大女優を姉妹もつ倍賞明さん、節目の始球式を振り返る

 全国26連盟の春季リーグ戦等を勝ち抜いた27の代表校が日本一を争う大学日本選手権。今年は、巨人からドラフト1位指名を受けた吉川尚輝内野手を擁する中京学院大が初出場、初優勝を飾った。

 6月に行われた大会で始球式を務めたのは、1966年大会優勝の日大内野手、倍賞明さん(72)だ。倍賞さんは卒業後、社会人の鐘紡、日産自動車で活躍、日産自動車では監督も務め、現在は六本木で飲食店を経営している。姉は女優の倍賞千恵子さん、妹は女優、倍賞美津子さんだ。

 倍賞さんは始球式のマウンドに日大出身の巨人・長野久義外野手からもらったグローブでマウンドに上がった。

「ホンダの選手がうちのお店によく来ていたので、長野君も社会人の時からお店に来ていました。『始球式をやることになった』と話をしたら『それならグローブを提供しますよ』と言って、プロ仕様のグローブを作って持ってきてくれたんです」

 倍賞さんは50年ぶりの神宮のグラウンドに、緊張して頭が真っ白になってしまったという。

頭によぎった親友・長州力さんの始球式

「内野にお客さんが結構入っていました。一塁手だったので、選手の時は外野に目線が向いていますが、バックネット裏を見るのは初めてでした。マウンドに上がるのも初めてで、緊張してしまいました。バッターも立っていないのに投げようとして、審判に『まだ早い』って言われてしまいました」

 それでも、投球はノーバウンドでキャッチャーミットに届いた。マウンドでは、プロレスラーの長州力さんが始球式をした時のことが頭をよぎったそうだ。

「親友の長州力さんが2013年に広島で始球式をやることになったんです。『お願いだから、ワンバウンドはやめてくれ』と言ったら『大丈夫です。中学まで野球やっていました』って答えたんです。

 でも、長州さんの始球式をテレビで見ていたら、ツーバウンドしていました。マウンドは傾斜があるから、ボールを地面にたたきつけてしまうんですね。目標をうんと上にして投げたら、なんとかキャッチャーミットに届きました。球速80キロくらいでしたね」

長野、村田らを輩出の母校にエール「いい選手が出てきてくれると嬉しい」

 始球式をした神宮球場での第1試合は、優勝した中京学院大の試合だった。

「始球式の前、肩慣らしをしようと思って中京学院大の監督さんに『キャッチャー貸してくれませんか』とお願いしたら『倍賞さんですね。よく存じております』と言って、正キャッチャーを呼んできてくれました。そのチームが優勝しました。ショートはいい選手だと思っていたら、巨人に入団しましたね」

 倍賞さんの母校、日大は自身が一塁手として出場し、優勝した1966年以降、50年もの間、大学日本選手権で優勝から遠ざかっている。しかし、今年の東都大学野球秋季リーグでは04年春以来25季ぶりの優勝。京田陽太内野手は中日にドラフト2位で入団した。

 倍賞さんは「長野君、村田(修一)君(巨人)がプロに入ったあたりから、日大も注目され始めました。これからもいい選手が出てきてくれると嬉しいですね」と母校にエールを送っていた。

篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki