金融資産を保有していない、「貯蓄ゼロ」世帯が増えている。

日本銀行の金融広報中央委員会によると、「金融資産を保有していない」と答えた世帯は、2人以上の世帯で30.9%、単身者の場合ではじつに48.1%にのぼった。10年前(2007年)と比べて、2人以上世帯で10.3ポイント増え、単身世帯では18.2ポイントも増えた。その一方で、金融資産を持っている単身者の平均残高は増えている。数字のうえでは、安倍政権の経済政策「アベノミクス」が進むうちに、持てるものと持たざる者の格差が広がった。

「持てる者」と「持たざる者」と

日本銀行の金融広報中央委員会は、「家計の金融動向に関する世論調査 2016年」(6月17〜7月26日に実施。2500の単身世帯と7808の2人以上世帯が対象、回答率44.8%)を11月4日に公表した。

それによると、2人以上世帯に「金融資産の有無」を聞いたところ、「金融資産を保有していない」と答えた世帯は30.9%だった。2015年と比べると横ばいだったものの、過去最高の2013年(31.0%)とほぼ同じ水準だった。

安倍政権による「アベノミクス」政策がはじまる前の2012年と比べると4.9%増。じつに3世帯に1世帯が「貯蓄ゼロ」ということになる。

金融資産を保有していない世帯を年齢別でみると、20歳代の世帯では45.3%を占め、ほぼ半分が「貯蓄ゼロ」。40歳代は35.0%と、3割を超えた。30歳代と50〜70歳代でも、29%程度の世帯が「貯蓄ゼロ」となっている。

一方、単身世帯では、48.1%が「金融資産を保有していない」と回答。2人に1人が「貯蓄ゼロ」だ。2015年と比べて、0.5ポイント増えた。12年に「貯蓄ゼロ」だった単身世帯は33.8%だったので、わずか4年で14.3ポイント増と、急激に増えたことがうかがえる。

働きはじめたばかりの20歳代がなかなか貯蓄できないというのはわかるが、30歳代、40歳代の2人以上世帯となれば、結婚して家庭を築いている人が少なくないはず。その世代が「貯蓄ゼロ」ということは、将来かかる子どもの教育費や老後への蓄えなどを考えると、極めて厳しい家計状態といえる。

ちなみに貯蓄の動機づけになっているのは、その子どもの教育費と老後のための資金だ。

金融資産のある単身者は残高増やしている

一方、金融資産を保有している層全体の残高は、世帯によって差が出ている。

2人以上世帯では、2015年の1819万円から1615万円と200万円以上減少した。アベノミクスの効果で株価による株高が終わったことや、家族の生活費のために資産の取り崩しが進んだことがうかがえる。

しかし、金融資産を保有する単身世帯の平均残高は1590万円で、15年(1486万円)と比べて100万円以上も増えている。2人以上の世帯と違い、家族の有無が関係している可能性があるが、同じ単身者でも、「貯蓄ゼロ」が半数近くいる半面、金融資産を増やしている層もいるという、格差の拡大を裏付ける数字となった。

こうした結果に、ネットの掲示板やツイッターなどでは、

「まともに仕事してれば貯金はできるはずだけどな。仕事をしてないか、浪費の多い人が増えてるんじゃないの?」
「所詮、あぶく銭。『悪銭身につかず』とはよく言ったもんだわw」
「アベノミクスだろうがなんだろうが、貧乏人は貧乏のままってことですわ」
「一番儲かったのは 株を底値で買って日経平均が2万円のときに売り抜けた外国人なんですよwww」

といった言葉が投稿されている。非正規雇用の拡大に伴って給与水準が低下している一方で、アベノミクスの恩恵を受けたとされる富裕層との「格差」が広がっていることを指摘する声が少なくない。