3月19日に公開される『映画プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪奇跡の魔法!』は、「プリキュア映画」20作品目の記念作品として製作されたシリーズ初のミュージカル映画。アニメ『ドラゴンボールZ』主題歌「CHA-LA HEAD-CHA-LA」などで知られる作詞家の森雪之丞氏がミュージカル部分のプロデュースを担当することでも注目を集めている。

本作にゲスト出演するのは、ミュージカル界屈指の歌姫として活躍する女優の新妻聖子。劇中ではソロ曲のほか、俳優の山本耕史との掛け合い曲「秘薬のレシピ」などを披露している。"アニメ×ミュージカル"という異色のコラボに本格的にチャレンジする本作で、「プリキュアの涙」を狙う魔女・ソルシエールを演じる彼女を直撃した。

――アニメ作品に本格的に声優として参加するのはこれが初とのことですが、実際に収録に臨んでみていかがでしたか?

一番驚いたのが、セリフではない部分が多いということでした。台本には「……」とか「!」としか書かれていないところも声を当てるんだということはカルチャーショックでしたね。「!」は息で演じるんですよね。

私は、みなさんが収録を終えてから一人で録ったので『プリキュア』声優の方々、共演の山本耕史さんの声を存分に参考にさせていただきながらの収録でした。日曜朝のアニメも見ているのですが、声優のみなさんの演技には感心させられてばかりです。声でキャラクターの世界観をもっていらっしゃるところが本当にすごいんですよね。

そういう意味では、今回私が演じている劇場版のとっぴな役というのは声優さんたちのもっている世界とおのずとバックグラウンドも違ってくるので、私みたいな俳優がやらせていただくにあたってはそれが生かせるのかなと思って演じました。

――これほどわかりやすく「悪役」というのも初めてなのではないでしょうか。

声質的にも高い声なので、ミュージカルだとヒロインや"いい人"をやらせていただくことが多かったんですね。でも、演じるって別のキャラクターになれるということなので、悪い役とかクセのある役のほうが役者的には楽しいんです。そういう意味で、今回演じたソルシエールはやりがいがあって楽しかったです。

――ソルシエールという役どころの魅力と、ご自身との共通点は?

ソルシエールは孤独を抱えている人です。悪役として登場しますが、根っからの悪役ではなく愛されたいという気持ちがどこかにある人なので、そういう意味ではみんなが共感できる部分をもったヒール役だと思いました。ですから、彼女の心情を理解するのはそんなに難しいとは思いませんでした。

――演じる前とあとでソルシエールの印象は変わりましたか?

舞台やドラマでは役柄と向き合う期間がもっと長いのですが、アフレコって1日で終わっちゃうんですね。収録をしていく中で、だんだんソルシエールのことがわかってきたのに、もうお別れ。アニメってこういうふうに作られていくんだなという社会科見学的な感想と、やはり寂しいなという気持ちがありました。ぜひ実写版でミュージカル化していただいて、もうちょっとソルシエールの気持ちを掘り下げてみたいですね(笑)。

――歌の部分では、ロック調のものなど、新妻さんがいつも歌われている曲の雰囲気とは違うものもありました。

逆に、いつも歌っている曲と違ったので、とても楽しく歌わせていただきました。ディレクションをされた作詞家の森雪之丞さんとは以前ご一緒させていただいていることもあり、私の歌の特徴をすみずみまでわかっていらっしゃって、すごく歌いやすかったんです。その中で、パターンAにしますかBにしますかということを決めていくだけだったので、楽しく収録することができました。

――あらためて、『映画プリキュアオールスターズ みんなで歌う♪ 奇跡の魔法!』の見どころはどんなところでしょう?

やはり音楽ですね。マジカルとミラクルの会話が歌になっていたりと、感情移入していただけるシーンで歌が流れることによって、もう一段階グッとお客さまはその世界観に入り込めるんじゃないかなと思います。

私自身、デモをいただいた時に歌を聞いただけでグッときて、さらにちょっとウルっときたんですね。やっぱり歌の力ってすごいんだなと。それを、理屈じゃなくて子どもたちに感覚で感じてもらえる可能性があるというのは素晴らしいこと。子どもたちが、幼いうちから歌の力を、理解とまではいかなくても本能的に感じるというのはすごく良い教育でもあるなと思います。

それだけではなく、『プリキュア』のレギュラー放送を見てても感じるのはアクションシーンにすごく迫力があるんですね。女の子のアニメなのでもっとフワフワした感じだと思っていたらめちゃくちゃ戦うんですよ。そういうアクション作品としてのおもしろさがもともとありつつ、そこにミュージカル要素が加わったことによる相乗効果も見どころです。

ミュージカルって、魔法のように日常の設定を飛び越えたところに瞬時に連れていってくれるツールだと思います。だからもともと『プリキュア』との相性はいいんだろうなと思っていました。ましてやアニメ作品ですから、できないことはありません。本当に無限の広がりがある組み合わせ! アニメ、ミュージカル、魔法使いと、女の子の夢がたくさん詰まった作品になっています。

(公文哲)