日本で多発する小児の病気・川崎病の研究に役立ててほしいと、遺産1億7000余万円の寄付があり、関係者を感激させている。

受け取った特定非営利法人日本川崎病研究センター(東京都千代田区、川崎富作理事長) が2016年6月4日に開いた総会で報告した。

新聞記事を持参

寄付したのは神奈川県横須賀市で装飾品製造などをしていた女性実業家。2011年の秋、遺言の公正証書を作りたいと、横須賀市民法律事務所の呉東正彦弁護士に申し出た。「1人暮らしで親戚との交流もない。自分が死んだら、全財産を最も有効な活用先に寄付したい」と、川崎病の原因を追究する研究が書かれた新聞記事を持参し、記事にある研究センターを寄付先に指定したという。

女性は昨年1月、85歳で亡くなった。呉東弁護士は遺言執行者として民生委員に協力して葬儀や散骨をすませた後、財産を換金して税金などの必要経費を控除し、残った1億7177万3000円を5月末、研究センターに払い込んだ。

川崎病は1961年、日本赤十字社医療センターの川崎医師が気づいた、発熱、全身の発しん、目や唇などが充血する乳幼児の病気。重い場合は心臓の後遺症がある。原因不明で、なぜか日本に集中して多発している。日本の患者は年々増え続けており、2013、14年とも約1万6000人の子どもが発病、14年までの患者総数は33万人に達した。79年、82年、86年には大流行があり、何らかの感染が疑われている。

川崎医師が日赤病院を退任したため90年、篤志家や医師らにより研究センターが設立された。以来、年間約2000万円の予算で、2年ごとの疫学調査や原因などの研究を支援してきた。研究センターによると、医師家族などから「子どもの病気に役立ててほしい」と1億円の遺贈がこれまで2回あったが、今回が最高額だ。

「ありがたいことです。研究に使わせていただきますが、早く原因が見つかればうれしいです」と、91歳の川崎医師は話していた。(医療ジャーナリスト・田辺功)