賃金の未払いやパワハラ被害を受けたとして、東京・新宿区の不動産会社に勤務していた24歳から30歳の元従業員9人が6月30日、会社と経営者らに対し、計約3600万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。自費でセミナーに通わされたり、社長からの暴言・暴力などがあったりしたという。

提訴後、霞が関の司法記者クラブで会見した原告らは、「同僚がまだ働いている。放っておくと、その子たちのためにもならない」「同じような思いをする人がいないよう是正してほしい」などと話した。

訴状などによると、訴えられた会社は従業員20人ほどの不動産ベンチャー。原告9人は2014年10月から2015年6月の間に退社したが、多くの場合、退職直前の給与が支払われておらず、過去に参加したセミナーの費用などを請求されているという。

元社員たちがもっともつらかったというのが、当時の社長からのパワハラだ。原告のひとりは、次のように語る。

「営業成績に応じて、始業前に腹筋をやれという指示がありました。たとえば、1週間アポがなかったら、毎日100回。2週間なら200回といった具合。1000回を超える人もいて、朝6時に来てやっていました。社内には複数のカメラがあり、社長は携帯からカメラの映像を監視して、サボっていたり、ペースが遅かったりすると電話をかけて罵声を浴びせてきました」

このほか、カラオケバーで肌着を破かれ、上半身裸にさせられたり、客との電話中に回し蹴りをされたりするなど、暴力・暴言が日常的に行われていたという。

また、労働契約書などの交付がなく、投資用不動産を売った際の歩合についても基準が示されていなかった。会社側は、裁判所の証拠保全に対しても、就業規則や労働条件通知書などが存在しないと回答している。原告代理人の中山泰章弁護士によると、給与が社長の「思いつき」で決められていた可能性があるという。

中山弁護士は、「ガラパゴス諸島でシーラカンスを見つけた感じ。まだこんな会社があったのかと…」「規範意識の鈍磨、遵法精神の欠如が著しい」と話した。

弁護士ドットコムニュースが、訴えられた会社に電話したところ、現在の社長が「訴状が届いていないのでコメントできません」と回答した。

(弁護士ドットコムニュース)