「ポケモンGO」の登場でAR(拡張現実)技術とスマートフォンの位置情報(GPS)を活用したサービスが注目されるなか、墓石や石材を販売する良心石材(千葉県香取市)が、なんと故人が思い出の場所などに現れるというアプリケーション「Spot message(スポットメッセージ)」をリリースした。

さまざまなナゾをもつ、たくさんの「ポケモン」が駅や公園、商店街などでスマホに現れるように、故人が墓石や納骨堂はもちろん、海や湖、山や森林、遺跡に観光地といった思い出の場所に現れて、会えるというのだ。

「思い出の場所」でしか故人は出てこない

良心石材は、GPSを使ったコミュニケーション機能とAR技術を組み合わせたアプリ「スポットメッセージ」で、墓石や納骨堂、思い出の場所で故人の遺言(メッセージ)や動画・写真をスマートフォンやタブレットで見ることができるサービス(Android版)を、2016年8月15日に開始した。iOS対応は8月下旬にリリースする予定。

自分の死後に遺された家族が心配な人や後世に思いを託したい人、自分の墓にメッセージや動画・写真などを映し出したい人などを顧客として想定している。墓石や納骨堂、散骨した場所などの場所を登録することで、遺族や故人と親しい人がその場所を訪れたときにしか見ることができない故人からのメッセージや動画・写真を後世に遺すことができる。遺族らが慰霊のための場所を登録することもできる。生前に遺せるので、新たな「終活」のスタイルになるかもしれない。

このサービスであれば、散骨や樹木葬などの形のない墓(慰霊場所)でも、GPSからメッセージを出現させることができるので、日本のみならず、世界中で利用でき、墓参りを促すことができる。

たとえば、ハワイの海に散骨を希望する人が、死後、ハワイの指定したビーチ に家族が訪れたときにしか見られないメッセージを見せることができるという。

「終活」の一環として、自身がビデオレターを遺すケースがあるが、「スポットメッセージ」はその場所に行かなければ、故人のメッセージを受け取ることができないのがミソ。遺族らが思い出の場所でメッセージを聞くことで、より感慨深く故人との思い出に浸り、故人のメッセージを心にとどめることができるというわけだ。

会員登録は無料だが、有料会員になれば最大30件までのメッセージが遺せるほか、オプションで動画や写真をARメッセージにしてくれる「スポットメッセージAR」(1件1000円から)などが利用できる。

また、メッセージを見るには、見てもらう人にもアプリをインストールし、登録してもらう必要がある。

開発した石材店社長「ポケモンGOよりも優位性がある」

「スポットメッセージ」には、良心石材の香取良幸社長の熱い思いが詰まっている。きっかけは8年前、叔父の突然の死だった。「亡くなった叔父から、『頑張れ』と声をかえてくれたら、どれほど勇気をもらえるか」と考えた。

香取社長は、「日ごろの感謝の気持ちや報告、悩みなどの思いを、お墓参りで伝えることで自分自身を前向きにしてくれることは多くあります。もし、お墓参りのときに『来てくれてありがとう、いつも見守っているよ』『無理しないで、からだを大切にね』と、故人に言われたら、その人の大きな心の支えになるはず。このサービスは故人の想いを後世に伝えて、お墓参りする人の人生をより豊かによい方向に変えることを願ってはじめました」という。

開発は2年前からで、アプリの「肝」といえるAR技術に着目して開発を進めてきた点は「ポケモンGO」と同じで、ポケモンと違って故人が出てくるところも似ている。

香取社長は、7月に「ポケモンGO」が配信され、世界的な大ブームになったのには「正直、驚いた」といい、たまたまリリース時期が重なったということのようだ。「人間が動画で話しているところをARで使った点が『ポケモンGO』と異なり、ふつうに人と会話しているようにみえるところに優位性があると考えています」と話す。

「スポットメッセージ」は、発表後すぐにインターネットでも話題となり、大きな反響を呼び、ツイッターなどには

「ご先祖様をポケモンボールで捕まえるのかと思ったぜ」
「とりあえず除霊してくれ!こえーよwww」
「幽霊めっちゃでそう。レア幽霊、ゲットだぜっ!」
「亡くなった人と思い出の場所で再び会えるなんて、なんだか泣ける話だね」

と様々な声が寄せられている。

良心石材の香取社長は、「できるだけ多くの人に使ってもらえれば」という。墓参りなどの慰霊のほか、たとえば歴史に残る武将や偉人の墓所や城郭などの観光名所に説明のメッセージや関連画像を登録しておけば、観光ガイドにもなるし、プロポーズした思い出の場所に妻へのサプライズメッセージを残すこともできる。さまざまな利用がありそうだ。