爆買いで日本にカネを落とす中国人観光客がいる一方で、日本人を食い物にする中国人の犯罪組織が存在する。違法薬物の蔓延や頻発する強盗事件のウラで暗躍する彼らの実態を、チャイニーズマフィアの元幹部が不敵激白! 目的を果たすためなら殺しもいとわない凶悪手口に震撼せずにはいられない。

 5月5日の未明に事件は起きた。和歌山市内の携帯電話ショップの入り口に乗用車が突っ込み、数人の男が侵入。iPhone104台(約965万円相当)が盗まれたのだ。数年前からスマートフォンの大量盗難が相次いでいるが、荒っぽい犯行手口は変わらない。

「中国系かブラジル系のいずれかでしょうね。俺も3年ほど前まで盗品関係をいじっていましたが、都内にある元締めの中国系貿易会社が、中古なら5000円程度、新品なら1万から2万円で買い取ってくれるんです」

 こう語るのは、チャイニーズマフィア元幹部の趙強氏(38)=仮名=。11歳の時に、中国残留孤児2世の父親と中国人の母親、2人の兄弟とともに来日し、現在も国籍は中国のままである。身長は175センチほどで、がっしりとした体躯。一見、カタギ風だが、えぐるような冷たい眼光に、「マフィア」の片鱗がのぞく。iPhone窃盗の裏事情について、こう続ける。

「もちろん業者は盗品であることを承知で買い取り、海外に流している。表向きは正規の株式会社ですが、裏のオーナーは中国の“東北マフィア”の大物です。埼玉に盗品のiPhoneやバイクを集めた彼らの倉庫があるんですが、それを嗅ぎつけた別のマフィアグループが襲撃し、根こそぎかっぱらったなんてこともありました。もちろん、表ざたにはなっていませんが」

 残留孤児系の不良集団といえば「怒羅権」が有名だが、趙氏は中国東北部出身者たちの親睦会の一つ「Yグループ」に籍を置き、怒羅権とは一定の距離を保ってきた。

「親睦会という名のマフィアですけどね(笑)。幹部メンバーは同郷の親戚筋のみ。かなり遠い親戚もいますが、大きく言えばファミリーです。基本的に中国人って“血族”しか信用しないんですよ。だから、日本人のメンバーも多く、出身、出自もバラバラの怒羅権には違和感があったんです。もちろん、交流はありましたが、お互いに根っこの部分では信用していない。あくまでビジネスライクなつきあいです」(前出・趙氏)

 Yグループには2つの顔がある。純粋な互助会的な面と、犯罪組織としての側面である。3年ほど前まで、趙氏は「犯罪チーム」のリーダー格だったが、現在はそこから足を洗っている。

「カネを握れば、表の世界に“上がる”ことができる。関東連合などの日本の半グレと一緒ですよ。悪さをしていれば捕まるリスクがあるわけで、表のビジネスで食えるに越したことはないですから」

 こう話す趙氏は、さまざまな悪行を重ねてつかんだ億単位のカネを元手に飲食店と不動産業を営み、成功を収めている。しかし、彼の周りにうごめく中国人たちの多くは今も“上がり”を目指して、多種多様な悪事に手を染めているという。

 趙氏が中国人犯罪の実態に触れるうえで、欠かせないのが警察の監視態勢だ。昨年8月に山口組が分裂すると、警察は暴力団の取締りに重点を置いた。その一方、組織犯罪対策部の刑事によれば「半グレの連中は野放し状態」だという。趙氏もこう話す。

「山口組分裂の影響で、シノギがやりやすくなったという声はしょっちゅう聞きますよ。以前ならば情報収集のために定期的に連絡をしてきた外国人担当の刑事たちも、最近は暴力団の案件にかかりっきりみたいで、電話もなければ、姿も見せないようです」

 日本に潜む中国人犯罪者たちにとって、今は「狩り放題」の好機だという。では、彼らはどんな犯罪に手を染めているのだろうか?

「日本の半グレの場合は詐欺がメインのようですけど、俺たち東北系の中国人は、そんな面倒くさいシノギは苦手なんです。だから、昔も今も窃盗がメイン。単純だけど、最も確実なシノギですよ。日本人って、人を信用しすぎるのか、ガードがユルユルですからね」(前出・趙氏)