アップルのティム・クックCEOは、アイルランドのIndependent.ieのインタビューで、MacとiPadを統合したハイブリッド端末は作らないと明言しました。クック氏は先日もマイクロソフトのタブレットとPCとのハイブリッド端末Surface Bookを酷評していましたが、今回の件はその文脈とは無関係。別件で「もはやPCは要らない」と言ってしまい、うっかりMacまで止めを刺しかけたしくじりを火消しするための発言です。


Independent.ieの取材に対してクック氏いわく「顧客がMacとiPadの融合など求めていないと強く感じている。その結果、顧客はMacとiPad、どちらでも満足な体験を得られないと危惧されるからだ。だから、我々は世界で一番素晴らしいタブレットと、世界で一番のMacを作りたい。二つを一緒にしたら、どちらも達成できない。どこかで妥協することになるだろう」とのこと。

この発言は今月9日、イギリスのThe Daily Telegraphインタビューでの失言めいた言葉にフォローを入れる位置づけです。

「どうして、これ以上PCを買う必要があるんだい? 本当にどうして?」

大局的に考えればいまやMacもPCの一種であり、Macもいらない=MacとiPadを統合したハイブリッド製品が出る? と連想するのは、あながち飛躍とは言えません。

そうした憶測を呼んでしまったことを受けて、Independent.ieがクック氏に真意を確認。するとクック氏から「MacとPCとは同じものだと捉えていない」と驚がくの独自解釈が飛び出しました。

クック氏はMacとiPadのプロセッサが以前ほど差がなくなっていると認めながらも「iOSとMacの両方が使われていると認識している。そのためにHandoff(別のデバイスでの作業を引き継げる)などの機能を提供して、よりシームレスに利用できるよう心がけている」、要するにMacもiOSも別々に買ってくれという趣旨の発言をしています。

タブレットとPCのハイブリッド製品は、基本的にソフトウェア会社であるマイクロソフトと、ハードウェア会社であるアップルの利害が緊張関係にある領域です。とにかく自社OSの利用シーンを増やしたいマイクロソフトは、PCのアプリ資産をタブレットに持ち込めるハイブリッド市場の開拓に力を注いでいます。

対してアップルはタブレットはタブレット、MacはMacと別々のハードウェアを販売することで利潤を上げている企業。2つのOSを兼ね備えたニコイチ製品は、自社のシェアを共食いしたり、消費者を混乱させる恐れがあるわけです。

 アップル新製品発表会が近づくたびに「今度こそMacとiOSのハイブリッドかデュアルブート製品が」と妄想を逞しくする楽しみが奪われたのは残念ですが、すでにPCであることを辞めたらしいMacの神をも超える進化を見届けたいところです。