『老前整理 捨てれば心も暮らしも軽くなる』坂岡 洋子 徳間書店

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 昨今、シニア層に注目され始めている「老前整理」。定年を迎える、子供が独立して家庭環境が変化する等、人生の節目に不要なモノを見直して、老いて体が動かなくなる前に身辺整理することを指します。晩年になり「すっきり死ぬ」ことを目的とする生前整理と違い、老前整理は老後の生活を見据え生活環境を整えるため、未来志向の片付け術といえます。

 書籍『老前整理〜捨てれば心も暮らしも軽くなる〜』の著者は、老前整理コンサルタントの坂岡洋子さん。2007年に中高年の暮らしを軽くするサポートを目的とした「株式会社くらしかる」を設立、以来、坂岡さんはワークショップや講座で「老前整理」を提唱しています。

 坂岡さんによれば、日本の年配者は、満足にモノを買えない時代を経験している反動で必要以上にモノを溜め込んだり、買い溜めしてしまったり、処分する事に不安を感じる人が多いとか。それでも、特に男性にとって老前整理はとても意味があるといいます。

「これまで日本のビジネスマンにとって家のことは妻にまかせっきりというのが、いわば当然で、むしろそのことが肯定されてきました。ですから、夫である男性は、たくさんの使わない食器が台所に眠っていることも、押入れに何が詰まっているのか、といった自宅の現状もまず知りません。同時に妻も夫を片付けに巻き込もうとはしないのです」(本書より)

 男性の持ち物として代表的なものといえばスーツや背広。定年後は生活環境がガラリと変わり、背広を着る機会などそうそうないはずですが、自宅のタンスの中にそのままにしている人が少なくないのではないでしょうか。

「背広がなくなるとは、課長、部長、社長といった鎧兜を脱いで、ただのおじさんになるということ。会社人間だった自分を守ってくれるものを失うことです。(中略)捨てるということで、今までの自分の何かが否定されてなくなってしまうような気がするのかもしれません。ほんとうはそんなことは、あり得ないのですが、男性の背広にはそんなはかりしれない力があるものです」(本書より)

 だからこそ、夫が前向きに第二の人生を歩んでいけるよう、これからどんな生活をしていきたいか夫婦でよく話し合う必要があると坂岡さんは言います。過去を否定するのではなく、未来を切り開くこと。それが老前整理の意義でもあるようです。

 本書には坂岡さんがワークショップ「わくわく片付け講座」で実際行うペーパーワークや老前整理を行う上でのポイントが細かく書かれています。興味のある方は手に取ってみてはいかがでしょうか。