この先どう進展するか、まだ読めないが、ハリルホジッチ就任を機に“日本代表文化”は、従来と少しばかり異なる価値観に支配されようとしている。好ましい方向に、だ。

 チュニジア戦、ウズベキスタン戦でハリルホジッチが使った選手は27人。フィールドプレイヤーでは、招集した25人全員が出場した。当初の公言通り、ハリルホジッチは、まさにこの2試合を、テストと位置づけて戦った。
 
 世界共通の総称はフレンドリーマッチだ。しかし、日本のメディアは親善試合という言い方を積極的にしない。テストマッチとも言わない。国際Aマッチ。Aを強調し、特別な試合であることを煽ろうとする。絶対に負けられない戦いと称して戦うW杯予選と同じような調子で、親善試合に向き合おうとする。「代表チームは、いつ何時もベストメンバーで戦うもの」とは、かつて加茂さんがよく口にした台詞だが、この考え方が長い間、日本のスタンダードとして幅を利かせてきた理由は、商業主義的なメディア報道と、相性がいいからだ。

 それがいま、音を立てて崩れている。そんな気がする。
 
 今回の2試合は、新監督の門出だ。メディアは新監督がどんな人物か、どんな方法でこの2試合に臨もうとしているのか、いつも以上に目を凝らそうとした。なので、新監督が最も力を込めて口にした「テスト」という言葉を、嫌でも伝えないわけにはいかなかった。
 
 初戦のチュニジア戦。ハリルホジッチは、本田、香川を先発で起用せず、後半15分、途中交代でピッチに送り込んだ。その7分後に岡崎、宇佐美を投入すると、沈滞していたムードは一変。
 
 ハリルホジッチは交代選手の活躍で、自らの初陣を2-0で勝利した。テストを試みながら、同時に、勝利を収めることにも成功した。

 主役級の登場は後半の途中から。テレビ的にこれは本来、決して好ましい話ではない。最初から出せ! 視聴率を気にするテレビ局のプロデューサーなら、思わずそう叫んでいたのではないか。しかし、結果は上々。テストマッチから連想されるネガティブな要素が露呈することはなかった。ストーリー性の高い、エンタメ性にも優れた試合として着地していた。

 続くウズベキスタン戦。今度は、本田、香川、岡崎らの主役級が頭から出場した。スタメンの顔ぶれは、ベストメンバー度という点で、チュニジア戦に勝っていた。しかし、その一方で、本田、香川のデキは、後半途中から出場した前戦を大きく下回った。彼らが交代でベンチに下がった後の方が、言い換えれば、テストを実行した方が、日本のサッカーは格段に活気づいた。試合そのものも面白くなった。近い将来、主役としての活躍が期待される宇佐美が登場すると、試合は俄然、盛り上がり、同じく終盤途中出場した伏兵、川又が、5点目のゴールを決めると、それは最高潮に達した。

 結果は5対1ながら、単なる大勝ではないところがよかった。誰が活躍するか分からない。最大の面白さ、エンタメ性はそこにあった。主役交代のムードさえ漂わせた。代表選考レースが今後、混沌としていきそうな気配を感じる。

 目も自ずとそちらに向く。気がつけば、監督はすっかり主役ではなくなっていた。新監督はどんなサッカーをするのかという点にも、関心を抱かされるが、代表選考レースの行方は、それ以上に気になるものになっている。ハリルホジッチ是か非かより、本田是か非か、香川是か非かに目が奪われた状態にある。
 
 ベストメンバーでの戦いより、もっとテストマッチを楽しみたい。混沌とした状況を、ファンは歓迎しているのではないか。だとすれば、代表文化を取り巻く価値観は変わったと言っていい。テストが商売になる時代に移り変わった、と。