ECB(欧州中央銀行)による量的緩和策の導入が決定した。目標に満たない場合は、延長の可能性もあるという。この量的緩和策が金市場にもたらす影響と、金融市場が今後どのような方向に向かうのかを考えてみた。

金市場にはプラスに働くECBの量的緩和策

1月22日、ECBによる量的緩和策の導入が決まった。その規模は、総額1兆ユーロ(約135兆円)を超え、国債を中心に毎月600億ユーロ(約8兆円)の購入を、当面2016年9月まで続けるというもの。ECBのドラギ総裁は、目標にしている2%弱の物価上昇の達成見込みが立たない場合には、さらに延長するとの意向を示している。予想を大きく上回るばらまき策を好感した市場は、株も債券も上げで反応した。

それでは、この量的緩和策の金市場への影響はどうなるのだろう。まず、これで先行した米国FRB(連邦準備制度理事会)、そして日本銀行に加えECBということで、国際金融緩和策の最後のピースが埋まったことになる。国際金融市場のカネ余りは、さらに加速することになりそうだ。

これまでにも、余ったカネは株や債券市場に流れ込み、過去最高値の更新につながるなど、バブルを懸念する声が上がっていた。その矛先は、過去2年間下げて出遅れ感のある金市場にも向かう可能性がある。量的緩和策とは、通貨の価値を薄める政策でもあり、金にはプラスに働くものでもある。

さらに、ECBの量的緩和策の導入は、すでに昨年秋から予想されており、先んじてユーロ圏内の国債には買いが入り価格は上昇、利回りが低下していた経緯がある。今後その状態は、さらに進むだろう。すでにドイツ10年国債の利回りは0・3%を下回っており、5年物にいたってはマイナス金利、つまり保有して満期(償還)を迎えると損になる状態にある。金は保有していても利息を生まないことがデメリットとされてきた。その金のマイナス点も、世界的な低金利の進行で、今では大きな問題ではなくなっている。

金は市場が波乱に見舞われるときこそ、逆に値を上げるものだ。これから利上げに向かおうとするFRBに対し、拡大に向かう日欧。意味するのは、いよいよ歴史上初といえる主要国の金融政策が逆向きの環境になるということ。米国とドイツの金融政策の小さな方向性の違いが、1987年10月のブラック・マンデー(ニューヨーク株式市場の歴史的暴落)につながったとされている。つまり、国際金融の場に不安定な環境が生まれ、波乱に備えたヘッジのために「金購入」という年金基金やファンドの動きが復活する可能性が考えられるのだ。実際に金ETFの残高増が1月に見られている。

亀井幸一郎
PROFILE OF KOICHIRO KAMEI
マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表。中央大学法学部卒業。山一證券、に勤務後、日本初のFP会社MMI、金の国際広報機関WGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆講演など幅広く活躍中。


この記事は「ネットマネー2015年4月号」に掲載されたものです。