乙一、桜井亜美、舞城王太郎が監督した映画が公開中。“上手にできない”人々を描く
 現在公開中の映画『ぼくたちは上手にゆっくりできない。』は、小説家として多くのファンを魅了する乙一こと安達寛高、桜井亜美、舞城王太郎の三人が、脚本・監督・編集まですべてを自身が担当して作りあげたオムニバス映画だ。「コーヒー」を共通のアイコンとして、“上手に何かをできない”人びとの姿を、それぞれ独自の角度から切り取っている(4月10日まで、渋谷・ユーロスペースにてレイトショー)。

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◆“眠れない少女”がひたすら可愛い『Good Night Caffeine』

 “上手に眠れない”をテーマにした安達寛高の『Good Night Caffeine』は、つかのまの交流を描いたファンタジックな作品。深夜の病院で恋人の手術が終わるのを待っていた青年が、不思議な雰囲気を湛えた黒髪の美少女に出会う。切れかけの蛍光灯が明滅するボロボロの病棟に、不健康なほど肌の白い少女。はじまりはゴシックホラーめいていて、いかにも『GOTH リストカット事件』といった乙一作品を髣髴(ほうふつ)とさせる。ファンならきっとニヤリとするはず。

「お父さんが飲んでいたコーヒーをこっそり飲んでしまって眠れなくなった」と話す少女(庭野結芽葉)のため、ひと晩の暇つぶしに付き合ってあげる青年(中村邦晃)のお人好しっぷりもチャーミングだけれど、とにかくこの少女がひたすらに、可愛い。

 やってみたいことを訊ねられて、うるうるした大きな瞳で「肩車とか?」なんて呟く姿など、全編にわたってキュンとなるしぐさや場面が満載。安達自ら「照明や構図にこだわった」と話す幻想的な映像も功を奏し、珠玉のボーイ・ミーツ・ガールに仕上がっている。

◆恋愛のはかなさが沁みる『花火カフェ』

 一方、桜井亜美の『花火カフェ』のテーマは“上手に微笑めない”。アパートでひとり暮らしを営む盲目の女性の繊細な心理を、絶妙に生活感を取り入れつつ、すっぴんの小松彩夏が見事に演じきっている。

 小松演じる染谷は、いつからか自分の部屋に通ってくるようになった宮本(吉村卓也)の心が、別の場所に向かいつつあることに気づく。離れてしまった気持ちを取り戻すため、大切なふたりの思い出となっている花火をもう一度だけしようとせがむ染谷。頭ではわかりすぎるほどわかっているのに、胸のうちではやっぱり認められない――いじらしく揺れ動く染谷のはかなげな表情が胸を打つ。

 物語のラスト、染谷がはじめて宮本のために出したコーヒーの味の本当の意味がわかったとき、観客は彼女といっしょに恋の痛みをじっくりと噛み締めることになる。朝日を浴びて眠るふたりの姿がたまらなく愛おしい。

 竹内結子主演で映画化された『イノセント ワールド』をはじめ、恋愛のみずみずしさ、はかなさ、残酷さと、若い女性の刹那的な心理を描かせたら随一の桜井。その手腕がいかんなく発揮された映像作品だ。

⇒【後編】「舞城王太郎の『BREAK』はかなりぶっ飛んだ作品」に続く http://joshi-spa.jp/234204

<TEXT/倉本さおり>

⇒【YouTube】映画『ぼくたちは上手にゆっくりできない。』予告編 http://youtu.be/LNq_VQWxZ4o

●『ぼくたちは上手にゆっくりできない。』
2015年3/28(土)〜4/10(金) 2週間期間限定レイトショー
ユーロスペース(渋谷区円山町1-5)にて公開中!
公式HP www.realcoffee.jp

●来場特典! 書き下ろし短編小説集
監督であり小説家である3人による原稿枚数合計200枚におよぶ書き下ろし小説集。監督陣がそれぞれの作家名をタイトルにした、予想不可能な内容の3編の小説を来場の方にもれなく1冊プレゼント!
企画・製作・配給:リアルコーヒーエンタテインメント