米ツアーのメジャー第1弾、"ゴルフの祭典"マスターズが、現地時間4月9日(〜12日/ジョージア州・オーガスタ)に開幕する。

 注目は、今回でマスターズ4度目の出場となる松山英樹(23歳)。昨季、米ツアー初優勝を飾って、今季もここまで何度となく優勝争いに加わってきた。日本人初のメジャー制覇とともに、マスターズチャンピオンの"称号"を手にすることができるのか、期待は膨らむばかりだ。

 ただ、松山にとって、今年のマスターズは過去3回に比べて、精神的に最も"つらい"大会になるかもしれない。昨季、米ツアーで初勝利を飾ったことによって、どの大会でも優勝することしか考えていない松山は今、とても"窮屈な状態"にあるからだ。

 本来、1勝したあとに、あまり間隔を空けずに2勝目を挙げていれば、その窮屈さも緩和される。自信や勢い、勝ちパターンというものが、体に染みつくからだ。

 翻(ひるがえ)って、1勝してからなかなか勝てないでいると、2勝目が大きな"壁"となる。1回結果を出したがゆえに、勝つためには何が必要なのか、今の自分には何が足りないのかを知ってしまうこととなり、それができないことへの苛立ちや、焦りを感じてしまうからだ。自分のちょっとしたミスが許せず、自らの理想と実際のプレイとのギャップにもがき、苦しむことになる。「1勝したあとの優勝が難しい」と言われるのは、そうした理由がある。

 そんな状況にある松山だが、今季はすでにベスト10フィニッシュが5回、賞金ランキング13位(4月7日現在)と、周囲から見れば、トッププレイヤーのひとり。今年のマスターズでは優勝候補にも挙げられ、注目度は一気に増している。松山のモチベーションや闘争心は、いやがうえにもあおられることになる。

 しかも松山自身、マスターズに対する思い入れが強い。おそらくこれまでも、オーガスタでプレイすることをイメージしたショットや打ち方を磨いてきているだろうし、高い球だったり、止める球だったり、オーガスタで必要な技術の収得に務め、自分に足りない部分を埋めてきていると思う。当然、今回のマスターズでも、優勝しか考えていないはずだ。

 ということは、勝てないもどかしさや"窮屈さ"に加えて、プレッシャーも相当大きくなる。周囲の期待、自らの期待が増すことによって、「勝たなければいけない」という重圧がのしかかってくる。その分、考えなければいけないこと、処理しなければいけない情報量は膨大になる。だから、松山にとって今大会は"つらい"ものになるのではないか、と思うわけだ。

 そのうえ、「勝ちたい」「勝たなければいけない」という欲求が強くなればなるほど、自分のゴルフをさせてくれないのが、マスターズの"魔力"。勝利へのカギを握るのは、その"魔力"との闘いにある。

 まず重要なのは、初日と2日目。どうしてもイケイケになって、ひとつでも多く攻めていきたい気分になるが、その気持ちを自分でどうコントロールして抑えられるか、だ。

 例えば、初日に「66」とか「67」とか、好スコアを出す選手が必ずいるが、それに惑わされないこと。1日2アンダー、「70」で回れば、4日間で通算8アンダーと、十分に優勝圏内となる。とにかく、初日、2日目というのは無理をしないで、丁寧に、丁寧に回ることが求められる。

 そして、初日はもちろんのこと、最初の3ホールをどれだけ無難にスタートするか。できれば、1番(パー4)でパー、2番(パー5)でバーディー、3番(パー4)でパーというのが理想だ。

 そのうちどこかでスコアを落とすと、後々、その1ストロークがボディーブローのように効いてくるのが、オーガスタ。たかが1ストロークだが、それによって思わぬ落とし穴にはまってしまうのが、マスターズである。その悪循環から逃れるためにも、最初の3ホールはスムーズに乗り切っていきたい。

 あとは、テンションを上げ過ぎないこと。大事なのは、技量とメンタルのバランスをどうとるか。そのためにも、できればプレッシャーは半減させたい。今回に限っては言えば、自らが持つマスターズへの強い思い、「優勝したい」という気持ちをどれだけ抑えられるか、ということもひとつのテーマになるかもしれない。

 マスターズで結果を出せるのは、技量とメンタルが程よく噛み合う、出場4〜8回目くらいの選手だと言われる。つまり、松山にも勝つチャンスは十分にあるが、はたして松山はマスターズの"魔力"を振り払えるのか。すべては、そこにかかっている。

三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho