2012年から男子セブンズの日本代表を率いる瀬川智広ヘッドコーチ(HC)は、しみじみと語った。

「ひとつの目標だったベスト8に入れたことは、本当に嬉しい」

 2016年のリオデジャネイロ五輪から正式種目となる「セブンズ」こと、7人制ラグビーの国際大会「東京セブンズ」が4月4日〜5日に東京・秩父宮ラグビー場で開催され、日本代表は2000年の同大会以来、15年ぶりにベスト8に進出した。

 東京セブンズは、世界各地を転戦する「ワールドシリーズ」全9大会のひとつで、リオデジャネイロ五輪の予選も兼ねている(総合ポイント上位4チームが出場権を獲得))。日本代表は今シーズン、初めてワールドシリーズ9大会すべてに優先的に出場できる「コアチーム」に昇格していた。

 ただ、他国の代表チームの多くがメンバーを固定している中、日本代表はケガ人が続出。また、メンバーの中には15人制ラグビーを掛け持ちしている選手もおり、後手を踏んでいた。その結果、昨年10月から始まった今シーズンのワールドシリーズでは、開幕から5大会連続で15位タイの最下位と低迷していた。

 3月下旬のワールドシリーズ第6戦・香港大会こそ14位となったものの、総合ポイントではコアチーム最下位の15位(7ポイント)。このままと、昇格わずか1年で自動降格してしまう。来シーズンもワールドシリーズで戦うためには、総合14位(22ポイント)のポルトガル代表を、残り3大会で上回らなければならない。

 そんな崖っぷちに立たされた日本代表がホームの東京セブンズで掲げた目標は、「ベスト8以上に入り、10ポイント以上を獲得すること」だった。この目標を達成することができなければ、いよいよ自動降格が濃厚となる。

 そして迎えた、東京セブンズ初日。日本代表は総合6位のアルゼンチン代表と14−14で引き分けることに成功する。さらに2戦目では、総合9位のサモア代表に26−12と快勝。その後、総合10位のフランス代表には19−24で惜敗したものの、予選プール2位でベスト8に入り、カップトーナメント(決勝トーナメント)進出を果たした。

 翌2日目は、「セブンズ王国」と称される総合2位のフィジー代表に5−41と大敗。総合8位のスコットランド代表にも5−14で敗れたが、日本代表は7位タイという結果で大会を終えることになった。

 世界の強豪がそろう大会で、目標だったベスト8に進出――。その要因を聞かれた瀬川HCは、「ディフェンスが良くなってきていること」を挙げた。2月末から3月にかけて合宿を行ない、面を作って流れるディフェンスだけでなく、状況によっては前に出るディフェンスを整備してきたことが功を奏したという。「これまでは、1回のラインブレイクで簡単にトライを許しているシーンがあった。だが、今は粘れている。それが一番の成果だと思います」(瀬川HC)。

 また、セブンズ経験の豊富なフィジー出身のトゥキリ ロテ ダウラアコ(北海道バーバリアンズ)が日本国籍を取得し、香港大会から出場できるようになったことも大きかった。瀬川HCは、「東京セブンズのMVPは、トゥキリでしょう。彼は守備範囲が広い。コミュニケーション能力が高く、ピンチを摘み取る能力にも長(た)けている。また、他の選手が彼と連係して良い動きをしていた」と振り返る。さらに、坂井克行主将(豊田自動織機)や、2004年から日本代表でプレイする「ミスターセブンズ」こと桑水流裕策(コカ・コーラ)など、経験のある選手がそろったことで安定感も増した。

 現在のメンバーは、2月に行なわれたワールドシリーズ第4戦のニュージーランド大会や第5戦のアメリカ大会、そして3月下旬の第6戦・香港大会に出場した選手が多く、東京セブンズでは攻撃の連係面で冴えを見せた。そして、若手の活躍も特筆すべき点だろう。サモア戦では松井千士(同志社大3年)がトライを挙げ、15人制日本代表でもある「二刀流」の藤田慶和(早稲田大4年)はキレのあるステップで観客を驚かし、合谷和弘(流通経済大4年)も世界相手に貴重な経験を積んだ。

 東京セブンズで日本代表は、中堅チームと互角に戦えることを証明したと言えるだろう。リオデジャネイロ五輪の金メダル候補で、ワールドシリーズ総合2位のフィジー代表には歯が立たなかったものの、フィジー戦後に桑水流は、「自分としては、あまりやられた感じはしていない。もっと組織で戦えれば、守ることができるはず」と手応えを口にしている。

 東京セブンズを終えて、総合15位の日本代表は18ポイント、14位のポルトガル代表は25ポイント。その差は8ポイントだ。残りのワールドシリーズ2大会(グラスゴー大会&ロンドン大会)は5月に開催されるが、コアチーム残留も現実味を帯びてきた。主将の坂井は、「(東京セブンズでの)ベスト8がまぐれだと言われないように、アウェーで再びベスト8以上に進出したい」と意気込んでいる。

 ワールドシリーズでオリンピック出場権を獲得できなくとも、日本代表は11月に予定されているアジア予選で出場権獲得を目指す。アジアの中で日本代表は、頭ひとつ抜けた存在だ。ただ、世界の強豪と互角に戦うためには、坂井や桑水流が「メンバーを固定できれば」と語るように、他国の代表チームと同じように7人制専任の選手だけで試合に臨むことが望まれている。オリンピックに出場するだけでなく、メダル獲得を目指す――というのであれば、なおさらであろう。

 5月にワールドシリーズが終了次第、11月のアジア予選に向けた代表候補選手が発表される予定だ。オリンピックの出場権を獲得し、そのまま2016年8月に開催されるリオデジャネイロ五輪までメンバーを固めて戦うことができるか――。世界の強化スピードに遅れを取ることなく、日本代表もいち早く強豪の仲間入りを果たしたいところだ。

斉藤健仁●文 text by Saito Kenji