『溶解人間』原題『THE INCREDIBLE MELTING MAN』1977年(日本公開1978年)/米/84分監督:ウィリアム・サックス出演:アレックス・リバー、バー・デベニング、マイロン・ヒーリーほか

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 前回の『あ・ら・ぱ・あ・ぷ 顔面溶解女のおたけび』繋がりで、今回はSF映画ファンの間で根強い人気の『溶解人間』を紹介しよう。私がこの映画を観た時は高校生で、2本立ての併映『スパイダーマン』は、近年のサム・ライミ版と違って全くウケなかった。だが『溶解人間』の方は結末のシュールさが印象に残り、のちにテレビ放映やレンタルビデオで何度も見直した(ビデオの解説に「ひとりでは観ないでください」と書いてあるけど、それ『サスペリア』のパクリだぞ)。最近ブルーレイディスクが発売されたので、観賞予定の方はネタバレに注意を!

土星調査船スコーピオン5の宇宙飛行士スティーブは、宇宙空間で謎の光を浴びた影響で全身ケロイドの怪物に変貌し、隔離病棟でメタボ看護婦を追いかけ回す。異様に長い廊下を、スローモーションで激走するメタボさん。彼女が人生でこんなに走るのは、ハイスクール時代の体育の授業以来だろう。メタボさんは外へ逃げようと廊下正面のガラス扉へ突進、そのままガラスをブチ破る......。SFやホラーの楽しみのひとつ「慄く美女」。そうではない女性(失礼)の受難を、執拗に長見せする監督の演出意図は謎だ。結局彼女は顔面を齧り取られて死亡、死体から放射能反応が出る。

病院の外に出たスティーブは釣り人を殺し、もぎ取った首を川に投げ捨てる。ドンブラコ、ドンブラコと口を開けたまま流れていく釣り人の首。その頃、スティーブの担当医であり友人でもあるネルソン博士は一旦帰宅し、既に2度の流産を経験している身重の奥さんに、よせばいいのに騒動を報告して余計な心配をさせる。場面転換すると、まだ川を流れている首(笑)。首はスローモーションで小さな滝から落ち、下の固い岩盤で「グシャッ」とスイカのように割れる......。メタボ看護婦、釣り人と、単なる端役の死に様を、必要以上に劇的に描くウィリアム・サックス監督は天才? ちなみに釣り人役は、本作のプロデューサー、サミュエル・W・ゲルフマン(ほかデビッド・キャラダイン主演『爆走! キャノンボール』など)。

「お医者さんごっこする?」なんて言いながらタバコを回し飲みする10歳前後の男児2名と女児1名(現在の社会通年では表現不可能だ)。3人は滝の方へ行き健全にカクレンボをするが、鬼になった女児がガサガサする繁みの前で「見〜つけた......キャー!」。顔がドロドロに溶けているオバケを見つけてしまい、悲鳴を上げながら逃げる女児。それを見送るスティーブの脳内には「ヒューストンからスコーピオン5へ。聞こえるか?」と管制の通信が響いている。やがて釣り人の首なし死体が発見され町は大騒ぎ。スティーブの通った跡はガイガーカウンターが反応し、ネルソン博士は土星計画の最高責任者ペリー将軍を現地に呼ぶ。国家的大事件を隠蔽する腹だ。

夕日の中、相変わらず「スリー、ツー、ワン、ゼロ、発進!」と頭の中に声が聞こえている電波さんのスティーブがヨロヨロ歩いている。歩くたびに足裏からネチャ〜ッと納豆のように糸を引く粘液。顔にはもう耳も瞼も唇もない。この気色悪いマスクを製作したのは、『キングコング』(76年)やマイケル・ジャクソン『スリラー』のPV(83年)などで有名な特殊メイク・アーチストのリック・ベイカー。場面ごとに違うマスクを作り、シロップを掛けてベトベトにしたのだ。

その夜スティーブは、ネルソン夫人の母親、鳥モモを食べていた将軍、近隣の若旦那(演じたのは何と『羊たちの沈黙』ジョナサン・デミ監督の無名時代)を次々に噛み殺す。そしてネルソン博士と保安官の2人は、工場施設の屋上にスティーブを追い詰めるが、保安官はスティーブの怪力で階下へ放り投げられ、哀れネルソン博士は工場のガードマンの誤射により死亡する。

そのガードマンをブッ殺したスティーブは、もう足腰が立たなくなり四つん這いで工場内をさ迷い、ついに力尽きる。トタン板の壁に寄り掛かり、その場にへたり込むと一気に溶解が加速。『ゴジラ対ヘドラ』のヘドラみたいになり、さらにグチャグチャの塊と化していく。それでも頭の中に鳴り響く管制の指令。最後は目玉がポロッと落ちる......。翌朝、早起きしてきた清掃のおじいさん、壁の前でウンコみたいな物体を発見。「やれやれ」と、ホウキとチリトリでゴミと一緒にドラム缶の中にポイッ。おしまい!