4月から始まった新生活用の銀行口座に、ネット銀行を検討している人は少なくないはずだ。新生活なんて始まらないよ!という人も、便利でお得なネット銀行の口座開設を考えてみよう! と、ここまでは、よくあるネット銀行比較記事のくだり。この後に続くのは「普通預金や定期預金金利がメガバンクより高い!」とか「いろんなコンビニATMに対応していますよ!」といった、パンフレットみたいな記事である。

 ネット銀行は、サービスが充実していると同時に、個性が強くて、使う人によっては、損をしたり、不便に感じることもあるのだ。ここでは、そんなパンフレットみたいな記事の考え方を排除し、本当に役立つネット銀行の選び方を考えてみよう。

■ぶっちゃけ、預金金利なんてどうでもいい!?

 あれこれ、ネット銀行のホームページや関連する記事を見ていると、必ず目に留まるのが「預金金利」。メガバンクの金利より有利でお得だ!と書かれているので、ついその銀行の口座を開けたくなるかもしれない。しかし、ちょっと立ち止まってみよう。ネット銀行の金利は高くてもせいぜい0.02%程度。年収500万円の人が給料まるごと銀行口座に入れておいても、500万円×0.02%=100円しか利息が付かないのだ。

 しかも、「銀行」という先入観からか、「預金金利が高いと、サービスも充実していそう」と思っていないだろうか? 完全に間違いだ。預金金利と銀行サービスは全く比例していない。では、どのようにネット銀行を選べばよいのだろうか。ポイントは以下である。

 実際生活での「2つの利用シーン」を考えて選ぶこと

 たったこれだけだ。2つの利用シーンとは、「決済手段」と「借り入れ」の2つである。生活をしていくには、お金を動かすことが必須だ。そのうち、決済手段は、料金の支払いや、現金を手に入れるための方法だし、借り入れは、お金が急に入用になってしまったときに必要な方法である。まずは、「決済手段」について考えてみよう。

<利用シーン・その1>決済手段を考える

「決済」とは、何かしらの取引のために、お金を支払うことだ。実際生活のシーンを考えると、次の3つに分類できる。

(1)ATM入出金

毎日の昼食代を引き出したり、飲み会幹事で、清算金を入金したりと、現金の出し入れが便利でなければならない。使えるコンビニATMが多くて、手数料ができるだけ安ければよいだけではない。そもそも、自分の家やオフィスの近くに、対応するATMがあることが、まず大事である。表1に、ネット銀行ごとの対応ATMと手数料をまとめた。

◎ネット銀行の対応ATM

表1

対応ATMは、コンビニ・駅ので使えるATMとし、ゆうちょ銀行以外の銀行店舗設置ATMは省略した。また、時間外手数料の金額は含めていない。手数料は税込。

イーネット

「イーネット」ファミリーマートやデイリーヤマザキなどのコンビニにあるATMが接続しているネットワークのこと。「イーネット」と書かれていたら、ファミリーマートやデイリーヤマザキでお金の入出金ができると考えてよい。

 使えるATMは、ほぼ同じだが、住信SBIネット銀行(以下、SBI銀行と略す)が、JRの駅中にあるATM「VIEW ALTTE」で使えたり、楽天銀行が、関西の私鉄駅の駅中にあるATM「PasSat」に対応しているなどの細かい違いがある。

 次に、手数料に注目しよう。SBI銀行では、セブン銀行以外のATMを合計6回以上利用すると、毎回、108円の手数料がかかる。ジャパンネット銀行や、楽天銀行など、SBI銀行以外の銀行では、取引金額が、3万円以上・未満によって手数料が異なったりする。

 実際の利用シーンを考えてみると、家やオフィスの近くに、セブン銀行ATM(セブンイレブン)があるのなら、SBI銀行かセブン銀行を選べばいいし、近くにセブン銀行ATMは無いのだけれども、取引金額が3万円以上の機会が多いのであれば、ジャパンネット銀行や、楽天銀行を選べばよいことがわかる。

(参考) 「VIEW ALLTE」のATM
「VIEW ALLTE」のATM
http://www.jreast.co.jp/card/guide/atm/ より引用。

(2)銀行振込

ネットショッピングの支払や、サービス利用料の支払、家族への仕送り等で利用する銀行振込の手数料も考えるポイントだ。表2に、各ネット銀行の振込み手数料をまとめた。

◎ネット銀行の振込手数料

表2

自行宛は、振込元の銀行と振込先の銀行が同じ場合に適用される手数料。

 自行宛手数料は、ジャパンネット銀行以外は0円なので、決済する振込先に応じて、銀行を使い分けたいところ。毎月、色々な銀行宛てに、振り込む場合は、SBI銀行を選択すると、手数料が節約できる。一番お得に、銀行振込を利用するには、楽天銀行を給与振込口座にしておき、自分のSBI銀行に、決済で使う振込のお金を振り込んで振込んでしまうのがよさそうだ。

 そうすると、楽天銀行は、他行宛て2回(自分のSBI銀行宛てに振り込んだので、無料3回-1回=2回)+楽天銀行への振込が全て無料。SBI銀行では、楽天銀行以外の他行宛て3回+SBI銀行への振込が全て無料になるので、計5回の他行宛振込が無料にできる。表1を参考に、対応するATMが近くにあって、3万円以上の資金を楽天銀行から出金し、すぐにSBI銀行の口座に入金できるのであれば、6回まで他行宛振込が無料にできるのだ。

 ちなみに、銀行によっては、振込によるポイントサービスを実施しているが、振込手数料に比べて金額が小さく、ポイントがもらえることでの実質の振込手数料金額が逆転することはないので、省略する。

(3)口座振替

ここでいう口座振替とは、水道料金や電気料金の支払や、クレジットカードの利用代金支払などで、あらかじめ申込書を提出しておき、毎月一定の日に料金を自動で引き落としてもらう契約のことだ。自動引き落としを行う企業(収納企業と呼ばれている)によっては、対応していない場合がある。といっても、よほどマイナーな収納企業でない限り、対応している。各銀行とも、対応収納企業を一覧で公開しているので、口座開設前に調べておくとよい。また、銀行によっては、口座振替をすることで、ポイントがもらえたり、特典が付く場合があるので、その特典を利用したい銀行を選ぶのもよい。下表に、各銀行ごとの特典を整理した。

◎ネット銀行の口座振替特典

表3

特典はいずれも、ポイントがもらえる。イオン銀行の公共料金には、電気・ガス・水道の他、携帯電話も含まれている

 表からは、口座振替件数が多いのであれば、セブン銀行を口座振替元銀行にしておくとお得になることがわかる。

口座振替特典の例「イオン銀行」
口座振替特典の例「イオン銀行」
公共料金の口座振替の場合、5WAONポイントがもらえ、イオンカードセレクトを保有しているのであれば、さらに5WAONポイントもらえる。イオン銀行のホームページより引用。

口座振替特典の例「楽天銀行」
口座振替特典の例「楽天銀行」
楽天会員のステージによりもらえるポイントが異なる。楽天カード、楽天ブロードバンド、楽天ショウタイムの口座振替では、ポイントが3倍になるので、最大9ポイントその他の引き落としの場合は、1件あたり最大3ポイントの付与になる。楽天銀行ホームページより引用。

 まずは、決済手段に注目した銀行の選び方について考えてみた。冒頭で、個性が強いと書いたように、銀行振込による決済の回数や支払先の銀行によって、選ぶ銀行を変える必要があるし、口座振替契約が多いなら、ポイントが付く銀行を選ぶとお得になることが分かった。

 ちなみに、ネット銀行のメリットに、「店舗に出向かずとも口座開設ができて楽!」というのをたまに見かけるが、全くメリットではない。店舗を持つ銀行も「メールオーダーサービス」で、口座開設申込書を取り寄せられるからだ。

 むしろ、店舗がある銀行であれば、出向けばその場で口座開設ができて、急ぎで口座を用意しなければならないときは、ネット銀行は不利なのだ。

文/久我吉史