ロサンゼルス・クリッパーズのデアンドレ・ジョーダン(C)は、子どものころからシャキール・オニール(1992年〜2011年/ロサンゼルス・レイカーズなど)に憧れていたという。自分と同じように体格の大きなオニールが、コート上ではまわりを圧倒し、一方コート外では人々を笑わせ、ファンを魅了していた姿に惹かれたからだ。実際、ジョーダン自身もジョーク好きだ。いつも周囲を笑わせているところなど、オニールに通じるところがある。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 もっとも、すべての面でオニールに影響を受けたわけではない。例えば、好きなスーパーヒーロー。自らを「スーパーマン」と呼んでいたオニールとは違い、ジョーダンが一番好きなスーパーヒーローは、「バットマン」だという。

「僕とバットマンは、どこか深いところでつながっていると思っている。バットマンは空を飛べないけれど、みんなを守っている。僕の仕事も同じだ」と、ジョーダンは語る。

 たしかに、チームでのジョーダンの主な役割は、みんなを守るディフェンスだ。クリッパーズのドック・リバース・ヘッドコーチはジョーダンのことを、『ディフェンス大臣』と呼び、機会があるたびに、「リーグで最高のディフェンス選手だ」と称える。

 ジョーダンにディフェンダーとしての役割と誇りを与えたのは、そのリバースだった。2年ほど前、クリッパーズのヘッドコーチになったリバースは、その直後にカリフォルニア州マリブのレストランでジョーダンに会い、「ディフェンスでチームを率いる」という責任を与えた。ビル・ラッセル(1956年〜1969年/ボストン・セルティックス)、デニス・ロッドマン(1986年〜2000年/シカゴ・ブルズなど)、ベン・ウォーレス(1996年〜2012年/デトロイト・ピストンズなど)、そして現役のタイソン・チャンドラー(ダラス・マーベリックス/C)といった名前を挙げ、「彼らのプレイを研究してマネするように」と言ったのだった。そして、名前を出した全員がNBAで優勝している事実に触れることも忘れなかった。

 それ以来、ジョーダンはクリッパーズのディフェンス担当キャプテンになった。ゴール下を守り、声を出して指示し、味方が抜かれたときにはカバーもする。また、試合中だけでなく、ロッカールームや練習でもディフェンスの重要性をチームメイトに説いてまわった。ヘッドコーチに信頼され、責任を与えられたことによって、プレイの方向性をはっきりと自覚し、さらに自信もつけたという。

「バスケットボールは、チーム競技だ。ドックが自信を与えてくれたことで、このチームのリーダーだという自覚が出てきた。大事なのは、チームとしてひとつにまとまり、試合に勝つことだ」と、ジョーダンは語る。

 そのディフェンスに加えて、リバウンドもジョーダンの武器だ。昨シーズンは平均13.6本で初めてリバウンド王を獲得。そして、今シーズンも4月1日現在、平均14.8本をマークしており、2位のアンドレ・ドラモンド(ピストンズ/C)に平均1本以上もの差をつけ、リーグ首位に立っている。

 リバウンド数が伸びたキッカケのひとつは、2年前のプレイオフ1回戦でメンフィス・グリズリーズに敗れたことだった。グリズリーズのマーク・ガソル(C)とザック・ランドルフ(PF)にゴール下を支配されたことを反省し、リバウンドの重要性に目覚めたのだという。身体のサイズや運動能力だけで取れるほど、リバウンドは簡単なものではなかった。ジョーダンはポジショニングやタイミングを学び、ボールの落ちる場所を研究した。

 一方、オフェンスでは、自分のできることを徹底してやるのがジョーダン流だ。無理はせずにゴール下でパスを受け、またはオフェンスリバウンドからシュートを決める。昨シーズンのフィールドゴール成功率は、リーグ1位かつNBA史上4位の67.6%。今シーズンはさらに確率を上げ、現在70.7%を記録している。NBA史上、シーズンを通してフィールドゴール成功率が70%を超えたのは、1972−1973シーズンのウィルト・チェンバレン(72.7%/当時レイカーズ)だけ。今シーズンのジョーダンは、それに迫る数字だ。

 もっとも、それとは対照的にフリースロー成功率の低さは、同じくフリースローが苦手だったチェンバレン以下。キャリアを通して4割前後で、今シーズンも39.2%と低迷している。当然、相手チームはわざとファウルしてフリースローを打たせる「ハック・ア・ジョーダン作戦(※)」を仕掛けてくるが、そのことでフラストレーションを感じることは、以前と比べてなくなったという。

※ハック(Hack)=ボールを持っている選手の腕をはたく反則。

「フリースローを決めるか、相手チームの攻撃を止めさえすればいいだけのこと」と、割り切れるようになったと語る。

 そして現在、ジョーダンの個人的な目標は、リーグの最優秀ディフェンス賞だ。

「現役の間に2度ぐらいは獲りたい。ディフェンスこそ、僕がこのリーグにいる理由で、力を入れていることだから」

 だが、その一方、「自分がコントロールできない賞レースに、こだわりすぎないようにもしている」ともいう。それは5年前、ジョーダンが所属していたテキサスA&M大学で後輩になるはずだった年下の友人が、交通事故によって17歳の若さで命を落としたとき、「すべてのことは一瞬で奪い去られてしまうかもしれない」と痛感したからだ。

「だから、人生をできるだけ楽しみ、物事を深刻に受け止めないようにしている」

 そして今日も、デアンドレ・ジョーダンのまわりには、笑い声があふれている。

宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko