2014年の金需給統計のデータが出そろった。公的購入と呼ばれる各国の中央銀行による金購入は477トンに上っていた。今回は、国家の危機にあっても金を購入し、保有し続けるロシアとギリシャに焦点を当ててみよう。

窮地に追いやられても 金を購入するロシアと手放さないギリシャ

リーマン・ショック後の2009年から、新興国を中心に中央銀行の金購入が増えているが、2012年には544トンと過去50年間で最大の買い越しを記録していた。昨年の477トンは、これに次ぐ規模となる。

昨年、金を一番買ったのはロシア連邦中央銀行だった。その量は173トン。実は過去10年にわたって、ロシアは金を増やしてきたことで知られる国。原油の輸出で稼いだドルの一部で金の購入を続け、外貨準備の10%を目標にしてきた。その表明通り、ほぼ毎月、金の保有量を増やしてきた経緯がある。私はこれを「中央銀行版の純金積立」と表現してきたほどだ。

手元のデータでは、2006年12月の時点でロシア中銀の金保有量は394トンになっている。外貨準備に占める金の比率は2・8%。それが2014年12月には1208トン、同じく比率は12%だ。現時点で中国の1054トン(IMF〈国際通貨基金〉への届け出ベース)を抜いて世界で6位の保有量となっている。

ロシアはウクライナ問題の当事国で、米欧からの経済制裁に原油安が追い打ちをかけ、苦しい立場にあるのはご存じの通り。暴落した通貨ルーブルの買い支えを余儀なくされ、外貨準備が昨年下半期だけで897億ドル(18%)も減っている。経済的に窮地に立たされる中で、さすがに金の購入はできず、むしろ保有している金の売却に向かうとの噂が流れたほどだった。しかし結果は逆で、最も金を増やした国となった。一般的に、国家が窮地に追いやられた際は、保有する金には手をつけない場合が多く、それを示す事例が多数存在している。

たとえば、足元では国債のデフォルト(債務不履行)まで懸念されているのがギリシャだ。2013年末時点で112トンの保有となっている。これは、韓国の104トンを上回る。興味深いことに、ギリシャ危機が表面化したのが2009年11月だが、過去デフォルト寸前が2度あったものの、いずれのときにも金の売却という話は一切出なかった。

もともと金を重視するユーロ圏の一員ということも関係しているだろう。国を越えて絶対価値が認められている金は、中銀にとっても「最後のよりどころ」なのだ。2月にギリシャ国債を担保として認めるECB(欧州中央銀行)の特例が取りやめになり、なおさら金の存在がギリシャには必要となっている。

亀井幸一郎
PROFILE OF KOICHIRO KAMEI
マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表。中央大学法学部卒業。山一證券、に勤務後、日本初のFP会社MMI、金の国際広報機関WGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆講演など幅広く活躍中。


この記事は「ネットマネー2015年5月号」に掲載されたものです。