“伝説のディーラー”と呼ばれモルガン銀行東京支店長などを務めた藤巻健史氏は、OBも危ぶむ日銀の出口戦略についてこういう。

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 日本銀行の黒田東彦総裁に国会で何回も異次元の量的緩和の出口戦略を聞いているが、いつも「時期尚早」としかお答えいただけない。何を聞いても「時期尚早」なのだ。まさに「Mr.時期尚早」とお呼びしたいくらいだ。

「今の政策金利は何%ですか?」「時期尚早」「今晩は会食がありますか?」「時期尚早」なんてことはまさかないでしょうね?

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 2月25日の参議院「国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査会」で岩田一政元副総裁(現・日本経済研究センター理事長)、菅野雅明元調査統計局参事(現・JPモルガン証券チーフエコノミスト)、早川英男元理事(現・富士通総研経済研究所エグゼクティブ・フェロー)という日銀OBのお三方をお呼びし意見をお聞きした。

「量的緩和の評価は事後的に決まる」という菅野参考人の発言は、けだし名言だった。「異次元の量的緩和には出口の問題がある。上手くソフトランディングできれば、めでたし、めでたしだが、出口でつまずいて非常に大きなコストを払わなければならないことになれば、それまでのプラスはすべて相殺されてしまう」というのだ。

 まさに私が、量的緩和に当初から大反対している理由を明確に述べてくださった。私は出口でつまずけば、今までのプラスが相殺されるどころか、マイナスもマイナス、国民が地獄を味わうことになると思うのだ。「お金をジャブジャブにして景気を良くする」など子供でも考えつく政策だ。それを今までどの国もやろうとしなかったのは、ハイパーインフレを回避し得た国がないからだ。1923年にすさまじいハイパーインフレを経験したドイツが、先日のヨーロッパ中央銀行(ECB)の量的緩和開始に大反対した理由もそれだ。

 この日銀OBのお三方が考えていた出口戦略は、皆同じだった。私が先週のこのコラムで書いた「日銀にある民間銀行の当座預金」に付利していく方法である。FRB(米連邦準備制度理事会)が行うと公表しているやり方だ。いくら黒田総裁が「時期尚早」とおっしゃろうが、「出口戦略はそれしかない」のが暗黙の了解なのだ。しかし、その唯一の方法がFRBと違って日銀には極めて大変な仕事となるのだ。その認識も皆、共通していた。

「日銀にある民間銀行の当座預金」に付利をしていくと日銀は損失の垂れ流しになってしまう。早川参考人は「(他国の中央銀行と比べて)日銀の損失規模は断トツにでかくなる」とおっしゃっていたし、菅野参考人は「岩田さんのお話にもありましたように、いずれにしましても日本銀行は非常に大きな赤字を抱えることは間違いありません」とおっしゃっている。

 それが故に菅野参考人は「国家的なリスク管理が必要だ。テールリスク(確率は低いが、発生すると非常に巨大な損失をもたらすリスク)と言っても、実はリスクはかなり高いのかもしれない」とおっしゃっているのだ。この認識が政治家にもマスコミにもないのが怖い。

週刊朝日  2015年4月10日号