<マスターズ 最終日◇12日◇オーガスタナショナルゴルフクラブ(7,435ヤード・パー72)>
 「このパットを決めれば“マスターズ”優勝だ!」。テキサス州ダラスで育った幼少時代から友人と何度も繰り返したオーガスタでのウィニングパット。21歳に成長したジョーダン・スピース(米国)は、この日その“子供のお遊び”を現実のものとした。
昨年は最終日首位スタートもワトソンに逆転優勝を許し、この表情
 米国男子メジャー「マスターズ」。54ホールの最少ストローク記録となる16アンダーで2位に4打差をつけて最終日を迎えたスピースは、この日も2つスコアを伸ばしトータル18アンダーフィニッシュ。1997年に今のスピースと同じ21歳のタイガー・ウッズ(米国)が記録したマスターズ史上最少ストローク記録“270”に並んで初のメジャー制覇を成し遂げた。
 「今日は気がおかしくなりそうだった。昨日の夜もまったく眠れなかったんだ」。マスターズをリードして最終日を迎える重圧。首位タイからスタートした昨年の経験を振り返ってもコントロールするのは難しかった。夢中で打ったティショットはフェアウェイ中央をとらえる。「でも、1番でパットが決まった時に少しリズムをつかむことができたんだ」。バーディスタート。ぐらつく足元をしっかり地につけると、追い上げを受けながらも強い気持ちでバーディパットを沈め続けた。
 史上最少ストローク記録のかかった最終ホールはボギーとしてウッズの持つ記録更新はならなかったものの、そんなことは問題じゃない。ウィニングパットは子供時代に想定したよりももしかしたら短かったかもしれない。夢をかなえた瞬間、キャディと、グリーンサイドにかけつけた家族と抱き合い喜びを分かち合った。
 21歳とは思えない落ち着いた物腰。人に愛される性格。それらを形作ったのは「妹の存在が大きい」と常々スピースは語ってきた。ハンデキャップを背負って生まれてきた妹のエリーはスピースにとって「かけがえのない存在。彼女のことを愛しているんだ」。妹を思う気持ちはそのままスピースのやさしい性格になった。 
 ケアに時間を割かれる両親の手を煩わせないように、兄は出来る限りゴルフ場で時間をつぶして帰宅。オーガスタを制した技術もそんな環境で養われたものだった。
 成長した妹は少しばかり生意気になった。先週プレーオフの末優勝を逃すと「ねぇジョーダン、勝ったの?」。スピースは「まだだよ」と苦笑いで答えるしかなかった。それでも、もう今は違う「やっと勝ったよっていうことができるよ」。とびきり大きな勲章を手に21歳は愛する妹のもとに帰る。
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