4日東京体育館で、V・プレミアリーグの女子ファイナルが行なわれ、NECレッドロケッツが久光製薬スプリングスを3−1で破った。

 誰もが驚く番狂わせだった。レギュラーラウンドも、決勝リーグにあたる"ファイナル6"も断トツで首位通過した久光製薬の3連覇は固いと予想される中、山田晃豊(あきのり)監督率いるNECは第1セットを取られたものの、2・3・4セットは終始リードを保ちつつの連取。10シーズンぶりの優勝を果たした。

 センター島村春世が9mの幅いっぱいを使ったブロードを決め、サイドアタッカー柳田光綺はクロス、フェイント、ブロックアウトと変幻自在のスパイクを打ち分けた。セッターは山口かなめと秋山美幸を途中で上手くスイッチして、全員バレーでつかみ取った優勝だった。

 2セット目に投入された新人のサイドアッタッカー、古賀紗里那(18歳)が試合の流れを大きく変えた。熊本信愛高校時代から、ポスト木村沙織の一番手と言われながら(ルックスも少し似ている)、インターハイも春高も優勝とは縁がなかった。それが内定選手としてNECに合流して、2ヶ月での悲願達成。本人はヒーローインタビューで「(自身にとって)初の日本一......うれしくて......うれしいです」とはにかみながらにっこり。

 山田監督は、「今日は選手たちが本当にかっこよかった」と褒め、「先発で入った選手も良かったが、途中から入った選手たちが非常に頑張ってくれた。中でも古賀、柳田(光綺)といった若手が起爆剤になってくれた」と二人の若手選手をねぎらった。

 古賀は「(高校時代)ずーっと日本一になりたくてなりたくて、でもなれなかったので、V(リーグ)に入って、こんなにすぐに日本一を取ることができたのは、本当にうれしいです。でも、この優勝は先輩方のこれまでの積み重ねがあってのものだと思うので、今度は自分が引っ張って、優勝を経験したい。ここで終わりでなく、もっと先の目標が見つかった思いです」と初めての日本一を噛みしめていた。「世界に向けては?」と記者会見後につかまえて、たずねると「前よりはちょっと見えてきました。頑張ります!」と、試合直後とは打って変わって、はつらつとした答えが返ってきた。

 山田監督は「(古賀を入れる前のスタメンである)白垣(里紗)も今までずっとチームを引っ張ってきてくれたし、替えどころというのは非常に悩みました。でも、白垣もまだ波のある選手でして、その波が出そうな予兆を自分が感じ取ったので、古賀の投入を決意しました。入れた時点では吉と出るか凶と出るかは賭けだったのですが、結果的には非常にはまったと思います。彼女はこれからの日本を背負っていく選手になる存在ですし、これから代表などで忙しくなるでしょう。それはこのクラスのいい選手にとっては宿命で避けられないことです。所属チームの監督としてはしっかりとまず身体を作ってあげて、故障のない選手にしてあげたいと思います」。

 先輩からも短期間で信頼を得ていた。「見ての通りほわんとした子なので、どんなトスが欲しい? と聞いても『どんなのでも大丈夫ですよー』と(笑)。いい意味でトスに合った打ち方を知ってる"打ち幅の広い"選手。コンビを合わせている日数は少ないんですけど、ちゃんと決めきってくれて、即戦力として活躍してくれたと思います」(秋山美幸主将)

 NECは助っ人外国人選手のイエリズ バシャをケガで欠き、日本人選手のみで戦った。MVPを受賞した近江あかりは「イエリズがいるときは、最後は頼るクセがあったのを、彼女のケガをきっかけにして、全員で得点するという意識が強くなった。それで上り調子でいけたのだと思います」と振り返る。

 10年ぶりの優勝ということで、10年前の優勝のことを知っているかという質問に対して、「先週のファイナル3で勝ったときに、記者の方から優勝すると10年ぶりですねといわれて初めて知りました」という選手が多く、古賀にいたっては「前の優勝のときは、8歳だったので......まったく知りませんでした(笑)」。

 山田監督だけは、コーチとして経験があり、その前のNECが何度も優勝していた時代を知っているスタッフだったが、「その時は葛和(伸元)さんというカリスマ監督がいらして、自分は同じようには絶対できないと思って、自分らしいカラーを出していこうと思っていました。ただ、伝統の粘り、拾ってつなぐバレーは受け継いできたつもりです」。

 先週、甲子園では母校の東海大付属第四高校が準優勝だったことは、ちらりと頭をよぎったという。野球部監督も同い年で知り合い。しかし、準優勝だったことにがっかりするのではなく、勇気をもらえたという山田監督は、母校のためにも勝てて良かったと顔をほころばせていた。
 
 一方、まさかの敗戦となった久光の選手たちは、記者会見の場でも口が重く、中でも新鍋理沙は「すみません、今は何も出てきません。すみません」と一切のコメントを拒絶。また、サーブで狙われ続け、スパイク決定率が17.8%に封じ込められた石井優希も「NECさんは過去の試合でも、どんなローテーションでも私をサーブで狙ってくることはわかっていた。準備はしていたつもりだったが、Aパス・Bパス(セッターを動かさずに戻すサーブレシーブ)を返すことができず、ミドルの攻撃を使わせてもらえずに、足を引っ張ってしまった。本当に自分が情けない」と嗚咽を漏らした。

 久光は常々「リーグ優勝は通過点、目指すは世界クラブ選手権(※)での金メダル」という目標を掲げ、国内のタイトルを総なめにしてきた。今年度も5月に行なわれる世界クラブ選手権に照準を合わせて、リーグ優勝は当然の前提としてきた。それがこの敗戦。どう立て直すのか。
※久光は、今年度の世界クラブ選手権の日程が5月と例年よりも早く開催されることから、今リーグの結果にかかわらず、昨年のアジアクラブ選手権覇者として、出場権を得ている。

 中田久美監督は「勝ち続けることの難しさ......と言われても、勝ち続けていたのは、私が選手時代のことで、監督になってからはそんなに『勝ち続ける』というほど、まだ勝ち続けてはいませんし、今もやはり難しいことだなと痛感しています。選手たちにかけてあげる言葉も見つからず、申し訳ないと思っています」。しかし、「世界クラブ選手権にむけて立て直したいとは思いますが、まだ今は具体的に策は見えていません。でも、この敗戦を無駄にすることなく受け止めて、またチームを作り直したいと思います」とさばさばとした表情で締めくくった。

 この優勝により、久光一強の勢力図が塗り変わることとなり、Vプレミア女子はますます目が離せなくなった。NECの選手たちは口々に「これからはNEC時代にします!」と意気込んでおり、新時代の到来があるかも知れない。

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari