糖尿病は、初期には自覚症状がないまま、本人も知らず知らずのうちにじわじわ進行する。気付いた時にはすでに手遅れというケースも非常に多い。これが別名“サイレントキラー”と呼ばれる所以だ。
「ノドの渇き」、「倦怠感」、「手足のシビレ」などの症状が表れたら、かなり進行していると覚悟した方がいい。これらがひどくなれば高血糖とされ、合併症を引き起こす最大の要素になりさまざまな病を引き起こす。
 従って、高血糖による合併症こそが最大の敵と言わざるを得ない。これは国内外の疫学調査から明確に言われていることだが、糖尿病の人は前立腺がんを除く全てのがんの発症頻度が高く、特に胃、大腸、肝臓、膵臓といった消化器系がんの発症頻度が高い。

 専門家によれば、高血糖だとがんになりやすい理由は、まだはっきりとは解明されていない。理由はがんの種類によって複数の要因の関与が考えられるからだという。
 「とはいえ、疫学調査の結果からも糖尿病の人は確実にがんになりやすいのです。わかりやすく言えば、正常細胞は絶えず新しい細胞を作っていますが、血糖値が高いと遺伝子をコピーする際にエラーが起こりやすいということです」(専門医)

 また糖尿病の既往のある人が、がんになりやすいことを自覚することは非常に重要なのだという。
 「なぜかと言えば、いくらヘモグロビンA1cの数値が15%(目標値7%未満)あっても、糖尿病で死ぬことはない。また3大合併症の腎症、網膜症、神経障害でも死ぬことはありません。ただ、糖尿病で命取りになる最大の原因が、“がん”を罹患するからなのです」(専門家)

 では、どうすればいいのか。東京都長寿健康医療センターの糖尿・代謝・分泌内科担当医はこう説明する。
 「まず大事なことは、糖尿病と診断されたら、必ず定期的にがんが発生していないかチェックすることです。患者さんには、全身のCT検査と胃・大腸の内視鏡検査を受けていただきます。結果、患者さんの中から毎年胃がんや大腸がんが約15人、肺がんが約10人、その他のがんが10人ほど見つかる。それでも早期発見できるので、治療によってほとんどの人が大事に至らず助かっています」

 いずれにせよ、日常の血糖値コントロールが、がんのリスク軽減に繋がり、仮にがんになったとしても、その後の血糖管理は今まで以上に気を付けなければならない。高血糖の状態は免疫力を低下させるため、がん治療の大きな妨げになるからだ。がんの治療効果を高めるためにも、血糖管理がいかに大事であるかを理解しなければならない。
 「もちろん糖尿病の合併症の一つである神経障害に対しても同じことです。高血糖状態が半年程度続くだけでも、ピリピリやチクチクなど、特徴的な症状が表れやすい。ただし、糖尿病の全てに初期段階での神経障害が生じるわけではなく、放置することでこれらの症状が見られるようになるので注意が必要です」(専門医)