『地平線の相談』細野 晴臣,星野 源 文藝春秋

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 2007年より情報誌『TV Bros.』にて人気連載中の、音楽家・細野晴臣さんと俳優で音楽家の星野源さんによる対談「地平線の相談」。星野さんが、音楽の、そして人生の先輩である細野さんに様々な相談をするというこの対談は、「クーラーが垂らす水から家財を守るには?」「洗面台をびしゃびしゃにしない方法は?」「タクシーの運転手さんに、すごく気を遣ってしまうんですよ問題」といった日常にまつわる些細な話題から、専門である音楽に関する話まで、幅広いテーマのもと進んでいきます。

 今回、同連載が一冊の本に。書籍化にあたり、表紙デザインは細野さんの3rdアルバム『泰安洋行』のジャケットを模した魅力的なものとなっています。

 1947年生まれと1981年生まれという、親子程の歳の差のある二人が繰り広げる会話ですが、時には日常生活のなかでの共通点も見えてきます。たとえば、細野さんも星野さんも、歩くことの面白さにはまっており、ウォーキングの効果を熱く語り合うという一コマ。

星野:最近、歩くのが面白くって。免許もないし、ずっと電車移動だったんです。たとえば、池袋から渋谷まで山手線に乗って行くと、その間って空白じゃないですか。ある意味、テレポーテーションっていうか。だから、どこに居ても不安だったんですよ、地理にもちょっと弱いんで。でも、池袋駅から渋谷駅まで歩いてみると、その間が埋まるじゃないですか。そうすると、土地に対して、なんて言うんですかね......。

 このように切り出す星野さんに対し、細野さんも歩くことの面白さに同調。自分の足で歩くと、土地のことがよくわかるとのこと。普段、車に乗ることが多かったという細野さんは次のようにいいます。

細野:自分の場合は、今まで車で通りすぎてたから、東京がつまんない街に見えてたの。それが、歩きながら見ていくと、すごい面白いんだよ。特に下町は楽しい。

 そして話は、歩いてみて気付いた、東京におけるそれぞれの場所の距離感へと。

細野:意外な場所と場所が近いんだよね。たとえば、銀座から巣鴨が近いとか。頭でイメージしてたのと違って、実際に歩いてみたら、妙な地理感覚なんだよ、東京って。

 さらに街を歩いていると、今まで見落としていた食べ物屋さんがあったり、色々な発見も多くなったという細野さん。しかし星野さんは、気になる店を見つけ入りたいと思っても、度胸が足りず、なかなか入ることができないと細野さんに相談......といったように、緩やかなテンポで繰り広げられていく会話は、ふいに思わぬ深い話にまで至ることも。

 二人の絶妙な会話から滲み出る空気感をたっぷりと味わうことのできる一冊となっています。