ECB(欧州中央銀行)が量的緩和の導入を決定しました。折しも、日本は「黒田バズーカ」といわれる量的緩和の真っただ中。しかし、ECBのこの政策には、さまざまな疑問や懸念材料が残っているのです。

ECBの量的緩和は、効果があるのか?

1月22日に、ECBは、新たな金融緩和として量的緩和策の導入を決定しました。量的緩和とは、民間銀行から市場に流通している国債を中央銀行が購入し、世の中のお金の量を増やす金融政策です。

これまでのECBは、政策金利としての銀行間レートの引き下げなど、「金利」をコントロールしてきました。しかし、この政策は限界にきており、日米に倣って、「お金の量」をコントロールすることを決断したのです。ECBが、これまで量的緩和に踏み切れなかったのは、どこの国債を買うのかでユーロ圏内で政治的な摩擦が起きていたからです。しかし、今のユーロ圏はデフレに陥るリスクが高く、量的緩和によってインフレを促す必要性が高まり、量的緩和の賛同が得られたようです。

では、この量的緩和は本当に効果があるのでしょうか?民間銀行は、ある一定水準の預金中央銀行に収めておく義務があります。この一定水準を超えた預金を、「超過準備預金」といいます。ユーロ圏の経済は停滞しつつあり、民間銀行から事業会社への貸し付けも停滞しています。結果、民間銀行は余った資金を国債で運用するか、または超過準備預金として中央銀行に眠らせています。

しかし、ECBは他国と違い、超過準備預金の利子は0%。預けても何も利益を生み出しません。つまり、民間銀行が積極的にECBにお金を眠らせるインセンティブはきわめて小さいのです。となると、民間銀行としては、国債で運用して少しでも利ザヤを稼ぎたいし、国債を手放したくないはずです。こんな状態で、果たしてECBからの国債買い入れに民間銀行が応じるのかは疑問です。

加えて、ユーロ圏の民間銀行に、個人や事業会社がお金を預けようとするとマイナス金利という状況が常態化しつつあります。預金をすると、お金が目減りしていくのです。こんな状況で積極的に預金をしようとする個人や事業会社が存在するのでしょうか?これは、ユーロ圏の民間銀行の預金が増えにくい=民間銀行の国債を買い入れる資金が乏しくなるということです。さらに民間銀行は国債を手放したくないのでしょう。

以上を踏まえると、ECBが思っていたほど世の中のユーロの量は増えず、ユーロ安はどこかでピークアウトする可能性も小さくなさそうです。

崔 真淑 MASUMI SAI
Good News and Companies代表
神戸大学経済学部卒業後、大和証券SMBC金融証券研究所(現・大和証券)に株式アナリストとして入社。入社1年未満で、当時最年少女性アナリストとしてNHKなど主要メディアで株式解説者に抜擢される。債券トレーダーを経験後、2012年に独立。


この記事は「ネットマネー2015年4月号」に掲載されたものです。