝日新聞などの安倍批判は往々にして「ためにする批判」でしかないと思います。一例が今年1月22日付の社説です。朝日新聞は安倍首相の施政方針演説についてこう書きました。

〈「意見の違いはあっても、真摯かつ建設的な議論をたたかわせ、結果を出していこう」首相は演説で、民進党など野党にそう呼びかけた。だが先の臨時国会での安倍政権のふるまいは違った。(中略)与党は採決強行を繰り返した〉〈数の力で自らの案を押し通すやり方を「建設的」とは言わない〉

 これだけを読むと、安倍政権がいかにも“独善的”だというふうに見えます。しかし、野党のふるまいはどうだったでしょうか。例えば安保法制の議論では、民進党をはじめとする野党の議員は、国会を出てデモの列に加わりました。野党の議員たちは、「建設的な議論」どころか立法府の役割を放棄したのです。

 また、〈数の力〉を否定することは多数決の否定であり、これでは民主主義は成り立ちません。

 民主党政権時代、与党としての民主党は3年3か月の間に、衆参両院の委員会で24回も強行採決をしています。朝日新聞がその時、安倍政権に対するのと同じように民主党を批判したでしょうか。そうではなかったと思います。朝日新聞は一方の非を棚に上げて、安倍政権に狙いを定めたかのように、そう思われても仕方がないほど、一方的に批判しているわけです。

 米軍普天間飛行場の移設問題についても同日付の朝日新聞社説は、

〈沖縄の未来をつくる主人公は沖縄に住む人々だ。その当たり前のことが、首相の演説からは抜け落ちている〉

 と批判しました。沖縄に辺野古移設への批判があるのはよくわかっています。同時に、私は辺野古地区にも実際に行って取材しましたから、反対論ばかりではないことも知っています。むしろ、久辺3区と呼ばれる地元では受け入れ派のほうが圧倒的に多いのです。

 久辺3区という地元の中の地元の人たちは、米海兵隊と長年にわたって非常によい関係を築いてきました。また、この人々は地政学上、沖縄が中国に席巻されてしまえば、沖縄だけでなく日本全体が危機に瀕することを理解しています。普天間飛行場の移設はもちろん沖縄の問題ですが、日本全体の問題でもあるのです。この社説にはこうした視点が完全に〈抜け落ち〉ています。

 1月26日の社説では〈財政再建 決意ばかりの無責任〉と題して、安倍首相の国会答弁を糾弾しました。

〈首相は経済成長による税収増を強調するが、それだけでは達成はおよそ見通せない。にもかかわらず、歳出の抑制・削減や、消費税を中心とする増税には及び腰である。どうやって実現するのか、決意ばかりで具体的な説明はない。あまりに無責任だ〉

 財政再建は、民主主義国家においては極めて難しい課題です。予算のどこかを削れば必ず反対が起きます。

 日本経済は為替レートなど外的要因を受けて、経済成長の目標達成は思い通りにいきません。アベノミクスによる成長は足踏みしているのは事実だと、私も思います。それでも税収は増え、失業率が下がるなど、かつての民主党政権下の経済よりずっと好転しています。

 朝日新聞はそうした改善された面は見ないかのように〈歳出の抑制・削減や、消費税を中心とする増税には及び腰〉と批判しています。

 ということは、歳出の削減や増税をすべきと考えているのでしょうか。であるなら、そういう主張も展開してほしいですね。しかし、もし政府が歳出削減や増税を打ち出せば、また朝日は大きな批判を繰り広げるのでしょう。

●さくらい・よしこ/新潟県長岡市出身。ハワイ州立大学卒業。元日本テレビ「きょうの出来事」キャスター。1995年、『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』で大宅賞受賞。執筆・講演活動を続ける一方、インターネット放送「言論テレビ」を運営中。

※SAPIO2017年5月号

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