体にいい成分がたくさんあり、「最強野菜」といわれるブロッコリーに、また新しい健康効果が明らかになった。

がんの中でも最も症状がつらいものの1つで、治療が難しい頭頚部がんの再発の防止が期待できるという研究を米ピッツバーグ大学がまとめ、がん専門誌「Cancer Prevention Research」(電子版)の2016年6月24日号に発表した。

治った後も数年後に再発する恐ろしい顔のがん

頭頚部がんは、首(頸部)から顔までの部分にできるがんの総称だ。鼻、口、舌、のど、あご、耳などにできるがんを指し、脳や脊髄、目にできるがんはのぞく。呼吸や食事、さらに発声、味覚、聴覚など、生きるうえで重要な機能が集中している箇所のため、内臓にできるがんに比べると、症状が一層つらい。日本人のすべてのがんの約5%を占める。

また、手術する際、顔の形や表情の変化が伴うため、ほかのがんと異なる配慮や難しさがある。がんが完全に治った後でも数年後に再発し、致命的な結果を引き起こすことも少なくない。喫煙や飲酒、大気汚染などが原因で発症し、中高年男性に多いがんの1つだ。

研究チームは、ブロッコリーに多く含まれる抗酸化力が非常に強いフィトケミカル(植物由来成分)の「スルフォラファン」という成分に注目。3段階にわたってスルフォラファン・エキスを人間やマウスに与える実験を行なった。

まず、様々な濃度のスルフォラファンを、人間の口腔がん細胞と、健康な細胞に投与して比較した。すると、どちらの細胞でも発がん性物質をデトックス(解毒)する遺伝子が活発化した。

次に、口腔がんの発症リスクを高くしたマウスにスルフォラファンを含むエサを数か月間与えたところ、通常のエサを食べたマウスより口腔がんの発症リスクが低くなった。また、口腔がんを発症した場合でも発生するがん細胞の数が少なくなった。予防と再発抑制の効果があるわけだ。

3番目に、健康な男女10人に数日間にわたり、ブロッコリー・エキスを混ぜたフルーツジュースを飲んだり、ジュースで口をゆすいでもらったりした。すると、細胞実験と同様に口内の表面の細胞で、がん細胞をデトックスする遺伝子の活性化が確認された。また、特に副作用もみられなかった。

従来の薬は「あまり効かない」「高い」「つらい」

今回の結果について、研究チームのジュリー・バウマン博士はこう語っている。

「頭頚部がんの再発を予防する薬も開発されていますが、あまり効果がないうえ副作用が強く、しかも高価です。頭頚部がんは最近、大気汚染が深刻化した途上国で急激に増えています。スルフォラファンは、ブロッコリーやキャベツなど、アブラナ科の野菜に豊富に含まれている天然の成分です。有効性を示すことができれば、安くて効果がある新薬の開発につなげることができ、世界中で多くの人を救うことができます」

スルフォラファンは、約200種以上ある「フィトケミカル」の中でもナンバーワンの抗酸化力があるといわれる。2016年3月、米イリノイ大学の研究発表でも肝臓がんと脂肪肝の予防に効果があることが確認された。ほかにも、胃がんを引き起こすピロリ菌の繁殖を抑え、花粉症のもとになるアレルギー抗体「IgE」の発生を減らし症状を改善する効果が期待されている。

スルフォラファンは、ブロッコリー本体より、新芽であるカイワレ大根に似た形のブロッコリースプラウトに、「親」より20倍多く含まれている。バウマン博士らが実験に使ったエキスも、ブロッコリースプラウトから抽出したものだ。もちろん「親」のブロッコリーにも「葉酸」「ビタミンC」など体にいいものがぎっしり詰まっているので、合わせて食べよう。