スイスの某高級腕時計ブランドによく似た(?)デザインでありながら、主流モデルの価格帯は4千円程度。裏ブタには「完全非防水」との刻印がされていたり、取扱説明書に「まれにちぢれ毛などの混入」が品質許容範囲内として記されていたりと、その独特のユルさが人気のパロディ時計「フランク三浦」。

2010年8月より展開しているこのブランドは、謎の天才時計師・フランク三浦なる人物が作っているという“設定”なのだが(笑)、そのフランク三浦が10月15日、自身の公式ツイッターで「ヤクルトが日本シリーズ優勝でけへんかったら、もうワシ時計作るの引退する!」と発表。そしてヤクルトの日本シリーズ敗退を受け、正式に生産中止が決定したという。

ギャグアイテムの枠を超え、ファッション好きな人たちの支持も得たことで、過去には100万種類以上の商品がそろう楽天市場においてデイリーランキング1位を獲得したほど売れに売れていたのに、なぜ生産中止なのか?

そこでフランク三浦を展開している時計メーカー、ディンクス(大阪市)の下部良貴(しもべよしたか)社長を直撃した。

「実は半年ほど前からフランク三浦本人と連絡が取れなくなっておりまして…消息不明なんです。もう彼は時計作りに完全に飽き、新作を作る気がないんやと思います」

ん、どーいうこと!? 確かに、以前からフランク三浦はツイッターなどで「飽きたらやめる!」と公言していましたが…。このタイミングも含めて、何がなんだかさっぱり理由がわからないんですけど。

すると、下部社長は慎重に言葉を選びながらこう話した。

「『為替相場の関係で、中国の製造工場での人件費が開始当初よりも1.5倍ほどに膨れ上がっており、なんやかんやで原価が2倍近くになってしまったから』というわけではございません。

また、『(製品クオリティについて)文句言うてくるなよ、というスタンスだったのにクレームが入ることが多くなったから』というわけでもなく、『大手企業とのコラボが増えていたんですが、定価数千円の価格帯の商品にもかかわらず、クオリティチェックの段階でコンマ数ミリの修正や色の修正を要求されて作り直しをして、発売するたびに大赤字になってしまうことも少なくなかったから』というわけでもございません。

要するに、『自由な発想で適当に好き勝手作っていたから楽しかったのに、そのユルさが許されなくなりつつあり、それでいて商売のうまみがなくなったから』というわけでもございません」

「察してほしい」とでも言いたげなコメントに終始する下部社長(苦笑)。いずれにしても、在庫が残っている間は販売を続けるものの、フランク三浦の新作は今後一切、発売しないとのこと。ファンにとってはなんとも寂しい話だが、最後に下部社長がとっておきの情報を教えてくれた。

「弊社ではフランク三浦と同じ血筋を引く人間が世界各地に何人かいるとの情報をキャッチしております。ですから、来年あたりに新たな動きをご報告ができるのではと」

つまり、ブランドの魂を継承した新商品が来年発表されるということ? 新展開を期待!

<取材・文/昌谷大介(A4 studio)>