『立候補』

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マック赤坂さんや羽柴秀吉さんをはじめとした、当選の見込みが薄いとされる「泡沫候補」にスポットを当てたドキュメンタリー映画『立候補』。

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藤岡利充さんが監督を務めた本作は、2013年6月より、映画館「ポレポレ東中野」をはじめとした全国の劇場で公開。「ポレポレ東中野」では、初日から12日連続満席という記録を達成し、翌年2014年には、「第68回毎日映画コンクール」でドキュメンタリー映画賞を受賞。

当初は問題作として、どこかイロモノ扱いされていた本作だが、想像を遥かに超えた感動の連続に、絶賛の声が相次いだ。

その声は、徐々に口コミで広がり、2014年6月にDVDがリリースされた後も、いまだに全国各地のスクリーンで自主上映が行われている。5月10日(日)には、新潟県・柏崎市の喫茶店「et cetera」にて、自主上映会が開催される。

ここでは、その衰えしらぬ本作のパワーに迫りたい。

無常? 情熱? 葛藤?


『立候補』公式Webサイトより/(C)2015Word and Sentence & 明るい立候補推進委員会 & fugakuoka.

『立候補』公式Webサイトより/(C)2015Word and Sentence & 明るい立候補推進委員会 & fugakuoka.



『立候補』は、はじめから当選見込みのない「泡沫候補」と呼ばれる立候補者たちの選挙活動に密着し、その知られざる姿を収めた映画。

2011年の大阪府知事選挙にフォーカスしており、出馬したスマイル党総裁・マック赤坂さんや、2度目の府知事選となった高橋正明さん、7歳の娘をもつ61歳の中村勝さん、初選挙となる岸田修さんといった、立候補者の政治活動に密着。

都知事選での政見放送で強烈なインパクトを与えた外山恒一さんや、青森県に小田川城を築き上げた羽柴秀吉さんといった有名泡沫候補者たちも登場し、泡沫候補者たちのリアルな姿を描いている。

特筆すべきは、本作に登場する候補者たちは、どの人物も皆、街頭演説などの政治活動に情熱を注いでいること。



しかしながら、「泡沫候補」という言葉があるように、個人単位での政治活動は、巨大政党の支持を受けて活動する候補者に比べると、どうしても波及力が劣ってしまう部分がある。

そんな状況の中で、たとえばマック赤坂さんのような、奇抜な格好やユニークなパフォーマンスは、時に世間から失笑の目で見られることがある。本作では、そんな情熱に燃える活動を淡々とフィルムに収めることで、その情熱が、得票数など目に見える成果につながりにくいというジレンマを浮き彫りにしている。

ドラマティックな物語の展開に必須となる登場人物の葛藤を、選挙という多数決の無情なリアルが描き出してゆく。

でも、そんなの関係ねえ!


『立候補』公式Webサイトより/(C)2015Word and Sentence & 明るい立候補推進委員会 & fugakuoka.

『立候補』公式Webサイトより/(C)2015Word and Sentence & 明るい立候補推進委員会 & fugakuoka.



こうして、彼らのジレンマや葛藤が垣間見えてしまう一方で、本作最大の魅力は、そんな彼らの葛藤よりも、彼らの情熱の方が上回っていることだろう。

劇中の候補者は皆、迷うよりも行動。とにかく政治活動に全力を注いでいるのだ。よく「なぜ立候補し続けるのか」と言われる彼らだが、その理由は「情熱」という言葉にあるのかもしれない。

映画の大半は、マック赤坂さんの活動を映したものだが、そこから見えてくるのは、とにかく「情熱」の一言。それは、もはや笑っていいのか、笑ってはダメなのか、と混乱してしまう程のレベルだ。本作の感想として「後味が悪い」と言われるゆえんは、恐らくここにあるだろう。

つまり時間芸術!?


『立候補』公式Webサイトより/(C)2015Word and Sentence & 明るい立候補推進委員会 & fugakuoka.

『立候補』公式Webサイトより/(C)2015Word and Sentence & 明るい立候補推進委員会 & fugakuoka.



「葛藤」と「情熱」。そして次に特徴的なのが、候補者たちが持つ折れない熱意。そのリアルな熱波は、スクリーンから噴き出してくる。

しかし「泡沫候補」たるもの、そう簡単に政治を変える事ができないのでは、情熱の空回りなのでは……。そんな我々の不安や疑念を吹き飛ばす瞬間が、秋葉原駅前のマック赤坂さんの街頭演説のシーン

安倍晋三現内閣総理大臣の演説に多数の支持者が集まる中、はす向かいで数名の関係者とともにマック赤坂さんが、民衆に問いかける。圧倒的劣勢のなか、世代を超えて、時空を超えて、もっとも最小な単位での革命が、スクリーンに浮かび上がる。

マック赤坂さんの高笑いと、その感動的な風景は。泣き笑い必須のシーンだ。それまで政治や選挙を浮き彫りにした作風が、純粋なヒューマニズム溢れるドラマへと還元される様は圧巻。

社会派映画と肩肘張らずに、是非とも登場人物たちの心模様に思い馳せて見てはいかがだろうか。きっと度肝を抜かれるだろう。笑えるか、笑えないかはあなた次第だ。

もちろん、映画は単にドラマとして消費されるだけでは、いずれは忘れ去られてしまうのも事実。

昔話のように、人から人へ、教訓や人のありようを届けられるような、そんな名作・快作を今年度も期待したい!