第16回東京03単独公演「あるがままの君でいないで」

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「例えばそうですね、”ミネルヴァの梟(ふくろう)”というお言葉をご存じですか?」
「……ちょっとわかんないすけど」
「ミネルヴァの梟って、知恵とか哲学とかの象徴って意味ですよね?」
「おー!よくご存知で!」
「あ、いや、俺は知ってたし。俺は知ってたよ」
「じゃじゃぁ俺も知ってたけど!」
「でさ、酒は?」

4月から始まった新番組『インテリワードBAR 見えざるピンクのユニコーン』(BSジャパン)。ドラマのような、コントのような、教養番組のような、不思議な立ち位置を持った番組である。

舞台となるのは、お酒と共に「インテリワード」を提供する一風変わったバー。インテリワードとは、前述の「ミネルヴァの梟」のように知ってると頭良さげに見える言葉のこと。バーを舞台としたドラマパートと、インテリワードを解説する紙芝居&VTRパートで展開する。

脚本は京都出身の人気劇団・ヨーロッパ企画の上田誠。出演者は、バーを訪れる客に東京03、マスター&バーテンにヨーロッパ企画の本多力と永野宗典、常連客のミュージシャンに夏帆。VTRにもヨーロッパ企画のメンバーが出演する。

4月6日放送で登場したインテリワードは「ヤマアラシのジレンマ」と「テセウスの船」。

人間関係のほどよい距離感を表す「ヤマアラシのジレンマ」は、ロックを愛しすぎるボーカルとメンバーの温度差で表現。お前らロックが足りねぇんだよ。いやでも全員一緒に暮らせとか練習量80倍とか極端すぎるだろ。なんだよお前らのこと信じてたのに解散だよ。しょうがねぇなぁついていくよ…あ、トゲトゲのついた服でハグするのやめろ。

同一性を検証する思考実験「テセウスの船」は、メンバーが頻繁に入れ替わるアイドルグループで例える。苦悩するファン達。確かにあのグループを応援すると誓った。でももうオリジナルのメンバーはいない。しかし我らの誓いは本物なり。投票用紙入りのシングルを買え。でも投票したい人いないんですけど…。

関東のコント職人東京03と、関西の人気劇団ヨーロッパ企画。意外にもこれがテレビ初共演。どちらも会話を積み重ねる笑いを得意とし、舞台・ライブが主戦場である。

同じタイプに見える二組だが、ネタのアプローチに異なるポイントがある。

東京03は「人物」が中心にある。会社や居酒屋などのよくある光景を舞台に、話はこじれ、意識はすれ違い、キレて、戸惑い、右往左往する。過去に優勝した『キング・オブ・コント2009』で披露したネタも、角田演じる「怯えすぎるコンビニの店長」と「旅行初日に告白して振られる男」がカギとなった。

対して、ヨーロッパ企画は「場」が中心にある。部室にタイムマシン、火星で倉庫整理、仕事でドラコン退治。SF寄りのシチュエーションを用意して、そこにキャストを投入する。どこに行っても部室のバカ話のようなテンションを保ちながら、様々なトラブルに翻弄されていく。

『見えざるピンクのユニコーン』でも2組の立ち位置が象徴的だ。東京03は仕事帰りのサラリーマンとしてバーにやってくる。ヨーロッパ企画は「インテリワードを提供するバー」という奇妙な設定で待ち受ける。バーカウンターを挟んで両者が向かい合う。それぞれのテリトリーを保ちながら対峙している形なのだ。

冒頭のやりとりをはじめ、どちらの舞台でもありそうな会話の押し引きが続く。エチュードも多く、「知り合いのお笑いトリオの話」として東京03の内輪揉めのエピソードを披露したり、テセウスの船になぞらえて「角田の体のパーツはどこまで入れ替え可能か」で盛り上がる。立ち位置こそ「対決」みたいになっているが、もう既に一体感がある。初共演なのに。

4月13日放送のインテリワードは、IT業界ではお馴染みの言葉「デスマーチ」と、推理小説のタブーを表す「ノックスの十戒」。公式の次回あらすじを見ると、角田が夏帆に一目惚れをしているようだ。東京03の王道パターンをヨーロッパ企画がどうさばくか楽しみである。
(井上マサキ)