トマ・ピケティ氏の『21世紀の資本』で有名な、「r>g」という不等式。資本収益率(r)は経済成長率(g)より高いという歴史的事実を示しており、今後の格差拡大が指摘されている。つまり、資本を持つ者が今後もより富を獲得していくことを意味する。そうした中で、「日本でも中流階級が陥落するリスクが高まっており、生き残るためには資産運用の意識を高めるしかない」というのは家計の見直し相談センターの藤川太氏だ。では、今から投資する際に注意すべき点は何か。藤川氏が解説する。

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 投資先選びには、注意が必要です。相場にはサイクルというものがあって、その大きな流れを読まずにただ闇雲に割安だからと飛びついてはいけません。世界的な潮流を読む必要があります。

 世界経済の現状を見渡すと、米国が金融緩和終了を宣言したとはいえ、日本はさらなる金融緩和を進め、欧州も金融緩和に踏み出すなど、世界的にマネーが溢れる金融相場となっています。米国の利上げ観測が高まっていますが、そうなれば米国はいち早く景気回復を示したことになる。強い米国経済に資金が集中する方向性が見えています。

 そう考えていくと、個人の投資先としては、米国株や米国の不動産を対象としたREIT(不動産上場投資信託)が中心になってくるでしょう。

 加えていえば、原油安が世界経済を揺るがしていますが、現在の価格水準は明らかに異常であり、どこかで揺り戻しが起こるはずです。原油価格が反発するようなら、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)をはじめとした新興国にも目を向けておきたいところです。

 そして、インフレの影響に加え、ドルが買われることで円安も進みますから、日本株も上がりやすい状況が生まれるでしょう。ただ日本の不動産はどうかというと、確かにこれまでの円安で海外からの投資が過去最大となっていますが、あくまで大都市圏に集中した局所的な現象です。地方によっては二束三文で売り叩かれているようなところがあります。ましてや人口減が進む以上、単純に地価が上昇する構造にはなっていない。投資するなら、地域を選ぶべきでしょう。

 ただし、注意点があります。先ほど述べたように、相場にはサイクルがあり、この金融相場もそう長くは続きません。米国に続いて日本や欧州が金融緩和を終了する時期がやがてやってきます。私のイメージでは、あと1〜2年といったところでしょうか。その後、金融緩和という下支えを失った世界経済がどう動くかは不透明で、運用が難しくなる局面も予想されます。

 先まで見通せば、現在の金融相場の間にどれだけ稼げるか。それが大きなカギを握ります。目先で儲かったから、多少景気が回復したから、少し賃金が上がったから、などと気をよくしてお金を使っている時期ではありません。当たり前に聞こえるかもしれませんが、利益は狙おうと思わなければ手にできるものではないのです。いま徹底的に勉強して、実際に資金を投じてリスクにチャレンジし続けなければ、手にできるものは限られるどころか、失ったままになる可能性の方が高いわけです。

 この1〜2年の間に資本収益率(r)をどれだけ大きくできるか。「中流陥落」を避けるための分水嶺はそこにあります。

※マネーポスト2015年春号