ワープロってご存知でしょうか?
正確には、ワードプロセッサーの略です。

今はスマートフォンやパソコンが全盛ですが、スマートフォンやパソコンが登場する以前は、文字入力機器として一世を風靡した機器がワープロです。

1970年代以前は、自宅や学校での文字入力は手書きが中心でした。
コピー機もなく、ガリ版印刷を学校で行って、印刷をしていた時代です。

そして、1980年代に入り、ワープロが登場します。
ワープロは、キーボードとディスプレイとプリンターが一体型になった機器でした。
モノクロディスプレイで、とても大きく重いものでしたが、ディスプレイ上で、文字を手書きではなくキーボードから入力ができて、さらに印刷までできる。

文字入力から印刷まで、文書作成がオールインワンでできる画期的な機器でした。

筆者は、1980年代に大学生活を送っていましたが、まだパーソナルコンピューターは高価で、ワープロを購入するのが精一杯でした。
当時は、卒論は手書きが当たり前で中心でしたから、ワープロで卒論を書けることに大きな喜びを感じたものでした。

1990年代となり社会に出て、まず買ったものはポータブルワープロでした。
勤め先では、まだ個人でパソコンやワープロがなく、職場で共用していました。
ポータブルワープロを初任給で購入して、効率的に仕事をするために社内で持ち歩いて利用していました。

仕事の文書作成で便利に使っていたワープロですが、ここで、筆者が思いついたのは、ワープロをノート代わりにできないか、ということでした。

当時は、社内を、ワープロに加えて、紙のノート、大判のスケジュール帳、アドレス帳、大型のファイルを持ち歩く毎日でした。その頃では珍しいフリーアドレスの職場だったので、常に両手に沢山の資料を抱えて移動しながら仕事をしていました。

その資料類を全てワープロに収納できれば、コンパクトになる、そんな発想でした。

まず行ったことは、スケジュール帳とアドレス帳を捨てること。ワープロにもスケジュール機能とアドレス帳機能がありましたが、それは利用せずに、テキスト形式でフロッピーディスクに保存することにしました。そうしておけば、他のワープロでも参照できるためです。当時は、ワープロ毎に文書形式が違うため、同じメーカーのワープロを使うのが一般的でしたが、筆者は、パソコンのMS-DOSフォーマットしたフロッピーディスクにテキスト形式で保存して、互換性を確保するようにしていました。

さらに紙のノートを捨てるようにしました。プロジェクト毎にノートを付けていたのですが、これも、テキスト文書で保存するようにしました。これだけで、日常持ち歩く仕事道具が大幅に削減されました。
その後、PDA(パーソナルデジタルアシスタント)が登場して、予定表やアドレス帳や文書管理などできるようになってきますが、その環境をワープロにて行っていたのです。

さらに、ワープロにモデムを内蔵させて、電話のモジュラー回線を利用して、アナログ発信をして、パソコン通信も活用するようになります。

まだインターネットがない時代でしたが、パソコン通信を通じて、情報のやりとりやメールのやりとり、チャットなど行っていました。ワープロ本体は、電池駆動の小型の機種で、プリンターは別体型を使い始めていましたので、どこでも持ち歩ける情報端末として活用できたのです。

スマートフォンが登場する20年以上前から、ワープロという機器でモバイルな活用を行っていました。
今のように小型で軽量、高機能な機器を誓う便利な世界を夢見ながら、ワープロを駆使して、工夫をしながら活用していた毎日でした。
その時は苦労も多かったわけですが、それはそれで楽しく、今ではよい思い出です。

ワープロで学んだモバイル技術も、今のスマートフォン活用にしっかりと繋がっていると感じています。


伊藤浩一